rock_et_nothing

アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

円環する時、ジョルジョ・モランディ

2018-01-15 22:23:55 | アート


時が停まってしまえばいい・・・喜びも苦痛もなく、茫漠とした世界が待ち受けていたとしても、そう思うことがある。
それがどのようなものか希望をつけられるなら、このモランディの絵画のような世界がいい。
全体を満たす光が、影の中にも感じられる、空気の揺らぎすらないところだ。
ボルヘスの「不死の人」を読んでいるときに、モランディの絵が舞台装置として私の脳内に設置されるのは、あながち不思議でもないのはこのためか。
美とは、破壊と創造の両極を併せ持ち、その間を揺らめくものだ。
この揺らめきは、甘美で心を酔わせ高揚させるけれども、いつも無限の奈落が足元に待ち構え、人を絶望させる力を孕む。
モランディは、一人きりで絵を描き続けた孤独な修道僧。
その心中は、決して静寂さに満たされてはいなかったのではないだろうか。
法悦と絶望が、この絵から漏れ出てくると思うのは、穿ちすぎなどではないと思うのである。