心の風景

晴耕雨読を夢見る初老の雑記帳

寸暇を惜しんで自分の居場所を探す

2013-07-15 09:22:35 | Weblog

 先週のブログで梅雨明け宣言を予感した翌日、近畿地方も梅雨明けとなり、朝から火照るような暑さに包まれました。そんな変化を見逃さないのが夏蝉です。朝、出勤の途上、蝉たちのか細い声が聞こえていましたが、1週間もたてば本物です。今朝も、雨が止むや否や、蝉の大合唱が始まりました。夏、到来です。
 さて、先週はいろんな所に出かけました。火曜日は東京へ、水曜日は神戸、といっても山を越えた三田市へ。木曜日は広島へ。1日おいて土日は石川県金沢市へと、落ち着きのない日々を過ごしました。
 久しぶりに東京に出かけた火曜日は、いつものように朝早く家を出ると10時30分に東京駅に到着。午後のお仕事の前に神保町の古書店「小宮山書店」をのぞきました。手にしたのは中沢新一著「森のバロック」(せりか書房)でした。すうっと通り過ぎていくところでしたが、なんとなく足が止まり、書棚から手にとってみると、帯に「日本思想の可能性の宇宙樹~南方熊楠論」の文字。本を開いて「はじめに」の冒頭には「この本は、南方熊楠の伝記ではない。また、彼が考えたこと、書いたこと、おこなったことの跡を追って、その生涯と学問の輪郭を描き出すことにも、この本は興味をいだいていない」と意外な書き出し。500ページ近い単行本ですから、いっきに読む時間はありませんが、帰りの新幹線の中で、あるいは眠る前の僅かな時間を利用して、ぱらぱらとめくっています。
 金曜日に20人ほどの学生さんの採用面接を済ますと、翌土曜日は金沢に向かいました。少しお話しをしてほしいという要望を伺っていましたが、ドタバタしていて何も用意できていなかったので、金沢駅に到着するとホテル日航金沢の一室に籠って1時間ほど心の整理をしました。シャワーを浴びて、いざ会場へ。地元の皆さんと楽しい時間を過ごしました。その夜は、ホテルに戻ってスカイラウンジでひと息入れてから深い眠りにつきました。写真は雨の金沢駅界隈の風景ですが、金沢は今、北陸新幹線の開通を2年後に控えて活気づいていました。
 3連休を潰しての出張でしたので、実は、昨日の日曜日は、朝、土砂降りの金沢駅を跡にして昼前に京都駅に着くと、地下鉄に乗り換えて烏丸御池駅で家内と合流しました。お目当ては、前日の13日から京都文化博物館で始まった、2013年NHK大河ドラマ特別展「八重の桜」でした。
 史料点数は210点。「会津の教え」「幕末の京都」「会津籠城」「古都復興~覚馬と襄」「ハンサムウーマン」という流れで構成されていて、史料のひとつひとつに目を通していたら、見終わるまでに2時間あまりかかってしまいました。それほどに見応えのある企画でした。中には、八重が操っていたのと同型のゲベール銃、スペンサー銃なども展示されていました。幕末から明治にかけての激動の時代を、自らの信念を胸に生き抜いた人々の生き様がずしりと迫ってきました。
 初めて訪れた京都文化博物館です。少し遅めの昼食をすませると、館内を散策しました。別館ホールは国指定重要文化財の旧日本銀行京都支店でした。大阪の中央公会堂に似た明治の香りが漂うホールでは、祇園祭ミュージアムコンサートが開かれていて、この日はジャズ演奏でした。特別展は、その別館の裏にある新館で開かれています。
 1階に紙の専門店「楽紙館」がありました。家内が様々な紙を手に楽しそうでした。紙の種類といい手触りといい、その多様さには驚きました。私もブックカバーに使えそうな少し厚手の和紙を何枚か手にしました。この日は祇園祭宵々々山で、京の街はどこからともなくお囃子の音が聞こえてきます。梅雨が明けて、いよいよ夏真っ盛りを予感させる、そんな季節。冷たい美味しいビールをいただいて帰りました。
 寸暇を惜しんで、隙間時間に自分の居場所を探す、そんな1週間でした。きょうは、ラザール・ベルマンのLPを聴きながら、1日遅れのブログ更新です。1977年9月29日、北海道厚生年金会館で開かれた実況録音で、バッハの「シャコンヌ」、スクリャービンの「練習曲」「ピアノソナタ」、ラフマニノフの「13の前奏曲」などが、蝉の鳴き声に共鳴するように響いています。

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