rock_et_nothing

アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

マーク・マンダース マーク・マンダースの不在

2021-06-19 22:48:52 | アート

4つの黄色い縦のコンポジション


椅子の上の乾いた像

どうしてもそこに行きたかった。
テレビでこの展覧会情報を見たとき、私の心に強く、しかも時間が経つほどに強くなるインパクトがあった。
ひび割れた粘土、木材、黒く重量感のある鉄の異なる質感の取り合わせが、大好きなのだ。
粘土によって形作られた人型が欠けて崩れるのは、古代文明の名残か、はたまた存在するものはいつかは消え往くという無常観を体現し、それが私の心に響いてくる。
木材は豊かな自然を、黒い鉄は宇宙の最終形態を連想させて、すべては流れ留まらない自然の摂理があるように思えた。
マーク・マンダースは、考え思いをめぐらせる余地をはらんだ装置を提示する。
マルセル・デュシャンの薫陶を受けているのだろうか?
彼のドローイングには、その影響があるように見えた。
ミケランジェロのように、素材の中に閉じ込められた声を聴くのだろうか?
ともかくも、彼が差し出したものによって、私の心に大きな波紋をもたらして、思索の運動を起こしたのは間違いない。


乾いた土の頭部


舞台のアンドロイド(88%に縮小)

生涯キュビスト、ファン・グリス

2021-05-04 22:35:01 | アート

アニス・デル・モノの壜


果物皿とチェックのテーブルクロス


ギターを持つハーレクイン

スペイン マドリード生まれのフアン・グリスは、ジョルジュ・ブラックやパブロ・ピカソと同時代にパリで活躍したキュビズムの画家。
コラージュの技法も取り入れた鮮やかな色を使うところが、他の二人との違いだろう。
ポップなところが、今の感覚にあっていて、部屋に飾りたくなる絵だ。
それは、かなり平面化されて軽く感じるところが、そう思わせるのだ。
ね、いいでしょう?

心の深いところへ誘うルドン

2021-04-20 22:48:19 | アート

allegory


mystery

何がとはっきり描いていない、匂わせるようなルドンの絵がいい。
今で言う「空気感」のようなもの。
だからこそ、心が入り込む余地がある。
瞑想絵画。
黄昏時か、それとも夜が白んできたころかのような藍の色合いに佇む人影。
僅かな天空の青を引き立たせるような大地を想起させる黄褐色が、人物を包み込もうとする。
どこか知っているような、それらの絵は、心の深層への案内人だ。
そうだ、どこかロスコの抽象絵画にも通じている。
ゆっくりと静かに、心の中に降下していこう。
もしかしてこの宇宙を貫く波長に触れられるかもしれないと、オカルティックな喜びを見出しそうだ。


小癪なピカソ

2021-03-13 12:14:30 | アート
オレンジ色のベレー帽の女 1937

何をもって小癪なのか?
幼少からのデッサン力の裏打ちでもってぐうの音も出ないほどに人々の認知を獲得し、その後好き放題に手当たり次第に食い散らかしたり、他人のアイディアを昇華させたりと、類を見ないほどの貪欲さにある。
それが小癪という表現に留まるわけは、完璧なオリジナルなど芸術にありえなく、つまりやった者勝ちという側面があるからだ。
どんなに着眼点がいいアイデアも、それだけではなさなく、表現して形を成してこそ芸術として成立する。
音楽もアレンジ如何で名曲としての煌きを放つのか、映画やドラマも脚本の出来次第で名作となるのか、それぞれどういう手法をどこまで極めるかに負うところが大きい。
ピカソのそれは、マルチプロデューサーに近いように思うのだ。
芸術家がその向かうところに一途でストイックでなければならないなどの幻想を、とうより持ち合わせていないが、圧倒的捕食者のようなその画業と、芸術の可能性を広げつつ芽を摘んでしまうことに、猛獣の中の小動物がちらちら見えるようで、釈然としない。
けれど、よく見ているとその巧さに感心してしまい、だから小癪に思うのだ。
ピカソが好きな画家ではないけれど、おおむね彼の絵からは負の印象を感じないところはいいようだ。
ほら、この絵の女性はいかにも幸せそうに微笑んでいる。


ミモザといえばボナール

2021-02-23 14:20:25 | アート

ミモザの見えるアトリエ


ミモザのブーケ

色彩豊かな色を描くボナールをボナールたらしめる色といえば、それは黄色だ。
制御の難しい、ちょっとだけでも飛びぬけてしまうこの黄色を、これほど画面に据えてしまうとは。
彼のミモザの絵を知ってから、なんとしてでもミモザの咲くころの南仏を訪れてみたいと思っている。
それが簡単に叶えられないことが大きく起因して、こうしてミモザを育てるのだ。
もっとミモザで埋め尽くしたい願望もあるが、それはもうちょっと先の話。
一昨年手に入れた4種類のミモザは、強風で揺さぶられすぎ根が傷んで2種類枯れてしまった。
残りのものが今年花を咲かせられるか気がかりだ。
ボナールの家の庭にも大きなミモザの木があったのだろう、まずは背景から攻めていきミモザの絵を描けるようにしようか。
子供のころに大好きだった黄色を、少しでも自分に近づけるために。


2021年2月23日のミモザ