12月1日、師走を迎えました。愛犬ゴンタと朝の散歩にでかけると、丘の上のモミジが美しく紅葉していました。今秋は、家内が足を悪くしているため、遠出ができません。近場の木々を眺めて秋を感じる今日この頃です。
週末の夕刻、大阪駅前のグランフロント大阪であった会合に出席した帰り道、「うめきた広場」に大勢の方々が集まっていたので、なんだろうと覗いてみると、GRAND WISH CHRISTMAS イルミネーションの点灯式が行われていました。時の早やさを思う反面、殺風景な都会の片隅に灯る温かい光が心に沁みます。
こうしてぼんやりと一週間を振り返ってみると、先週はいろいろ気づきの多かった一週間だったような気がします。週の半ばには、若い頃から一緒に活動してきた広島の知人と久しぶりに一献傾けました。いつも手弁当で、大阪や東京や京都に気軽にやってきてはお勉強会の主役になる彼。私より2歳ほど年上ですが、まだまだ地元で現役続行中です。美味しい蛎料理のあとは、北新地を思わせる流川に繰り出します。とあるビルの4階にあるお店で仕切り直しですが、なんとママさんは彼の高校時代の同級生だとか。所々に旧友の名前がちらほら。末期癌の友人のことを心配そうに話していました。
そうそう、週末には、病院に行きました。経過観察2か月後の成果は如何に?と期待するものの、数値に大きな変化はなし。むしろ悪化した項目もありました。いずれにしても、通院は「もう終わりでしょっ」と思いましたが、交替したばかりの若いお医者さんは「次は3カ月後の来年2月にしましょう」と。ええっ、まだ通院するんですか?医療費の無駄ですよ。
医療と言えば、先日、ひょんなことから、滋賀県にあるヴォーリズ記念病院ホスピスを舞台にした、細井医師とスタッフの、患者とその家族に「寄り添う」ケアのドキュメンタリー映画を観ました。末期癌の方の入院からご家族の看取りまで、淡々と流れる映像のなかで細井医師の優しさ、温かさが充満していて、自然と涙がこぼれる作品でした。人の幸せってなんだろう、そんなことを思ったものでした。
ヴォ―リズと言えば名建築家として知られ、関西学院大学ほか数々の建築物が人の心を惹きつけます。メンソレータムで有名なヴォーリズ合名会社(のちの近江兄弟社)の創立者の一人でもあり、その名を冠した病院があるとは知りませんでした。我が家の山小屋のある近江今津にも、いくつかの建物が今も残っています。数年前に撮影した写真の中から見つけたのは、今津基督教会館でした。
先週は、ブータン関連の本を鞄に入れて出張に出かけた1週間でもありました。そのひとつが、2011年2月14日、京都の龍谷大学で開催されたブータン王国のケサン・チョデン・ワンチュック王女特別講演会の講演録「ブータン王国の国民総幸福(GNH)政策」でした。この講演の最後に王女はこんなことを言っています。
「日本は経済的繁栄の頂点に到達したことで、これからは経済の低成長と高齢化社会という未来に立ち向かわなけばなりません。そのような時代には、解決が困難な様々な問題を突きつけられ、創意工夫と勇気ある行動が求められます。しかし、往々に慣れ親しんだ見方に留まり、従来と同じ型にはまった対策を講じるだけで済ませようとする誘惑にかられます。たとえそれがよくても一時的な効果しかなく、長期的にはより危険であるとわかっていてもです。ただし、私は、日本が、必ずや変化することを、そしてそれは日本独自のやり方でかわっていくであろうことを確信しています」
その1カ月後、東日本大震災が起こりました。幸福論がいろいろな場面で語られたのもその時期です。あれから3年が経過しようとしていますが、あの原点回帰の問いかけが、今また薄れてきてはいないか。社会の様々な分野で、専門分化が進み、事の本質よりも手法に偏り、目先の損得に拘り、全体を見通す視点、哲学を蔑にする従前の癖がまたぞろ頭を擡げていないか。王女の宿題に対する答えが今問われているような気がしています。
と、少し小難しい内容になってしまいましたが、人の幸せって、本当になんなんでしょうね。特別講演会の質疑応答のなかで、質問に答えたナムギャル大使は、2008年に実施した国民総幸福度に関する国政調査の結果を報告されました。「人生において重要なものは何か」との設問に、95%のブータンの国民が「家族との生活」をあげています。91.8%が「責任感」、90.3%が「キャリアにおける成功」、87.5%が「精神的な信仰」「財政的な安定」、81.8%が「友情」と答えたそうです。「物質的な豊かさ」はその次であるとも。
2013年という年もあと1カ月。どんな締め括りをして、次に繫げていけるのか。少し落ち着いて考えてみたいと思っています。