皇室の名宝-日本美の華
かつて、ニワトリのごく近くで暮らしていた。 雄鳥がけたたましく刻を告げると埃を舞いあげ羽ばたきをくり返した。 姿は否応なく眼にしていたが気持まで理解しなかった。 これほど美しいとも思えなかった。 そのくせ卵は戴いた。
若冲の群鶏図、 仕草や目つき 観察が凄い、鋭い。 間然する所なし、 鶏の魂が取り付いてしまったようだ。
羽根の描写、 どれひとつ同じデザインはなく、 克明な写実と気迫に圧倒された。 向日葵のまえで見得を切る鶏は役者のよう。 棕櫚雄鶏図 棕櫚のシャープな緑が雄鶏を引き立てている。 芙蓉双鶏図。 雪中鴛鴦図 (表裏から攻める胡粉の雪、 鴛鴦、 山茶花にも降りかかる)好きな絵。 池辺群虫図の虫や蛙、トカゲ。 鸚鵡がとまる老松は、 大蛇の如くだ。
↑写真左から 紫陽花双鶏図 群鶏図 雪中鴛鴦図
唐獅子図屏風 ・狩野永徳 ・ひ孫の狩野常信の左隻。
動植綵絵 伊藤若冲のまえに人だかり。 最前列が動かない。 車いすの方が気の毒だった。 酒井抱一 花鳥十二ヶ月図 人垣の後ろの方から上半分しか見られない、タイトルの表示が下にあるのも困る。 上に在れば絵の内容も理解しやすいと思う。 上下両方にあると良い。
掛け物はまず上半分を見て、 戻って下半分を覗く。 タイトルも「玉蜀黍… 朝顔に… 青蛙図」 列の奥に分割してようやく読めた。
・萬歳楽置物 高村光雲・山崎朝雲作 1躯 萬歳楽を舞う人物も、 置き台も。
・色絵金彩菊貼付香炉 沈壽官(十二代)作
・七宝月夜深林図額 濤川惣助作
水墨画のようだが七宝による。 静かに更けゆく秋の夜、 月がひっそりと出ている、 雲行きと虫の声。 主題を右寄りに、 余白が語る。
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メモ まえから見たかった絵
西瓜図 絹本着色 (部分) 北斎
滲みでるジュースを吸って張りついた半紙。 金気を帯びた汁の匂い、 黒い種が蠢くよう、 果肉の赤味。 白い繊維が走る。 緑は濃くて黒い、 堅い皮と縁側のいろ、生乾いた紙の質感。 冷たい刃物の感触や重さも伝わった。
画狂老人卍筆 80才の作品
七夕は乞功奠キコウデンから。 調べると 乞は求める、功は技能、巧み。 奠はまつる。 織女星をあがめ手芸 ・ 裁縫の上達をねがう行事。 角盥に梶の葉を浮かべたそうだ。
紅白のリボンのような皮は短冊に 注連飾りをして、 「梶の葉」にかける「鍛冶の刃」 北斎の粋、 あそび心。
全体を見て 供え物と解った。
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玉柏 平福百穂 6曲1双
七面鳥とは 趣がちがう
爽やかな緑に 涼風がぬけた
七宝四季花鳥図花瓶 並河靖之
モミジの若葉が愛おしい 何枚あるのか
精緻な文様 色彩に魅かれる
花唐草透彫水晶入短刀拵
(短刀「宗瑞正宗」の拵) 香川勝廣ほか作
柄は古香木、 細緻な飾りに見入った
春郊鷹狩・秋庭観楓図壁掛
川島甚兵衛(三代)作
二点とも 4、5年かかって完成した
織物とは信じがたい
色絵金彩菊貼付香炉 沈壽官(十二代)
菊蒔絵螺鈿棚 川之邊一朝ほか作 1基
蘭陵王置物 海野勝 など 印象に残った

帝室技芸員による名品、 伝統の美を心ゆくまで堪能し 溜め息ばかりでた。
そして恒例の今日のユリノキ 黄葉が始まっている