トモコパラドクス・63
『友子の倍返し!・2』
三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になった未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……いよいよ夏休みも終り、いよいよ始業式……弟であり、父である一郎の尻ぬぐいをする友子であった。
彼女は、C国のカレとイチャイチャしていた。太田は、ただ泣きの涙であった……。
「泣いておしまいなの?」
友子は、太田の不甲斐なさに、ただただ呆れなおすばかりであった。
「こんなのもあるのよ」
イチャイチャが、次のステップに進んだ映像も無修正で見せてやった。太田は、ただ悲しそうに、涙と鼻血を流すばかりであった。
「この子はS市の党幹部の娘でね、オヤジが作った会社のCEOに収まろうって思って、今度のことを計画したのよ。彼女がフィクサーであり、実行犯のボスよ。で、相手の男はね……」
映像から、男の顔のモザイクを外した。
「あ、こいつは……!?」
今度は一郎が熱くなった。男は新製品の情報を盗み、会社から10億の金をC国の子会社に融資させ、焦げ付かせた張本人である。
「分かった、二人とも。こういう仕掛けなのよ、情けないなあ、落ち込むしか手がないの? いい歳したオッサンがさ!」
「だって、姉ちゃん……」
「姉ちゃん?」
太田がビックリした。
「バカだな一郎。理性ってものがないのよ。太田さん、悪いけど、しばらく眠ってもらうわね」
「起きたら記憶はないんだろうね……」
「当たり前でしょ。一郎の会社のためなんだから、今回は特別。ほっといたら、一郎は首だろうし、会社だって損失が大きすぎて、人員整理しなくちゃならなくる」
友子は、口にケーブルをくわえると、パソコンに繋いだ。
「なに、やってんの?」
「盗まれたUSBを繋いだら、内容が書き換わるようにしてんの。五十年前のC国製のルージュになるわ。これでよし!」
「十億の融資は、姉ちゃん?」
「明日、証券市場が開いてからね。十億は、証券のカタチになってるのよね、なんとかしとくから、太田さんお願いね。じゃ、あたしクラブの日曜稽古だから」
「ハハ、そりゃ、朝から面白そうだったじゃん」
紀香が、面白そうに言った。
「でも、流行りの倍返しにしたいわね」
「それなら、こんなアイデアがあるよ」
妙子が、一生懸命に稽古しているのに見事に付き合いながら、それだけの情報交換を、二人はやった。
「……て、わけよ」
「ナルホドね!」
さすがに、稽古が止まってしまった?
「なにが、ナルホド?」
「ああ、妙子の演技よ。イイ線いってたよ」
「え、ああ、そう?」
嬉しそうにはにかむ妙子。実際、妙子の芝居は良くなっていたので、あながちウソではない。
敵もなかなかのもので、昨日の月曜で、証券取引を操作して、証券価格を一気に20%も引き上げた。あらかじめ紀香に言われて織り込み済みの事態だったので、昨日は静観。
そして、膨らみきった証券に、アメリカの不良な債権を山ほど付けて証券市場に流した。敵が持ち出した証券は、あっと言う間に、二十億の不良債権を含んでしまい。五分で一億ずつ負債がふくらんでいった。気づいたC国の会社は、すぐに手を打とうとしたが、手続き上子会社化してあり、破綻したことにしてあるので、親会社が処理に乗り出せたころには、親会社の総資産額を超えてしまい、昼には親会社自身が破綻した。
「姉ちゃん、会社の証券が、今日一日で倍の金額になったよ!」
家に帰ると、一郎が喜びの余り、友子にハグしてきた。この様子を、隣の中野は羨ましそうに見ていた……。
「で、それをさっさと売って十億もうけたんでしょ。感謝しなさいよ、お姉ちゃんに」
喜ぶ弟を、半分情けなく思いながらも、笑顔だけは、向けてやって、自分の部屋に向かった。
友子は悔しかった。今日も天気予報を外してしまい、倍返しの200円を取られたのであった……。