(シッポ命!)
夜9時を少しまわった頃に帰宅し、ドアを開けて中へ入るとそこに彼が立っていた。
わたしを見るとすぐに、何も言わずに部屋へと入っていく。後ろ姿が慌ただしい。
待ちくたびれて怒っているのかと思ったが、照れているのだった。
(日ごとに深い緑に変わっていく)
ごめんねー、と後をついていく。
するとくるっと振り向き、わーっと飛びついてくる。
そしてまた離れる。そしてまた飛びついてくる。
繰り返しているうちに落ち着いて我に返って、やっと部屋の中央に座るのである。
感動は薄れることがないらしい。毎日、帰宅するたびに彼はわたしをこうやって
出迎える。わたしは腰を沈めて抱きしめようとするが、彼はくるくると身体を
回すのでうまくいかない。ぶんぶんと揺れるシッポでわたしの頬をなぜるのである。
撫でてくれるのは嬉しい。
ゴワゴワとした毛と鉄の芯でも入っているのかと思う彼の尾はとても敏感に彼の
思いを表わしているのだが、わたしはイタいよ、とつい大声をあげる。
その声でやっと彼は感情を押さえ少し静かになり、大きな目でみつめてくる。
その目で、待っていたよ、飯くれと言うのである。
飯を待っていたのか、わたしに会いたかったのか、と問いつめたい気もするが‥‥。
毎日、これだけ感動を振りまいてくれるのは彼だけなので、どっちでもいいやと
すぐに思い直して飯の支度にとりかかるのであった。
(少し前まで見えていた道路の向こうにある一軒が隠れてしまった、
まだ若い紅葉も葉を茂らせて、懸命に立っている)
夜9時を少しまわった頃に帰宅し、ドアを開けて中へ入るとそこに彼が立っていた。
わたしを見るとすぐに、何も言わずに部屋へと入っていく。後ろ姿が慌ただしい。
待ちくたびれて怒っているのかと思ったが、照れているのだった。
(日ごとに深い緑に変わっていく)
ごめんねー、と後をついていく。
するとくるっと振り向き、わーっと飛びついてくる。
そしてまた離れる。そしてまた飛びついてくる。
繰り返しているうちに落ち着いて我に返って、やっと部屋の中央に座るのである。
感動は薄れることがないらしい。毎日、帰宅するたびに彼はわたしをこうやって
出迎える。わたしは腰を沈めて抱きしめようとするが、彼はくるくると身体を
回すのでうまくいかない。ぶんぶんと揺れるシッポでわたしの頬をなぜるのである。
撫でてくれるのは嬉しい。
ゴワゴワとした毛と鉄の芯でも入っているのかと思う彼の尾はとても敏感に彼の
思いを表わしているのだが、わたしはイタいよ、とつい大声をあげる。
その声でやっと彼は感情を押さえ少し静かになり、大きな目でみつめてくる。
その目で、待っていたよ、飯くれと言うのである。
飯を待っていたのか、わたしに会いたかったのか、と問いつめたい気もするが‥‥。
毎日、これだけ感動を振りまいてくれるのは彼だけなので、どっちでもいいやと
すぐに思い直して飯の支度にとりかかるのであった。
(少し前まで見えていた道路の向こうにある一軒が隠れてしまった、
まだ若い紅葉も葉を茂らせて、懸命に立っている)