今泉力哉監督がこんなかわいい話を手掛ける。彼の描く『からかい上手な高木さん』は原作の10年後のお話。中学生だった彼らも、今はもう25歳。そんな大人になったふたりの再会が描かれる。母校の体育先生になった西片(高橋史哉)。そこにパリから日本に戻って来て、東京の大学に通う高木さん(永野芽郁)が教育実習生として島に帰ってくる。
小豆島を舞台にしたローカル色豊かなほのぼのしたドラマ。まぁお話自体はかなり甘いし、少し嘘くさく、あまりリアリティはない。いくら田舎の学校だとしてもあまりにのんびりしてるしノーテンキすぎる展開。でも、こんな学校もありかな。60年代ならきっとこんな感じだ。これは懐かしい吉永小百合と浜田光夫が主演した青春映画のノリである。野村孝監督の『明日の花嫁』を思い出した。あんな感じ。
ラストの教室での長回しがなかなかいい。恥ずかしいくらいにピュアなふたりの告白タイムが長閑なタッチで綴られる。もどかしくて、可愛い。いきなりのプロポーズから、初めて手をつなぐまでがいい。(もちろんふたりはキスもしない)そのまま学校帰りの道をお手手つないで帰る微笑ましいシーンが続く。
今時こんな映画が作られるって奇跡かもしれない。いや、ちゃんとこの映画の原作はたくさんの読者から支持されてアニメにもなり、映画化されている。今回の実写映画化に先駆けて既にアニメ版は映画になったし、僕も見ている。(もちろんこのブログにも書いているから、暇ならそちらも読んでいただきたいです)永野芽郁が「西方!」と呼びかける声がいい。彼女は確信している。西方は必ず応えてくれると。その信頼関係がこの作品を根底から支える。
確かに今泉作品としては、これはたいした映画ではないし重要な作品でもない。だけど、これはこれで悪い映画ではないし、単純なだけのやわな映画でもない。いや、これはかなりチャーミングな作品なのである。だから優しい気持ちで見てあげてください。