rock_et_nothing

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セルジュ・ポリアコフ、リリシズムの抽象

2011-02-08 16:55:44 | アート
いまから25年位前になるだろうか、池袋のセゾン美術館で開催された「セルジュ・ポリアコフ展」に行ったのは。
抽象絵画が好きで観に行ったわけでなく、美術書を買いにアール・ヴィヴァンへ行ったついでだったと思う。
平日だから、来場者も多くなくゆっくり観られそうだった。
何の気なしに入場チケットを買って、会場に足を踏み入れた。
目の前の作品は大きく、色面で分割された画面構成で、暖色・寒色・暖色と寒色・グレートーンと、使われている色は多様だ。
ポリアコフの作品は、大きな声を上げることなく静かに堂々と、しかも色と色、形と形、色と形が一定の諧調で詩を紡いでいた。
じわじわとその衝撃が心を揺さぶり、作品の前から足が動けなくなった。
抽象絵画が自分に語りかけてくるなんて、夢にも思わなかったから、予期せぬ事態に心底驚いたのだ。
大概の展覧会カタログを買って備忘録にするのだが、このときはカタログの出来具合に納得いかず、ポストカードも大切な色が違った印象に仕上がっていたのでこれも手に入れなかった。
眼と心に焼き付けたポリアコフを大切に、この時は終わった。

それでも、しばらくしてからどうしても画集を欲しくなり、ポリアコフの第二の故郷フランス・パリにいたときに、彼の画集を探して念願がかなった。
今も大切に見ている。
本当に、美しい絵なのだ。
綿密に色と形の調和を図りながら配置し、色と形たちが語り合えるよう気を配っている。
こんなに理知的でかつ叙情的な絵画は、そうそうないだろう。

何度目かのパリ訪問で、ルーブルのカルコグラフィー(ルーブル監修のもと、オリジナルの版で復刻した版画)にポリアコフの作品があることを知った。
しかし、全ての作品が印刷されてストックしてあるわけでなく、この時は、ジョルジョ・ブラックの版画が気に入ったが、またの機会にと諦めた。
いつかきっと、ポリアコフの作品を、もちろんカルコグラフィーかポスターだが、飾れる日が来るだろう。

ポリアコフの作品は、抽象絵画の敷居の高さを感じさせない親密さがある。
きっと、画面から流れてくる詩が、視覚を伝わって心に響くからだろうと思うのだ。