1959年
祓川が南海に入団したのは32年。だからことしで三年目。入団当初は「この名前はなんてよむのかな」といわれたものだが、いまはパ・リーグのファンなら「ハライカワ」と読むのに苦労しない。それだけファンの耳に、目に接する機会が多いーつまり売り出し中というわけ。現在は7試合に登板。4勝1敗の好成績。1㍍75、75㌔の身体はいまのプロ野球ではあまり大きいほうでもなく、投球もまた決してハデではない。スリークォーターから投げる内容は直球、スライダー、シュート、カーブ、落ちる球の五種類だが、このうち落ちる球は意識せずに落ちている。祓川の球は金彦ほどの重さはなく、また変化の大きさもないが、ピッチングがよくまとまっているといえる。といって決してコーナーワークだけにたよる投手ではない。調子のよいときは真っ向から押すだけの球速と力を備えている。スタミナの点はまだ完投が一度だけで、本人もよくわからないらしいが「最初からその回、その回を力いっぱい投げていく。それでいてヘタバルことはなかった」というから体力的にはタフなのだろう。問題は制球力である。過去7試合の登板中5試合までが先発という具合で、ちょうど金彦とは対照的な使われ方だが、そのうち完投勝利は四月二十六日の対阪急戦だけ。つづく三十日の対近鉄戦でも八回まで3安打に封じ、連続完投勝利を思わせながら、九回先頭の関根を四球に歩かせたため、皆川の救援を受けている。このときは1-0と接近したスコアという背景で、大事をとったのだが、これというのも祓川が急激にそれも四球からつぶれるという欠点を知っていたからだ。34イニングス投げて被安打が27、奪三振23、与四死球15、自責点15という数字をみれば、四球をもとに一気にくずれる祓川の欠点がよくわかる。とにかく祓川が入団いらい自分のピッチングで一番苦しんだのは、調子の波が大きいことだった。これを「毎日同じピッチングをしていたのでは改まらない。やはりその時、その場での調子に合わせたピッチングを練習していかないとダメだ」と気づいて二年間そのことに努力した。結果はかなり波の小さいピッチングができるようになったが、制球力だけはどうにもならない。その原因はどうやら投げ方にあるようだ。もともと祓川の投げ方はサイドスロー、それをオーバーハンドに変えて、球も速くなりスムーズに投げられるようになったのだが、「疲れてくるといつの間にかサイドに近づいてくる」という。これがたんに制球を狂わしているのだろう。この場合本人がすぐ意識して球のはなし、腰の回転をかえればいいのだが、そんあ器用さはもち合せていない。またそれと気づかずに、同じ腰の回転、手先の使い方をすれば、腕の角度は違っているのだから、コントロールが悪くなるのは当たり前、結局腕の振りをしっかり自分のものにする必要があるわけだ。こんご安定した投球に成長するか否かは、この自己のフォームをしっかりつかみ固定させることにかかっているといえる。
ー自分の投球に自信をもったのは。
祓川 やはり阪急戦で完投したときだが入団いらいはじめての完投勝利ですからね。
ー先発、救援どちらが好きか。
祓川 先発のほうがよい。まだ経験不足だし、制球力も十分でないから勝っているときの救援はちょっと荷が重い。
ー自信をもっている球は。
祓川 スピードボールだが、最近はスライダーにも自信がもてるようになった。
ー球の配合は自分で考えるのか。
祓川 すべて野村さんのサインどおり投げている。
ー投げていて堅くなるか。
祓川 昨年はほとんどアガっていたが、ことしはそうでもない。少し余裕が出てきたのでしょう。
ーこんごの課題は。
祓川 制球力を自分のものにすること。これさえつかめば、かなりやれると思います。
祓川が南海に入団したのは32年。だからことしで三年目。入団当初は「この名前はなんてよむのかな」といわれたものだが、いまはパ・リーグのファンなら「ハライカワ」と読むのに苦労しない。それだけファンの耳に、目に接する機会が多いーつまり売り出し中というわけ。現在は7試合に登板。4勝1敗の好成績。1㍍75、75㌔の身体はいまのプロ野球ではあまり大きいほうでもなく、投球もまた決してハデではない。スリークォーターから投げる内容は直球、スライダー、シュート、カーブ、落ちる球の五種類だが、このうち落ちる球は意識せずに落ちている。祓川の球は金彦ほどの重さはなく、また変化の大きさもないが、ピッチングがよくまとまっているといえる。といって決してコーナーワークだけにたよる投手ではない。調子のよいときは真っ向から押すだけの球速と力を備えている。スタミナの点はまだ完投が一度だけで、本人もよくわからないらしいが「最初からその回、その回を力いっぱい投げていく。それでいてヘタバルことはなかった」というから体力的にはタフなのだろう。問題は制球力である。過去7試合の登板中5試合までが先発という具合で、ちょうど金彦とは対照的な使われ方だが、そのうち完投勝利は四月二十六日の対阪急戦だけ。つづく三十日の対近鉄戦でも八回まで3安打に封じ、連続完投勝利を思わせながら、九回先頭の関根を四球に歩かせたため、皆川の救援を受けている。このときは1-0と接近したスコアという背景で、大事をとったのだが、これというのも祓川が急激にそれも四球からつぶれるという欠点を知っていたからだ。34イニングス投げて被安打が27、奪三振23、与四死球15、自責点15という数字をみれば、四球をもとに一気にくずれる祓川の欠点がよくわかる。とにかく祓川が入団いらい自分のピッチングで一番苦しんだのは、調子の波が大きいことだった。これを「毎日同じピッチングをしていたのでは改まらない。やはりその時、その場での調子に合わせたピッチングを練習していかないとダメだ」と気づいて二年間そのことに努力した。結果はかなり波の小さいピッチングができるようになったが、制球力だけはどうにもならない。その原因はどうやら投げ方にあるようだ。もともと祓川の投げ方はサイドスロー、それをオーバーハンドに変えて、球も速くなりスムーズに投げられるようになったのだが、「疲れてくるといつの間にかサイドに近づいてくる」という。これがたんに制球を狂わしているのだろう。この場合本人がすぐ意識して球のはなし、腰の回転をかえればいいのだが、そんあ器用さはもち合せていない。またそれと気づかずに、同じ腰の回転、手先の使い方をすれば、腕の角度は違っているのだから、コントロールが悪くなるのは当たり前、結局腕の振りをしっかり自分のものにする必要があるわけだ。こんご安定した投球に成長するか否かは、この自己のフォームをしっかりつかみ固定させることにかかっているといえる。
ー自分の投球に自信をもったのは。
祓川 やはり阪急戦で完投したときだが入団いらいはじめての完投勝利ですからね。
ー先発、救援どちらが好きか。
祓川 先発のほうがよい。まだ経験不足だし、制球力も十分でないから勝っているときの救援はちょっと荷が重い。
ー自信をもっている球は。
祓川 スピードボールだが、最近はスライダーにも自信がもてるようになった。
ー球の配合は自分で考えるのか。
祓川 すべて野村さんのサインどおり投げている。
ー投げていて堅くなるか。
祓川 昨年はほとんどアガっていたが、ことしはそうでもない。少し余裕が出てきたのでしょう。
ーこんごの課題は。
祓川 制球力を自分のものにすること。これさえつかめば、かなりやれると思います。