ブラスカル

元マラソンランナーですが、今や加齢と故障でお散歩専門、ブラタモリっぽく街歩きをしています。

15年5月に読んだ本

2015-06-01 21:30:10 | 読書
今月は20冊、結構読みました。

ミステリーが8冊。

◆隠蔽捜査(今野敏) (新潮文庫)
東大法学部卒のキャリア組が主人公という異色の警察もの。
前半は官僚や官僚組織のいやらしさみたいなところばかり目立つのだが、話が進むにつれ、竜崎のエリートとしての使命感、生きざまが清々しく思えてくる。
ノブレス・オブリージュ、真のエリートは国のために仕事をする。自分も組織人として竜崎のように生きたいと思った。面白かった。

◆果断―隠蔽捜査〈2〉(今野敏)(新潮文庫)
ということで、早速続編も読んでみました。
PTAとの会合で竜崎が話した正論、痛快です。合理的で主義主張は妥協しない。
でも、「風の谷ナウシカ」を見て心を動かされる感受性も、部下に対する先入観も修正できる柔軟性も持っている。
やはり竜崎は自分の理想です。
彼の有能振りがいかんなく発揮される本作品、また続編も読んでしまいそう。

■ジェノサイド 上 ・下(高野和明)(角川文庫)
面白かった―、さすがにミステリーの各賞を総なめにしただけのことはある。
ハイズマン・レポートも肺胞上皮細胞硬化症も作者の創作でしょうが、創作とは思えないリアリティがありますね。
単にスケールの大きなミステリーではない。研人と李さんの奮闘に、人類の未来を見る思いでした。この二人って、大久保で線路に落ちた人を助けようとして命を落とした二人に似てる?
自分は現生人類の未来というものを信じたいです。
それにしてもよくできた小説でした。時間を忘れて一気読みしてしまいました。
後半、多少荒唐無稽と思うところはありましたが、総合的に佳作と思います。

◆赤朽葉家の伝説(桜庭一樹) (創元推理文庫)
土俗的な風習を残す山陰の片田舎の旧家に生きる、女性三代のグラフティ。
ファンタジーあり、ホラーあり、ミステリーあり、痛快な青春活劇あり、文句なく楽しめました。
中でも赤朽葉毛鞠がいいですねー。
欲を言えば、1,2章の出来栄えに比べ、3章のミステリー部分が少し弱い感じがしました。

◆プリンセス・トヨトミ(万城目学)(文春文庫)
長い間積読本にしてたのですが、大阪都構想が住民投票で一敗地にまみれたのと、歴史秘話ヒストリアで「家康vs秀頼」が放映されたこのタイミングで読んでみました。
ストーリー自体は、昔出張のフライトで映画を見たので知ってたけど、なるほどこういうお話だったっけ。
面白い中に大阪の文化が漂う奇想天外な名作と思います。

◆グラスホッパー(伊坂幸太郎) (角川文庫)
痛快な娯楽大作、ですかね。
妻の復讐を目論む鈴木はまだまともだけど、鯨、蝉、他の人はかなり変な人ばかり。
スピード感あふれるストーリー展開で、互いの運命が絡み合っていきます。

◆廃墟に乞う(佐々木譲) (文春文庫)
PTSDで休職中の刑事が、民間の知人からの依頼で事件を追う短編連作、「オージー好みの村」「廃墟に乞う」「兄の想い」「消えた娘」「博労沢の殺人」「復帰する朝」の6編。
その結末、そのトリックが明確に説明されるわけではないので、事件の全貌は、読者が想像力を働かせるしかない。
佐々木譲さんは初読、直木賞受賞作ということで読んでみましたが、北海道という土地柄もあってか、全般的に地味な印象、異色の警察小説というところでしょうか。

歴史小説が4冊。

◆炎環(永井路子) (文春文庫)

1964年の直木賞受賞作。
「頼朝、頼家、実朝、源氏の直系は三代で途絶え、以後は頼朝の妻の実家の北条家が執権として鎌倉幕府の実権を握った」歴史の結末をいってしまえばそれだけの事だが、その背後に蠢く、血で血を洗う権謀と闘争、何とも武家は恐ろしい。
鎌倉幕府の黎明期を舞台に、全成禅師、梶原景時、北条保子、北条義時、頼朝でも、義経でも、北条政子でもない脇役を主役に書かれた短編四作。
歴史の陰に隠れた真実はミステリー小説のように面白い。

◆王朝序曲―誰か言う「千家花ならぬはなし」と 上・下(永井路子) (角川文庫)
孝謙女帝で天武系の血筋が絶え、時代は奈良から平安へ。主人公は藤原冬嗣、藤原不比等から数えるとひ孫ですね。
奈良時代もかなりドロドロしてたけど、桓武天皇の治世もかなりのものです。
藤原種継暗殺と早良廃太子、安殿皇太子との父子相克、天智・天武の時代から続いてきた天皇親政と、それに伴う、文字通り血で血を洗う権力闘争の歴史、そんな歴史が終焉を迎えたのが薬子の変。
そして時代は、誰が名付けたか平安京、平安な時代に入っていきます。ま、歴史小説のネタにはなりにくい時代になってしまうわけですが。
黒岩さん、永井さんと古代史の歴史小説を読み継いできました。楽しかったです。
永井さんの筆致は、司馬さんや黒岩さんに比べあっさりと、淡々としていて、テンポも速いので、読みやすい。

◆竜馬がゆく〈1〉(司馬遼太郎) (文春文庫)
再読。
坂本竜馬の名を世に知らしめた司馬遼太郎さんの代表作を、じっくり楽しみたいと思います。

その他の小説が4冊。

◆我が家の問題(奥田英朗)(集英社文庫)
「家日和」の続編ですね。「甘い生活?」「ハズバンド」「絵里のエイプリル」「夫とUFO」「里帰り」「妻とマラソン」の夫婦や家族にまつわる短編が6編。
どの話もほのぼのとして、ユーモアがあって面白かったけど、特に「夫とUFO」の美奈子さんが健気で良かった。

◆とける、とろける (唯川恵)(新潮文庫)
唯川恵さんのエロティック短編集。
「来訪者」「契り」「永遠の片割れ」「白い顔」「夜の舌先」はちょっとミステリー仕立てだけど、軽い感じ。「写真の夫」「スイッチ」は女性が書いたエロ話ですね。
「浅間情話」だけがやけによい話で印象に残りました。

◆きみはいい子 (中脇初枝)(ポプラ文庫)
初中脇さん、13年の本屋大賞で第四位になっていたので読んでみました。
児童虐待をテーマにした「サンタさんの来ない家」「べっぴんさん」「うそつき」「こんにちは さようなら」「うばすて」の短編連作。
同じ町に住むそれぞれの人が抱える子どもの時の記憶、それが大人になって負の連鎖を生み出す。
重苦しくも、少しだけ希望も感じられる作品です。

◆ポトスライムの舟 (津村記久子)(講談社文庫)
うーん、これが純文学、芥川賞受賞作というやつか。
個人的には苦手だけど、良い作品と思います。組織の中でうまく立ち回れずに挫折してしまった過去を持つ地味な女性ナガセ。
薄給で自分の時間を売る生活を続ける彼女が見つけた世界一周の夢。
彼女の回りで、少しずつ、世界が良い方向へ回り始める。ナガセを小さな声で応援したくなる一冊でした。

山本七平さんが1冊。

◆人望の研究 (NON SELECT)
本屋の店頭で題名を見て衝動買い、実は結構古い本だった。「無党派クラブ」とか「戸塚ヨットスクール」とか言われても、なんのことだったかいなという感じ。
でも 「掘り起し共鳴現象」って言いえて妙。
九徳、中庸、克己復礼、克伐怨欲、キーワードがたくさんあった。東洋哲学は深いなー。
徳育、その通りだと思います。近思録、大学、中庸、論語、折を見て勉強ししてみます。

ラノベが3冊。

◆下ネタという概念が存在しない退屈な世界(赤城大空) (ガガガ文庫)

7月よりアニメ化ということで読んでみたのだが。。。
「公序良俗健全化育成法」が施行されて10年という世の中、なにやら有川浩さんの「図書館戦争」のようなものを想像していたのだが、似て非なるものでした。
表現の自由とか抑圧からの解放とか、そんな感じをかすかに漂わせながらも、実に馬鹿馬鹿しいお話で、2巻はもういいかなー。
アニメは視聴すると思います。でも、アニメ化できるのかな、これ。

◆なれる!SE 2週間でわかる?SE入門(夏海公司)(電撃文庫)
◆なれる!SE (2) 基礎から学ぶ?運用構築
再読。4年くらい前に初読したときより、かなり専門用語が分かるようになってきた。 修羅場を乗り越える快感、分かるなー。
SE部とOS部の対立、バカみたいな話だけど、仕事を円滑に進めるために必要なことが書かれている。一次切り分けをOS部がやるかわりにエスカレーション対応は担当SEがやる、単純な解決策だけど、工兵くんの調整力、専門家の実力を使い切って成果を上げるためにはこういう役割をやる人が必要になる。
工兵くんのスーパー新人ぶりが早くも発揮されるわけですが、こういう環境にいたら、人間成長できるだろうなー。いたくないけど。
何度でも読みかえしたい、自分のバイブルです。


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