心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

修行の道場「土佐」へ。

2017-01-14 00:18:30 | 四国遍路

 きょうは家内の両親のお墓参りに行ってきました。そのあと、お買い物に付き合い、いやいや私もちゃんとウォーキング用の靴を買っていただきましたが、夜は行きつけの小料理屋で食事をして帰りました。昨年末からドタバタ続きでしたから、ささやかな家内の慰労会でもありました。
 さて、昨夜は久しぶりに、京都にあるこころの未来研究センターに出かけてきました。10回目となるブータン文化講座の今回のテーマは「ブータンの教育」でした。ブータン王国のポーデル元教育大臣から、国民総幸福度(GNH)をベースにした教育の取り組みについてお話しを伺いました。小さな国だから国の「質」を高めるには「教育」が重要だとして、教育指針「Green Schools」を示しながら教育改革の現状と課題を熱っぽく語っていただきました。その日は、テレビニュースでアメリカ次期大統領の独善的な記者会見を見たばかりでしたから、そのギャップの大きさが気になった一日でもありました。
 帰りの電車の中で一冊の新書を読み終えました。岩波新書「弘法大師空海と出会う」です。著者は四国八十八ヶ所霊場第二十八番札所・大日寺住職の川崎一陽さんです。その大日寺を、私は数日前に参拝したところです。
今回巡ったのはつぎの7ヶ寺でした。

   第三 十 番札所・百百山善楽寺(高知市)      ご本尊は阿弥陀如来
 第二十九番札所・摩尼山国分寺(南国市)     ご本尊は千手千眼観世音菩薩
 第二十八番札所・法界山大日寺(香美郡)     ご本尊は大日如来
 第二十七番札所・竹林山神峯寺(安芸郡)     ご本尊は十一面観世音菩薩
 第二十六番札所・龍頭山金剛頂寺(室戸市)  ご本尊は薬師如来
 第二十五番札所・宝珠山津照寺(室戸市)     ご本尊は延命地蔵菩薩
 第二十四番札所・室戸山最御崎寺(室戸市)  ご本尊は虚空蔵菩薩

 弘法大師空海により土佐神社の別当寺として建立された善楽寺は、明治に廃仏毀釈で一端は廃寺となりましたが、地元の人々の手で再建されたお寺です。大降りになった雨の中で般若心経を唱えました。
 次に訪ねたのは国分寺。昔、この界隈に「土佐日記」を著した紀貫之が住んでいたと伝えられています。仁王門で一礼して杉林を進むと目の前に鐘楼が現れ、その先に本堂と大師堂があります。永禄元年(1558年)に再建されたという本堂は歴史を感じさせました。境内の一画には「酒断地蔵尊」の祠がありましたが、私にはできそうにありません。
 岩波新書「弘法大師空海と出会う」を著した川崎住職がお勤めの大日寺は、奈良時代に行基が開いたお寺です。こちらも廃仏毀釈の影響を受けました。境内の一画にひっそりと佇む無縁仏に出会いました。遍路の旅では、その昔遍路の途上で息途絶えた方々を弔った無縁仏を至る所で目にします。
  二日目は朝7時半に宿を出ると、神峯寺に向かいました。標高630メートルの山の中腹にあり、歩き遍路の方々には「土佐の遍路転がし」と言われるほどの難所です。そこをバスとタクシーを乗り継いで登っていきます。山門をくぐり長い長い階段を登ると、遠くに室戸湾を望む、そんなところに本堂と大師堂はありました。途中、「土佐の名水、神峯の水」で喉を潤します。
 金剛頂寺では、山門に大きな草鞋が奉納されていました。ここも厳しい土佐の遍路を思わせます。大師堂の横に「がん封じの椿御霊木」がありました。そんなに古いものではなさそうですが、癌検診に無縁でもない私です。ついつい触ってお願いをしておきました。
 津照寺の石段も登るのがたいへんでした。勾配が急なうえに凸凹で、つい踏み外しそうになります。杖を突き、膝の痛み止めの薬を飲みながら遍路の旅を続けていらっしゃる同宿の方も、なんとか本堂に辿り着くことができました。
 最御崎寺は、室戸岬のてっぺんにあるお寺です。それだけに、太平洋の風をまともにうける岬の上に立派な伽藍が広がります。虚空蔵菩薩、十一面観世音菩薩の銅像が見事でした。
 ここでは「空海の七不思議」というものに出会います。まずは「鐘石」。小石で叩くと鐘のように音を発して、この響きは冥途まで届くのだと。叩いてみて納得しました。もうひとつは、参道や境内に繁茂する「喰わず芋」伝説。大師が里芋に似たお芋を所望すると、村人は「これは食べられない」と断ったところ、ほんとうに食べられなくなってしまったというお話しです。
 室戸付近は、むかし弘法大師空海が修行に励んだ地域として知られています。なかでも室戸岬の先端にある「御厨人窟(みくろど)」と呼ばれる洞窟は、洞内から空の青と海の青が織りなす雄大な風景を望むことができるのだそうで、それが空海の名前の語源になっているのだそうです。残念ながら現在は洞内に入ることはできません。バスの車窓から眺めました。 今回もいろいろな方々との出会いがあり、清々しい気持ちでお参りすることができました。土佐の国には来月もやってくる予定です。次回は足摺岬界隈になります。

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