心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

「故郷70年」

2006-09-17 14:16:03 | Weblog
 台風が近づいているからなのでしょうか。真っ青な秋空が印象的です。遠くの山肌が近くに見えるのも、淀んだ空気を台風の余波がどこかにもっていってくれたからなのでしょう。そんな、気持ちの良い朝を愛犬ゴンタとお散歩でした。でも、午後からは、なんだか雲行きが怪しそう。珍しく、松下眞一作詞作曲の交響幻想曲「淀川」を聴きながらのブログ更新です。
 きょうと明日は連休です。今週末もまたまた連休です。そして10月の第2週にも連休があります。といっても、今週はなにやかやとゴソゴソする毎日。来週のお休みには、知人がプロデュースしたブレヒト作の演劇に招待されているので、そちらに顔を出す予定。10月の連休は、とうとう息子の結婚式を迎えます。まぁ、それとなく忙しくも楽しい日々を過ごしているということなのでしょう。
 ところで、きのう帰宅途中に立ち寄った古書店で、柳田國男著「故郷70年」を見つけました。今年の初め、NHKテレビの「知るを楽しむ」シリーズで、白洲正子さんに次いで紹介された柳田國男のひととなりを興味深く学んだのですが、そのなかにこの「故郷70年」の内容が引用されていました。神戸新聞に連載されたものを一冊の本にまとめたもので、発行は昭和34年11月20日。定価550円とあります。ほぼ同じ値段で手にしました。集中して読み込むというよりも、ぱらぱらとめくりながら走馬灯のように映ろう、明治・大正期の播州・辻川と利根川沿いの布川の風景を追いました。そして人の心を思いました。1日中、土蔵のなかの書物に向き合った場面などは、わたしにも共通の体験があります。部屋の壁すべてが本棚という8畳ほどの部屋で、祖父が所蔵していた書籍に囲まれて過ごした日々を思い出したものです。
 と、そんな贅沢な時間を過ごしていると、急に電話がかかってきました。「○○さんからお電話よ」と。○○君?誰だろう?「もしもし...」。そう、ずいぶん昔の旧友からの電話でした。田舎の中学校を卒業して今年で40年を迎えるのだそうです。同窓会をやるから是非帰ってきてくれと。A君、Bさん、旧姓C君、旧姓Dさん...。懐かしい名前がどんどん登場します。あれから40年、みなそれぞれの道を歩みました。多くの者が田舎を後にするなかで、彼ら彼女らは大学を卒業すると地元に戻り、親の跡を継いだ。そして立派に家を継いだ。土地と生活の場が昔ほどに緊密ではなくなってしまった現代社会で、根無し草のように放浪するかのような自らの生きざまを思うと、何かしら落ち着きのなさを感じたものです。
 そんな電話と柳田國男の世界が妙につながって、単なる懐かしさではなく、何かしら怖さのようなもの、自らの存在自体を説明できないもどかしさのようなものを感じました。何か不思議な心の動きを思いました。....でも、友人との電話は延々と続きました。楽しい時間を過ごしました。秋だから、よけに感傷的な思いに駆られるのでしょうか。
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