rock_et_nothing

アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

締め括りのアート フランク・アウアーバッハ

2020-12-31 23:06:19 | アート

Frank Auerbach Sumally

今年もあと1時間、フランク・アウアーバッハに最後を飾ってもらおう。
彼は、1931年ドイツに生を受けてイギリスに帰化した現代画家。
しっかりとしたボリュームを保ちながら、形は溶解し空間と同化するかのようだ。
人間の個の存在の危うさ、肉体も魂も崩壊し塵となる脆さに抗いきれるのだろうかという問いかけを繰り返しているかのようだ。
このところ、人物を描いた絵が苦痛に感じるのだけれど、彼の絵は私を追い詰めない。
ミラン・クンデラの文学にも通じる諧調が、アウアーバッハにもあると、私には思えてならない。




瑞々しい色彩、踊る線 カンディンスキー

2020-11-13 23:29:15 | アート

即興 渓谷 1914

近頃、深刻な問題に気がついた。
人物が描かれている絵を、観たくないという現象だ。
原因は分かっている、人間と密接に関わりを持っているからだ。
人間を造形の対象としてすら捉えることに飽き飽きとしてしまっていることに、自分でも愕然としてしまった。
だから、色彩や線を純粋に楽しめる抽象画や、人物の描かれていない風景画などに心が惹かれる。
どうだろう、このカンディンスキーの絵は、鎮静効果のある寒色の青と、補色である輝かしい暖色の黄色、それらをつなぎ合わせる明度の低い黒や赤が組み込まれ、全体に動きと流れをもたらす生き生きとした線が巡らされている。
観ていると心が開放され、たとえばバッハのコンチェルトの調べに乗って舞い踊る感じになる。
そのためか、来年のカレンダーは、カンディンスキーに決めたのだった。
安直でも、毎日目にするところに美しいものがあるということは、ふっと我を振り返るにはいいアイテムなのだ。

Violin Concerto in D Minor, BWV 1052: Allegro


Bach - Harpsichord concerto in A major BWV 1055 - Corti | Netherlands Bach Society






青が恋しい ニコラ・ド・スタールのプロヴァンス風景

2020-07-25 16:17:49 | アート

Nicolas de Staël, Paysage de Provence, 1953,

今年の梅雨は、なかなか明けない。
生を受けてこの世界の仲間入りをしたとき、心地よく守られていた環境からの激変で暑いと感じたためなのか、夏が苦手な私でも、さすがに毎日雨と曇り続きで気持ちが鬱々としてしまう。
抜けるような青空が恋しい。
もちろん、今はとても便利な環境が整っていて、空調の効いた部屋で世界各地の景色や宇宙からの地球さえ見られてしまう。
それらの映像は、より美しく見えるように効果的処理がなされ、しかも雰囲気を醸成するようなBGMまで加えてある。
人の感性のフィルターを通して触れるそれらと、ド・スタールの絵のどこに差があるのかといわれれば、なんら代わりがないのかもしれない。
けれど、今、付加される音はいらない、場面の変化もいらない、ただ静かにあってほしい。
流れ去るものは欲しくない。
青の世界があればいい。
ときにはとまって、瞑想に耽るのも必要なのだと思う。
だから、この青に静かにダイブするのだ。





心惹かれる渓流 河合玉堂 春風春水

2020-07-01 23:50:32 | アート


渓流は、どうしてこうも心を惹くのだろうか。
近頃の楽しみとして、自然などの景色を映した動画を観ている。
山や夜の地球、鉄道風景、寺社仏閣、さまざまだけれど、日本でも世界でも、渓流には俄然ときめいてしまう。
岩肌と水の対比を取り持つように植物の有機的な要素が加わると、なんとも形容しがたい幸福感に包まれる。
だから、河合玉堂の描く「行く春」や「春風春水」などの絵は、私の渓流の好きな要素を余すところなく表現していて、もう脱帽してしまうのだ。
そんな私の渓流に対する愛を刺激する写真に出会った、それは、このgooブログを利用している方の撮った写真だ。
とにかく大好きで、時々そのブログを訪れては、見とれ堪能する。
「行く春」を想起させる構図も心憎い。
透明感のある寒色を基調としたところが、初夏の雰囲気と水の清冽さを伝えていて、心が洗われる気がしている。
ならば、許可を取ってリンクを張るところなのだが、なにぶん腰が重く恥ずかしがり屋なので、その一歩が踏み出せない。
すばらしいものは広めたいし、分かち合うものだと思っているので、このヘタレが動くのを気長にお待ちいただきたい。
たぶん、きっと・・・

アルプスの山が美しい ジョヴァンニ・セガンティーニ

2020-06-13 23:08:37 | アート




自然




最近、登山に関係した動画をyoutubeで観ていることが多い。
その中で、特に心震えるのは、山の頂と空の場面だ。
それは峻険な岩の稜線や雪を頂く峰峰に、清冽な青空も沸き出でる雲波も、はたまた数多の星を携えた天の川やインディゴブルーの只中に煌々と輝く月が君臨する夜空などは、一瞬にして私を忘我の境地に引き込んでしまう。
セガンティーニも、そのくらい山に魅了されていたのだ。
彼のこのアルプス三部作には、如実に表現されているではないか。
山の圧倒的な存在感、自然に対する畏怖が、大いなるものへの畏敬の念をかきたて、人間の脆弱さを受け入れさせる。
自分もこの目でこのような山の姿を見たいけれど、とてもかなわない夢だろう。
だから、間接的にでもそれを体験させてくれる手段のある今をありがたく享受しようではないか。