大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・トモコパラドクス・71『ミズホクライシス・終焉』

2018-11-28 06:26:08 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・71 
『ミズホクライシス・終焉』
         


 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になった未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……そのマッタリ生活が破綻。第五世代の義体の攻撃を受けた。


 荒川を吹く風は、もう秋を感じさせる……。

 ハナは、生まれて初めての秋風の中を走り回っては、鼻をひくひくさせている。ポチは完全な保護者のつもりで、ハナの側を離れず、二匹で河川敷を走り回っている。

 渋谷の大惨事のあと、丸一日は平穏だった。しかし、学校にいても街を歩いていても気が休まらない。敵は友子の意思にかかわらずワープさせることが出来る。一昨日は乃木坂に着いたつもりが、渋谷だった。また第五世代の義体は、攻撃してこない限り人間と区別がつかない。さすがにバテて、今日は学校の帰りに現れたカフェ『乃木坂』に入って、息をついた。
 滝川は、最初居なかったが、足許にポチの気配を感じると、目の前のシートに座っていた。

 思わず安堵の笑みがこぼれ、気がつくと、この荒川の土手に座っていた。子犬のハナも現れて、こうして、ポチと遊んでいる。

「当分は安心していいよ……」
「大丈夫なんですか……?」
「ああ、敵もかなりの無理をしている。一般の人たちを巻き込めば、トモちゃんを仕留められると踏んだ。それでハンパな改造も含めて、第五世代の義体を五体も送り込んで失敗した。当分はやってこない」
「でも、敵は、まだいるんでしょ?」
「第五世代の義体は、作るのに時間と金がかかる。あいつらはプロトタイプだ、改良も考えると、相当かかると踏んでいい」
「でも、好きな時代にリープできるんでしょ。だったら、いつでも来られるんじゃ……」
「タイムリープには、条件がいる。太陽と地球と月の位置が揃わないとできないんだ。経験から得た予測だけどね」
「そうなんだ」
「それに、トモちゃんには第五世代を感じる感覚が育ってきていると思う」
「え……」
「あの、ポチを、よく見てごらん」
「……あ、犬の義体だ!」
「そう、第五世代の実験用に作られた犬なんだ。最初は敵だったけど、オレに懐いてしまった」

 幼稚園ぐらいの女の子と男の子が、二匹の犬を見つけて歓声をあげた。ポチも、ハナも子供たちが大好きで、二匹と二人は、河川敷を走り回っていた。子供たちは犬を掴まえようと必死。ハナは、二三分で女の子に掴まえられ、喜んでいる。ポチが吠える。相手にして欲しいのだ。
 ハナも気まぐれで、すぐに女の子の手から逃げると、ポチを追いかけ始めた。
 二人と一匹に追いかけ回され、ポチはご機嫌。傍らで見ているお母さんたちも安心な犬だとわかったのだろう、子供たちと同じように笑っている。
 ポチは、巧みに身をかわし、なかなか掴まえさせない。

 一瞬だった。

 男の子が飛び込むようにしてポチを掴まえようとし、ポチは、たちまち身を回転させた。すると風が起こって、男の子は吹き飛ばされ、数メートル先の川に落ちてしまった。
「あ、あいつ、昔のクセ出しやがった!」
 滝川は、土手を駆け下り、川に向かおうとした。
 ポチは、一瞬で状況を把握し、川に飛び込み、ほんの数秒で、男の子を助け上げた。
 男の子は、水浸しになったが、泣きもせずにポチをもみくちゃにしていた。お母さんが、男の子を裸にして、タオルで拭いている間、ポチは申し訳なさそうに頭を下げてあやまっていた。
「一応、飼い主も謝っとくか。あ、その前に」
 滝川は、バッグの中から紙飛行機を取りだし、こう言った。
「飛ばすから、ずっと見てて、落ちたところが分かるように。えい!」
 紙飛行機は、スッと空に飛んでいった。そして肉眼では見えない視界没になった。友子の目は自動追尾が出来る……一瞬紙飛行機が消えた。

「え……」

 声が出ると、そこは友子の家の前だった。カバンは足許に。紙飛行機は、ハナがくわえて尻尾を振っていた。

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