「サムホエア」(キース・ジャレット・トリオ)

             

 ステラの推薦盤からジャズ編です。こちらは3枚の中から一枚だけ購入しました。

 キース・ジャレットは1970年前後にマイルス・デイビスのチームでオルガンやエレクトリック・ピアノを弾いていたので、複数の熱い熱いディスクで聴いているのですが、その後のメイン奏者での(純)ピアノの演奏にはこれまで縁がありませんでした。

 美しい、端正でひたすら美しい演奏です。静かなピアノソロから始まり、やがてテンポを上げて、ベースとドラムが入ってくる。凛とした緊張感が漂いますが、優しい癒しのムードも併存する不思議な雰囲気があります。耳にやさしく聴き易い。ビル・エヴァンスのピアノトリオはジャズクラブでウィスキーグラスの音とタバコの煙の中で演奏されていますが、このライブはスイスのルツェルンでのコンサートホールでのライブです。会場の状況が演奏に反映しています。優等生的といえばそうなのですが、静かだけど心に迫るものがあります。

 このジャンルではビル・エヴァンスの数枚しか聴いていないので比較できないのですが非常に完成度の高い演奏です。クセがないので何度聴いても変な満腹感がありません。愛聴盤になりそうな予感です。このトリオの代表盤という「スタンダード・ライブ(星影のステラ)」を注文してしまいました。


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ヴィヴァルディ「ヴァイオリン協奏曲集 四季」(新イタリア合奏団)

             

 3年前に購入したアンプのゴールドムンドを販売するステラという会社が今年に入って体制を変えたようで新商品の案内が届くようになったのですが、そこにクラシックとジャズの推薦盤のガイドが載っています。

 最近はクラシックの新しいディスクを買うことはほとんどないのですが、そこに紹介されていた評論家の柳沢功力氏が選定したディスクを聴いてみたくなりました。

 新イタリア合奏団の演奏するヴィヴァルディの四季を聴いてぶったまげました。躍動感溢れる明るい響き、レガートを多用した魅力的な旋律、美しい弦の陰影、緩除楽章での寂寥感などなど。この有名な曲を初めて聴いたような感動がありました。題名どおりの四季の移ろいにとどまらず、地球上の豊かな自然、生きる喜びまでが描写されているようです。ヴィヴァルディどころかバロック音楽でこんなに魅力的な演奏を初めて耳にしました。バロック演奏、古楽器演奏を多く聴いていないので、極めて私的な驚きなのかもしれませんが、これまでは一体何だったんだろうという衝撃的な体験です。
 老舗楽団が生まれ変わって新イタリア合奏団となったのだそうです。ウーギというイタリアのヴァイオリニストも確か同じような明るい陽光のような演奏だったのを覚えています。こういう響きはイタリアの伝統なんでしょうか。とても楽しくワクワクします。


 併せて購入した森麻季の「日本の歌」も素晴らしいです。もともと好きな歌手なので高水準な歌は想定できましたが、ここまでとは。心が震えました。「落葉松」、「浜辺の歌」、「朧月夜」、「この道」などの定番、柳沢氏が絶賛している「さくら横ちょう」、「霧と話した」、「曼珠沙華」といった難曲に加え、「花は咲く」、「見上げてごらん夜の星を」、「千の風になって」といったポピュラー曲もこれまでの数多の録音の中でベストと思える歌唱です。澄んで艶やかな高音、感情を抑えた硬質な中音域、豊かで感情溢れる弱音、チャーミングな歌い回し、ソプラノに求める全てがあります。日本語の歌詞も相俟って泣けます。


 ラトル/ベルリンフィルの「カルメン」もこれまた素晴らしい。カルメンはおそらく4~5組持っていると思うのですが、これと思えるディスクに巡り合っておらず、部分部分を中途半端に聴いてきました。
 個性的なソプラノと迫力あるオケとの対比に強い印象がありましたが、この演奏は歌唱陣とオケとの一体感が違います。互いが寄り添い耳を澄まして合奏しているようです。それと有名な部分の旋律があまりにも魅力的でそれ以外がどうしても冗長に感じられたのですが、ラトル特有のアタックが随所にあり、メリハリが効いていて全体的に飽きさせません。ベルリンフィルの機能美も最高。役者が揃った決定盤の登場です。


 推薦盤をまとめ買いしてそのどれもが絶品なんてことは滅多にあることではないです。柳沢氏に感謝です。


           


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