ドアの向こう

日々のメモ書き 

アルバム馬籠

2007-06-06 | 道すがら

  甃がつづく坂道、 古い家並みと旅籠。 要所には枡形が造られ(直角に設けられた二つの城門と城壁とで囲まれた四角い空き地。 馬で突っ込むとすんなり曲がれない、勢いを鈍らせる)、 とくに傾斜もきつい。 
  写真: 馬籠バスターミナルから入ったばかり。 藤村記念館の標識、 かならず、もう一度来よう。

 ・本陣、 脇本陣。 
 ・水車塚(写真は前の日記に。 小屋は再建され、水車は当時のまま)。 
 ・馬籠峠。  ・樹齢 約300年の椹サワラの木  胴回り5.5M 高さ  41M

 ・木曽の森林資源を取り締まった「一石栃の白木改め番所跡」 
   このことは 「夜明け前」にもでてくる。
 「昔はこの木曾山の木一本伐ると、首一つなかったものだぞ。」
   陣屋の役人の威オドし文句だ。 

 領主の尾張藩にとって重要な森林資源、 檜の小枝に至るまで許可を示す刻印を調べた番所。

 ・宮本武蔵がお通に出逢った場所。 女滝、 男滝、 思ったよりも小さな滝だ。 
 ・蛍の里の 大妻籠。  

                                    

 
 中山道馬籠宿
  
 
   江戸へ  八十里
   京へ    五十二里半

  山の斜面に造られた宿場町  急な坂がつづく
  皇女和宮… 文久元年(1861.9.26)、徳川家茂との婚儀のため京都を出発。 攘夷派の妨害を避けるため、 東海道でなく中山道を経由して東下した。
 芭蕉、 十辺舎一九、 良寛も
  旅した

     

 陣場跡
  
  碑面にあるニーチェの言葉
  心を起さうと思はヾ
     先づ身を起せ

  藤村は紀行文 「海へ」の
  副題にこれを添えた。

 雲間に 恵那山 海抜2192M

 一里ごとに塚を築き、榎を植えて 道のりの目安とした。 馬方や牛方で賑わった。

  一里を36町(3.9㎞)とし、輸送荷物の引き継ぎや駄賃計算のもととした。

木立のなか、 昔ながらの急な
甃を登る。 
この辺りを十曲峠という。

美濃路と木曽路の境を超え  

 馬籠峠頂上に着く。

 標高801M

向かいに茶店あり

         

  この先旅籠がつづく。

 木曽川を渡ると 

   いよいよ妻籠宿に入る。
 

                                                                                      
           つづく
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(馬&妻)籠

2007-06-06 | 道すがら
水車塚

  木曾路はすべて山の中である。 あるところは岨ソバづたいに行く崖の道であり、あるところは数十間の深さに臨む木曾川の岸であり、あるところは山の…  
  島崎藤村 「夜明け前」 の、こんな書き出しが思い出された。
   (写真:水車塚 水にうもれたる蜂谷の家族四人の記念に  島崎藤村しるす)

  長編すべてを読んではいない。
  馬籠宿の本陣、庄屋、問屋を兼ねる第17代当主 青山半蔵は、 劇団民藝の俳優、 滝沢修になって、 声も姿もはっきりと脳裏にある。
 彼は父の吉左衛門に似て背セイも高く、青々とした月代サカヤキも男らしく目につく若者である… 
  風貌もぴったりで、 熱演だった。

  名優は厳しい鍛錬のすえ主人公を演じきった。 完璧な舞台にかける情熱は、 半蔵の志に重なるところもあるように思われた。 
  若き日、 観劇は快い緊張感をともなって、 原作や俳優、装置、音楽、照明、演出。 どれも魅了し、 暗転の虜になっていった。
  小さな旅へ。  移りゆく風景が心をほぐす。 石をのせた板屋根、 栗の多い林(渋皮のむけし女は見えねども栗のこはめし爰ココの名物 十辺舎一九) 
  … 舞台がもう目の前にある。 
 
                  -☆-

  6月2日、 誘われてウォーキングに参加。  資料館も記念館も表から見るだけ、 ところどころガイドの解説はあったが拝観もしない。 ただひたすら歩く旅。  なにしろ片道4時間半もかかるのだから。 バスに揺られて馬籠マゴメに着く、 そこから徒歩ホで妻籠ツマゴまで、 歴史の道をゆく。 行程8㎞余り、 所要2時間30分。 妻籠にて自由行動約1時間、 渋滞を避け直ちに乗車、 とって返す強行軍だ。 

                   -☆-

  急な上り坂をいくつか超えると、 馬籠峠に出た。 青山半蔵が仰いだ恵那山は頂を雲に隠している。 吹きわたる風が、 汗を冷気に変えてくれた。 遙かな山並み、 眼下の棚田、 森、 パノラマが藤村の語る風景そのままに広がっている。 あそこに深い谷がある、 あそこに遠い高原がある…  

  お民、来てごらん。 きょうは恵那山がよく見えますよ。 妻籠の方はどうかねえ、木曾川の音が聞こえるかねえ。」
 「えゝ、 日によってよく聞こえます。 わたしどもの家は河のすぐそばでもありませんけれど。」
  「妻籠じゃそうだろうねえ。ここでは河の音は聞こえない。そのかわり、恵那山の方で鳴る風の音が手に取るように聞こえますよ。」
  「それでも、まあよいながめですこと。」
  「そりゃ馬籠はこんな峠の上ですから、 隣の国まで見えます。 どうかするとお天気のよい日には、遠い伊吹山まで見えることがありますよ――」
  林も深く谷も深い方に住み慣れたお民は、 この馬籠に来て、西の方に明るく開けた空を見た。 何もかもお民にはめずらしかった。 わずかに二里を隔てた妻籠と馬籠とでも、 言葉の訛りからしていくらか違っていた。この村へ来て味わうことのできる紅い「ずいき」の漬物なぞも、 妻籠の本陣では造らないものであった。

  
美濃の平野が遠く見渡される。 天気のいい日には近江の伊吹山までかすかに見える…  妻籠から嫁いできた妻、お民。

  

                 宿場らしい高札場コウサツバは、 広報を掲示したところ。

  遠くの斜面にミズキが雪崩るように咲いている、 白い花の階段があちこちに見られた。  ヤマボウシは乱舞する蝶のようだし、 花びらの真ん中に緑の粒がかわいらしく固まっている。 これが花だよ、 ようやく分かった。 

 叢に入るとマムシ草が首をもたげ、 こちらを窺う。 今にも動き出す風情で不気味だ。 街道沿いに、 レンゲ、赤詰草 ・ 白詰草、 キバナコスモス、キンポウゲ。 朴が大輪の花をつけ、 つよい芳香であっと言わせる。 ほら、あそこ! 指差して知らせる。  エゴノキのシャンデリアもニセアカシア(針槐ハリエンジュ)もまっ盛りだ。

 つづく

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