1968年
投手陣の強化を打ち出している中日ドラゴンズは二日、PL学園・川口孝秀投手(18)=182㌢、70㌔、右投げ右打ち=を獲得した。韓国籍の同投手は、ドラフトの対象とはならず、中日のほか広島が入団交渉を重ねていたが、川口投手自身の希望である「巨人を倒し、優勝のできるチーム」ということと、高木時コーチが実際に投球を受け、長谷川コーチもアドバイスしながら、練習を見るなど、中日側の誠意が実って内諾を得たもの。正式入団発表は、五日午後三時、名古屋市中区の球団事務所で行われる。川口投手は長身を生かしたオーバースローの本格派。PL学園では、副主将をつとめたが、韓国人ということもあって、公式戦には一度も登板していない。だが、武器の速球は重く、広島・木庭スカウトが「すばらしい素質だ。フォームが大きく無理がない。松原君(鳥取西、巨人入り)以上の大物」とほれ込んだほど。同投手は、予選にも投げていないため、一度は野球を断念したようだが、中日からの勧誘があったとき「うれしくて二、三日ねむれませんでした」と大喜びだったという。中日には土屋球団総務が、一日午後一時から、大阪市北区の新阪急ホテルに、父親秀治さん(43)と母親一美さん(40)それに川口投手を招き、本多代理監督も同席して交渉に当った。このとき、川口投手が「江夏(阪神)さんのような速球を押す投手になりたい。それに巨人に勝って優勝できる中日は魅力があります」ともらしていた。さらに、さる二十七日、阪神戦のため来阪していた長谷川、高木時コーチが、布施市内のグラウンドで川口投手の練習に加わり、高木時コーチに約百球のピッチングを受けている。長谷川コーチも細かくアドバイスするなど、すでに退部届けをすませている同投手への勧誘は異例だったが、こんな中日側の誠意が少年野球の監督もやったことがあるという野球好きの父親秀治さんを動かしたようだ。「プロはきびしいところと聞いています。でも十分やれる自信はあります。力いっぱいやって自分の限界をためしてみたい」川口投手は目を輝かせながら抱負を話していた。
投手陣の強化を打ち出している中日ドラゴンズは二日、PL学園・川口孝秀投手(18)=182㌢、70㌔、右投げ右打ち=を獲得した。韓国籍の同投手は、ドラフトの対象とはならず、中日のほか広島が入団交渉を重ねていたが、川口投手自身の希望である「巨人を倒し、優勝のできるチーム」ということと、高木時コーチが実際に投球を受け、長谷川コーチもアドバイスしながら、練習を見るなど、中日側の誠意が実って内諾を得たもの。正式入団発表は、五日午後三時、名古屋市中区の球団事務所で行われる。川口投手は長身を生かしたオーバースローの本格派。PL学園では、副主将をつとめたが、韓国人ということもあって、公式戦には一度も登板していない。だが、武器の速球は重く、広島・木庭スカウトが「すばらしい素質だ。フォームが大きく無理がない。松原君(鳥取西、巨人入り)以上の大物」とほれ込んだほど。同投手は、予選にも投げていないため、一度は野球を断念したようだが、中日からの勧誘があったとき「うれしくて二、三日ねむれませんでした」と大喜びだったという。中日には土屋球団総務が、一日午後一時から、大阪市北区の新阪急ホテルに、父親秀治さん(43)と母親一美さん(40)それに川口投手を招き、本多代理監督も同席して交渉に当った。このとき、川口投手が「江夏(阪神)さんのような速球を押す投手になりたい。それに巨人に勝って優勝できる中日は魅力があります」ともらしていた。さらに、さる二十七日、阪神戦のため来阪していた長谷川、高木時コーチが、布施市内のグラウンドで川口投手の練習に加わり、高木時コーチに約百球のピッチングを受けている。長谷川コーチも細かくアドバイスするなど、すでに退部届けをすませている同投手への勧誘は異例だったが、こんな中日側の誠意が少年野球の監督もやったことがあるという野球好きの父親秀治さんを動かしたようだ。「プロはきびしいところと聞いています。でも十分やれる自信はあります。力いっぱいやって自分の限界をためしてみたい」川口投手は目を輝かせながら抱負を話していた。