きょう、塩野七生さんの「ローマ人の物語」37巻「最後の努力」を読み終えました。紀元前8世紀に建国されたローマの、およそ2000年にわたる歴史物語も、そろそろ終盤を迎えようとしています。「最後の努力」の舞台となる3世紀は、度重なる蛮族の侵入や内戦、国内経済の疲弊、さらには蛮族の侵入で農地が荒れ農民が都会に流出するために起きる地方の過疎化など、様々な問題が立ちはだかります。73年の間に22人もの皇帝が入れ替わり、ペルシャとの戦いでは皇帝ヴァレりアヌスが捕縛されるという前代未聞の出来事まで起こりました。
そこに登場したのが皇帝ディオクレティアヌスでした。西はブリタニアから東は小アジア・北アフリカに及ぶ広大な領土を4つに分け、それを2人の正帝と2人の副帝による「四頭政」をもって治め、北方蛮族と大国ペルシャの侵入を防ぎました。しかし、巨大化した組織を分割し細分化するのは、機能性向上というメリットがある一方で、組織の肥大化と経費の増大を招くことになります。防衛に従事する兵士の数が30万人から60万人に増え、中央政府(皇宮)に勤める官僚組織が増え、人件費が4倍になりました。
塩野さんは「人間とは、一つの組織に帰属するのに慣れ責任をもたせられることによって、他の分野からの干渉を嫌うようになるものなのである。そして、干渉を嫌う態度とは、自分も他者に干渉しないやり方に繋がる。この考え方が、自らの属す組織の肥大化につながっていくのも当然であった」と言います。何やら我が社にも通じる言葉です。2000年前の出来事を、現在の出来事のように思い考えるという意味で、お勉強をさせていただきました。来週からは、38巻「キリストの勝利」を開きます。いよいよ皇帝コンスタンティヌスの時代です。あと6冊で全43巻を読破することになりますが、通勤電車の中のお気軽な読書です。1冊10日として60日。やはり年を越しそうです。
そうそう、組織と責任ということで思い出したのですが、livedoorNEWSが中央日報の記事を取り上げています。見出しは、村上春樹「日本、戦争を起こして責任回避」。11月3日の毎日新聞のインタビュー記事のことです。記事によれば、村上春樹さんは「日本の抱える問題に、共通して自己責任の回避があると感じる」と言い、「1945年の終戦に関しても2011年の福島第1原発事故に関しても、誰も本当には責任を取っていないという気がする」と述べていると伝えています。さらに、「日本人には自分たちが加害者でもあったという発想が基本的に希薄だし、その傾向はますます強くなっているように思う」と言い、福島原発事故にしても「誰が加害者であるかということが真剣には追及されていない」「地震と津波が最大の加害者で、あとはみんな被害者だったみたいなことで収まってしまいかねない」と懸念を示しています。毎日新聞の紙面を確認していないので引用記事でしか判りませんが、この記事が事実であるとすれば、村上春樹さんは非常に重要なことをお話しになっているように思います。来週、どこかの図書館にでも行って毎日新聞のバックナンバーを調べてみましょう。
今日は少し難しいことを書き過ぎましたので、最後に息抜きです。先週は孫君たちがやってきて賑やかな休日でした。日曜日は、天候不順では遠出もできまいと、途中で雨が降ったら梅田界隈へ、雨が降らなければ大阪城公園に行こうというぼんやりとした目的をもって出かけました。結局、曇天の大阪城公園に向かいましたが、ちょうど「大阪城天守閣の秋まつり」の真っ最中。太陽の広場では「だんじり祭i n 大阪城2 0 14」、諏訪流放鷹術の実演やら大坂の陣400年祭で、多くの観光客で賑わっていました。
大阪に住まいながら大阪城公園に行く機会の少ない私にとっては、ひとつの発見でした。この場所も、昔は戦の場でもありました。お堀を巡らして攻めにくくする城のつくりに妙に納得したものです。