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映画・演劇のレビュー

『恋する寄生虫』

2021-11-16 12:22:10 | 映画

都会の片隅でふたりの男女が出会い恋に陥る。そんなラブストーリーなら、今までたくさん作られてきた。これもそんな凡百な設定に一篇かもしれない。だけど、そこに寄生虫の話は大きく関与してくることで、一風変わった作品に仕上がった。最初は何が始まるのかと、ドキドキしたけど、最後まで見たら、ありきたりのラブストーリーに落ち着きがっかりだ。だけど、このがっかりは嫌いではない。なるほど、とホッとさせられた。なんだろうか、この気分は。安心したのだ。

もっと異常な映画かと思った。世界を拒絶して、破壊してしまいたいという衝動を抱く男女が主人公だ。男(林遣都)は27歳でひきこもり。異常な潔癖症で、人やモノに触れられたり、触れたりできない。女(小松菜奈)は高校生で視線恐怖症。人と目を合わせられないし、会話もできない。周囲の音が怖いからヘッドフォンを離せない。

頭の中の虫という設定がもう少しリアルで残酷、あるいはグロテスクなものかと思ったが、そうではなく、おしゃれな映画の彩りでしかない。SF的な設定と、ルックスもそう。最後はクリスマス・イルミネーションを背景にしたたわいもない恋愛映画に落ち着く。

デビット・リンチのような狂気の世界を見せてくれるのか、という期待もあったので、やはり少し残念ではある。だけど最初にも書いたように「都会のかたすみで出会った男女のラブストーリー」だと割り切ると、このちょっと風変わりな、でも、とてもおしゃれで、ファンタジックな映画はこれはこれで悪くはないと思うのだ。


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