あまり評判はよくないようなので、期待はしなかったけど、想像以上につまらなくて驚いたし、なんだか悲しかった。監督はクロエ・ジャオ。せっかく『ノマドランド』でアカデミー監督賞まで受賞したのに、その直後の作品でこういう失敗をしてしまうと、今後の彼女のキャリアにどういう影響を与えることになるのか、他人事ながら心配だ。それでなくても、アジア人初の監督賞という金看板は反対にへんなパッシング材料にも成り兼ねない。
メジャー大作映画を任され、自由な采配を奮えなかったのかもしれないが、なんとも中途半端な映画で退屈した。2時間36分もの長編なのに、だらだらして展開で、締まりのない映画だ。10人のキャラクターを丁寧に描くのかと思ったら、そういうわけでもない。お話重視の展開のようにも思えるけど、ストーリーで引っ張っていくわけでもない。映画を見ながら何を楽しめばいいのか、まるでわからないまま、徐々にその単調さについていけなくなり、居眠りしてしまった。
冒険活劇なのに、ドキドキしないって、何なのか。人間ドラマとしてもドキドキはさえられないし、(一応、丁寧に描かれる)仲間を集める過程も、何ら面白い仕掛けはない。時々襲ってくる敵も、退屈だろうから、そろそろ出番かな、という程度の緊張感のなさ。
どうしてこの映画を彼女が引き受けたのか、まるでわからない。娯楽映画でいいし、そうじゃなくては困るのだろうけど、それでもこれは自分でなくてはならない、という刻印は欲しい。そうじゃないなら、他の監督で充分なのだ。うまい職人監督ならごまんといるのに、そこをわざわざ彼女に手掛けさせたマーベルとディズニーの期待を裏切るだけではなく、僕たち観客の期待にもこれでは応えきれてはいない。
同じように娯楽映画に進出し『シャンチー テン・リングスの伝説』を成功させたデスティン・ダニエル・クレットンの直後なのに、こういう作品を見せられると、テンション下がる。せっかく韓国からわざわざ招集したマ・ドンソクも、あれでは浮かばれない。