大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・妹が憎たらしいのには訳がある・67『C国多摩事変・2』

2018-11-01 07:04:15 | ボクの妹

妹が憎たらしいのには訳がある・67
『C国多摩事変・2』 
     


 300機のチンタオは二世代前のロボットであるために今のC国のコードも通用しない。

 私たちから連絡を受けたC国大使館は、すぐにチンタオたちに「行動中止」のコマンドを二世代前の様式で送ったが、彼らは通常のコマンドコードを受け付けず、C国大使館そのものを敵と見なし、攻撃を加えてきた。C国大使館は、自動でバリアーを張って無事だったが、周りの建物に被害が及んだ。Rヒルズの南側の窓ガラスは全部割れてしまった。
 国防省の対応も早く、阿佐ヶ谷駐屯地は、ミサイル発射の熱源に向けて反撃の地対地ミサイルを撃ち込んだが、ステルス化したチンタオたちはすでに移動したあとだった。

 ユースケは、首都防衛の精鋭ロボット部隊ロボコンを送った。彼らは国内最精鋭部隊で100機のロボコンで構成され、司令機の一機を上空で待機させ、3機編成の33の小隊に、それぞれ指令を送った。

 ロボコン部隊は、チンタオの初期ステルスを易々と見抜き、あっと言う間に半数を多摩地区で撃破した。それから残ったチンタオ達は、カメレオンのようにステルスのモードを変換し、都心部へと近づいてきた。
 都心は、100機以上のチンタオの攻撃を受け、あちこちで大惨事が起こった。ミサイル発射直後の熱源を衛星で探知し、その後20分でさらに50機のチンタオを撃破、擱座させた。
 チンタオは旧式ではあるが、偽装については能力が高く、都心に入ってきたものは、熱源を市販の自動車と変わらないものにし、トンネル内で、荒川で見かけたバンに擬態化し、都心の中枢に向かっていった。
 ロボコン部隊は、強力なセンサーで擬態するチンタオの速度に、次第に追いつき、1機、また1機と撃破していく。

 わたしと優子は、ロボコンを除けば、数少ないチンタオのステルスが見破れる個体なので、彼らが目標としている新宿の国防省に向かった。新宿では、まだ市民に情報が行き渡っておらず。あちこちで交通事故や、混乱が起こっている。
「あのバン、チンタオよ!」
「任せて!」
 わたしは腕のグレネードを発射した。徹甲弾モードにしたグレネードは、チンタオの内部に入って爆発するので、そんなに破片は飛び散らない。しかし程度問題で、数千個の大小の部品が凶器になって、あたりに飛び散る。わたしたちは、一度に一万個の目標を追尾する能力がある。飛び散った破片がどのような軌道を描くのか瞬時に計算し、危険の高い破片から対応する。ごく小さなものは目に仕込まれたレーザーで焼き切る。それ以上のもので脅威にならないものは放置する。

――三時の方向、破片オッサンに!――

 真由の指示でジャンプ。オタオタしているオッサンにしがみつく。若い女にしがみつかれたと思ったオッサンは一瞬ニタリ。直後背中に衝撃、チタン合金の肋骨の下の柔らかい生体組織に突き刺さる。
「おじさん、早く逃げてね。都庁の方角が安全」
 そうアドバイスしながら、背中の破片を抜く。血が噴き出し、オッサンの顔にかかった。
「ごめん……」
 腰を抜かしたオッサンを尻目に、国防省へ急ぐ。真由も女の子を庇い、首に破片が貫いている。両手両足のグレネードを使ったので、関節の生体組織が破れ、わたしたちは血みどろになった。
 国防省の構内に入ると、弾薬庫を目指した。もう手持ちのグレネードが切れてしまっている。
「甲殻機動隊。少し弾薬を分けて」
 相手はロボット兵だったので、0・1秒でIDを認識して弾薬庫に入れてくれた。
 両手足にグレネードを装填し終えた時に衝撃がやってきた。
「バリアーが破られた!」
 外に出てみると、国防省の東側のバリアーが破られていた。周囲の破片から三機のチンタオが同時に突っこんできたことが分かった。もう一機は、わずかに間に合わなかったのだろう、植え込みのところでデングリカエって黒煙を上げていた。バリアーはすぐに回復を現す薄いグリーンになっている。
「お前達も大変だったな」
 ユースケが声をかけてきた。
「CICにいなくていいの?」
「ああ、やつらの目標はCICのコマンダーのオレだ。いっそ外に出た方が始末が早い」
「最後の1機が突っこんでくる!」
「司令機よ!」
 わたしと優子とユースケは、瞬時に同じコマンドコードになり、二百キロの速度で構内を走り回った。
 もう、グレネードを撃っている暇もない。
 直前で司令機は三つに分離し、三人それぞれに向かう姿勢を示したが、これはブラフであった。ユースケのコマンドコードを正確に読み取った司令機は、ユースケに集中した。
 優子は、その前に身を投げ出した。

 強烈な炸裂音がして、司令機も優子もユースケも吹き飛んでしまった。

 優子は、正面で、まともに受け止めたので、胴体のところで千切れてしまった。生体組織がぶちまけられ凄惨な姿ではあるが、頭部は無事だったので元気ではある。
「優子、世話かけちまったな」
 片腕を失ったユースケが優子の顔を覗き込む。
「ハナちゃんが、今来るわ」
 そう言うと、二人とも安心したようだ。
「優子、おまえがサッチャンだってことは分かっているけど、そっちの勝負は当分お預けな。フェアにいきたいからな」

『いやあ、神楽坂も、マンションは爆破されるわ、新宿の方から人たちが逃げてくるわで大変でした』
「遅れた言い訳?」
「いいじゃん、ハナちゃんも大変だったみたいだから」
 同期した優子とハナちゃんは、情報を共有したようだ。
「木下クンは……」
『……なんとか、人間の形にして、あとのお世話はお願いしてきました』
「ありがとう……わたしたちもメンテナンス大変なんだろうな」
「もし、わたしのCPの中に優奈が生きてるって分かったら……ユースケ、どうしただろうね」
「さあ……」

 ハナちゃんは、わたしたちを乗せて、一路大阪を目指した……。



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高校ライトノベル・トモコパラドクス・44『東京異常気象・2』

2018-11-01 06:52:08 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・44 
『東京異常気象・2』 
       

 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になったん…未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……。

 二谷幸喜の『おれのナポレオン』をやっていたのが不幸のもとだった。

 全ての芸術が、そうであるが、演劇もインプットとアウトプットが必要であった。
 ようするに、たまには人の芝居も観て、肥やしにしなければならないということで、演劇部三人娘の友子・紀香・妙子の三人は、理事長先生からもらったチケットで『おれのナポレオン』を、観ての帰りであった。

 帰りの地下鉄は一時的に混んだ。むろん芝居の観客はしれたものだったが、その二つ向こうの東京ドームでは、これから始まるAKRのライブがあり、そこに向かう観客で一杯だった。

 地下鉄に乗ったとたん、妙子は、要領の良い友子や紀香とはぐれてしまい、車両の端のシルバーシートのところまで、押しやられてしまった。
 妙子は、情けない顔をしていたが、車両中央で妙子のポニーテールの頂が見える友子と紀香は、半分意地悪な気持ちで安心していた。
 なんといっても同じ車両だ、それに妙子の周りは女の子ばかりで、痴漢の心配もなさそう……が、次の駅で若い男が、緊張した顔で、乗り込んできて妙子の左斜め後ろに立った。妙子は痴漢ではないかと気になったが、友子がサーチしたところ痴漢の気配はなかった。それどころか、ガラに似合わず頭の中はAKRのヒット曲がヘビーローテーションしている。

――なんだ、ちょっとイカツイけど、ただのファンじゃないの――
――しばらく妙子にはスリル味わってもらおうか――

 友子と妙子は気楽に構えた。

 三つ目の駅に着いたとき、事件が起こった。
「け、警察呼んで下さい!」
 妙子が震える声で叫んだ。震えていても、演劇部なんで声は良く通る。
 若い男は、ビックリして車両を飛び出した。妙子は男のシャツを掴んでいる。妙子はそのまま車両のドアから出てしまう。友子と紀香は瞬時に状況を把握して、行動を起こした。
「動かないで!」
 友子は口を動かさないで、男に威圧と共に注意した。
「「だめじゃない、妙子、谷口さんを痴漢と間違えちゃ」」
「え……?」
 二人の口から、同じ驚きの声があがった。かわいそうだが、妙子の意思を友子は支配した。
「なんだ、痴漢じゃなかったんですか」
 駆けつけた駅員も、ホッとしていた。
「すみません、知り合いのお兄さんなんです」
「谷口さんだとは思わなかった、どうもご迷惑かけました」
 男は、訳が分からなかったが、ひとまず安心した。
「まあ、スタバでゆっくり話でもしましょうか。谷口三等海佐」
 谷口三等海佐は、ギクリとしたが、友子がかわいく掴んだ左の人差し指が万力で挟まれたようにビクともしなかった。

 直ぐ後に来た地下鉄に妙子を乗せ、友子と、谷口三等海佐はスタバに向かった。

「考えたわね、AKRの『秋色ララバイ』がアイポッドから聞こえたら女にUSBを渡すことになっていたのね」
「な、なんの話だい」
 谷口は開き直った。友子はテーブルの下で、谷口の足を500キロの力で踏みつけた。
「い……!」
「これでしょ、あなたが女に渡したの」
 友子は、スマホの画面を見せた。USBの外観が現れたあと、その中身がサーっと画面を流れていった。
「建造中の『あかぎ』のスペックと、イージス艦の展開予定が全部入っている。ひっかかったのよねハニートラップに。日本人として近づいてきたけどC国のスパイだった。気づいたのは体の関係ができてからね。仁科亜紀って日本名しか知らないようだけど、あいつは宋美麗ってコードネームの駆けだしスパイ」
「宋美麗……一線級じゃないか!?」
「日本の諜報って、この程度なのね、オニイサン」
「キミは、いったい何者だ……?」
「ヤダー、へんな目で見ないでよ、ただの軍事オタク少女。たまたまヒットしただけ」

 そのころ、紀香は、宋美麗のあとを着けていた……。

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