大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・264『クマの姿をした魔物がほくそ笑む』

2022-03-21 13:15:15 | 小説

魔法少女マヂカ・264

『クマの姿をした魔物がほくそ笑む語り手:マヂカ  

 

 

 バサリ バサリ

 

 黒犬が尻尾を振った。

 なんだか、闇の神主が幣(ぬさ)を振るうよう様に似ていて、暗黒の力が増幅されるような気配がする。

「うわあ、なに、これえ(;'∀')……」

 ノンコが気づいて、霧子もJS西郷もあたりを見回す。

 被服廠跡の縁に沿って、黒い影が次々に現れる。

「……十三人居る」

 素早く人数を数えると、足もとの瓦礫から鉄骨を拾って構える霧子。

 ブン!

「霧子、すごいやんか!?」

「負けられないと思ったら、力が湧いてきたわ」

 ちょっとおかしい、鉄骨は、どう見ても百キロ以上はあろうかと思われるH鋼だぞ。

「そうだ、いいぞ、忌地の力が霧子に収れんされてきたんだ。まだまだ強くなるぞ……」

 クマの姿をした魔物がほくそ笑む。

「霧子、その鉄骨を離せ!」

「こいつら、片づけてやる!」

「よせ!」

「クマの姿を盗んだお前! お前から退治してやる!」

 ブンブン!

 孫悟空の如意棒のように鉄骨が振るわれると、十三人の影たちはフルフルと戦ぎ、クマに向けられた力はほとんど消えている。

「影たちが衝撃を吸収してる!」

「アハハハハ」

「ワンワン!」

 クマの影と黒犬が嘲弄するように、霧子に近寄っては離れていく。

「そこを動くな!」

 ブン! ブン!

「アハハハハ」

「くそ、今のは届いたはずなのに!」

「霧子!」

「霧子さん!」

 ノンコとJS西郷がハラハラしながら霧子に声を掛ける。

 影たちは、霧子が鉄骨を振るう度に柳のようにそよぐのだが、そのたびに闇が深まるような、影が強くなるような気がする。

「トリャーーーーーー!」

 ブン! ブブン! ブブブン!

 連続の打撃も届かない。

「霧子、よせ! そいつら、霧子が攻撃するたびに強くなってる! 霧子の力を吸い取っているんだ!」

「え?」

 タタラを踏んで、攻撃の手を緩めた霧子の前にクマの姿の怪人が降りてくる。

「そうだよ、このステッキも影たちも霧子の憎しみを糧にして力を付けていくのさ……この影たちは、長門の救護隊たちが救った者たち。そう、全て、お前たちが良かれと思ってやったことの力が形になり大きくなっていった者たちなのだよ」

「そ、そんな」

「今日は、もう十分にお前たちの力をいただいた。それでは、この次は虎ノ門で……ん、なんだ!?」

 怪人が気配を感じるのと、そいつが現れるのは同時だった。

「させるかああああああ!」

 そいつは、今の今まで怪人が立っていた地面から跳び出てくると、日暮里高校の制服で見慣れない刀を振りかぶった。

 辛くも一撃は躱した怪人だが、そいつの素早い第二撃は躱せなかった。

 ドシュ!

 浅手ではあるけど、怪人の肩口からは数千のポリゴンじみたカケラが舞い散った。

「お前たち、わたしを護れ!」

 サワサワサワ……

「邪魔だ!」

 スパスパスパスパスパスパパパパパパパパパパパ!

 横ざまに構えた太刀で影たちを薙いでいく。

 太刀が触れる度に影たちは両断され、ポリゴンめいた欠片をほとばせるが、直ぐに形を取り戻して、怪人の周囲を固める。

「ああ、せっかく貯めた力が……もういい、ここまでだ。お前たち、戻るぞ!」

「待てええええ!」

 ズバ!

 敵わぬまでも振り下ろした一撃が、最後に怪人を庇った影を両断した。

 その影は、前の十倍ほどの欠片を煌めかせると、元に戻ることも無く消えて行ってしまった。

 怪人も黒犬も、残り十二体の影も、その隙に消えて行ってしまっていた。

 

 ハーハーハー……

 

 刀を握ったまま膝を落としたそいつは、激しく肩を上下させて、しばらくは声も出せない様子だ。

「おまえ、詰子……」

「「「ツンコ!?」」」

「真智香のお知り合い?」

「ああ……妹……だ」

「「「妹!?」」」

 

 わたしも、よく分からない、令和の日暮里にいるはずの詰子が、なぜ大正十二年に……

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査

  

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せやさかい・286『ガッシャーン!』

2022-03-21 10:13:29 | ノベル

・286

『ガッシャーン!』   

 

 

 春眠暁を覚えず…………ネボスケの言い訳。

 

 こないだまでの冬の名残はどこへやら、おとついからは、ほんまに春めいて来て起きるのが遅なってきた。

 薄目を開けると、隣のベッドで留美ちゃんもまだ寝てる。

 お互いさまですなあ、御同輩……

 そう思て、お布団を被りなおす幸せ……。

 

 ガッシャーン!

 

 突然の音に、うちも留美ちゃんも飛び起きる!

「本堂の方だわ!」

 留美ちゃんは、すぐにスイッチが切り替わって、半纏を羽織って本堂へダッシュ。

 うちも、ワンテンポ遅れて本堂へ向かう。

 

 うちらの部屋は、母屋である庫裏と本堂の間の中二階みたいなとこにあるから、本堂の音やら気配はけっこう聞こえる。

 本堂の外陣に出ると、テイ兄ちゃんが東京タワーに押しつぶされたモスラみたいになっとる。

「大丈夫ですか!?」

「朝から、騒々しいなあ」

 留美ちゃんと二人、気遣いの違いあり過ぎの言葉をかける。

「えーと……えーと……」

 気遣いの言葉を掛けたものの、テイ兄ちゃんの上に覆いかぶさってる東京タワー的な残骸は、どこから手ぇつけてええか分からへん。

「すまん、まずは、電源抜いて、ケーブルやらコードをどけてくれるか」

「はい!」

「難儀やなあ」

 とにかく、ケーブルを抜いてまとめる。

 まとめながら、この残骸はなんやったんかいなあと考える。

「ここのところ使ってなかったですもんね」

「うん、やっぱり、多少のリスクはあっても、ヂカにお参りしてほしいう檀家さん多かったさかいなあ……」

 ケーブルを始末していくと、ノソノソ自分で這い出して来るテイ兄ちゃん。

 アホなうちでも、ようやっと思い出す。

 この残骸は、デジタル檀家周りのシステムや。

 

 無駄にスキルのあるテイ兄ちゃんは、知り合いのあちこちから譲ってもらった機器で本堂の隅に設備を構築した。

 檀家さんの家には、これまた中古のパソコンやらモニターを置いてバーチャル月参りをやってた。

 頼子さんとこからも3Dホログラムのセットとかが届いて、うちらもバーチャルお茶会とかやってた。

「蔓延防止も、今日で解除やしなあ、潮時や思たんや」

「そうだ、そうですよね!」

「さっさと片づけてお茶にしよか!」

「まずは顔洗て朝ごはんやろ」

「もう、騒々しい音させて起こしてくれたんは、どなたさんですか?」

 あらかた片付いたところで詩(ことは)ちゃんがおっぱん(仏さんのごはん)を供えにやってくる。

「もう、朝からなにやってんのぉ?」

 やっぱり、この騒動は庫裏の方には聞こえてなかったみたい。

「ねえ、朝ごはん食べたら、あたしたちも片づけしようか?」

「ああ、それいいかも。わたしもやろうかなあ」

 ということで、朝ごはんの後は、女三人でそれぞれの部屋の片づけをすることになる。

 

 部屋に戻って見ると、留美ちゃんの机の上には参考書やお勉強道具、読みかけやら、これから読む本が積んである。

 うちの机は、ツケッパのパソコンとポテチの袋……やっぱり、心がけが違う。

 パリポリ

 袋に残ってたポテチの残りを食べて、袋を丸めて、ポイ。

 カサ、カサカサ……コロン

 うまいこと入らんと口を開きながら袋は転がってしまう。

「あ、いま掃除機かけたとこなのにぃ(;'∀')」

 留美ちゃんに怒られる。

 まあええわ。留美ちゃんも、うちには遠慮せんようになったいうことやさかい。

 で、片づけたら、留美ちゃんは堺市指定のゴミ袋にほどよく一杯。

 うちは、ローソンのレジ袋に一杯。

 うう……断捨離の精神は、留美ちゃんの方が上手(うわて)です。

 

 でもね「中学の制服はしばらく置いとこうや」と提案した、うちの気持ちは正解やったと思うんです。

 人生十五年のうちの三年間、今月いっぱいぐらいは偲んでみてもええと思うんです。

 

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明神男坂のぼりたい・106〔バンジージャンプ〕

2022-03-21 06:54:33 | 小説6

106〔バンジージャンプ〕 

  


 AKR47の母体はユニオシ興行。

 日本で一番人使いが荒い。

 当たるとなると、半日の休みもくれない。これでは、先日の仲間美紀みたいな子も出てくる(リスカだったけど、命に別状は無し。だけど、休んでる間に、ゴーストライター付きで手記を書かされている。ほんとに無駄のない会社)

 あたたちは、まだまだ売り出し中なので、オファーのあった仕事はなんでもやる……やらされる……やらせていただく。

 今日は、わざわざ新幹線とバスを乗り継いで、バンジージャンプのメッカ愛知鷹尾ハイランドにまできている。

 あたしたちはAKBみたいに自分の番組持てるところまでいってないので、ヒルバラ(お昼のバラエティー)に10分のコーナーをもらってて、メンバーが、とっかえひっかえ、いろんなことをやらされる。

 

 水を張った洗面器に顔を突っ込んでどこまで耐えられるか競走 

 渋谷の交差点で交通量調査の要領でイケメン通過調査競走

 浅草で人形焼きの早食い競争

 東京タワーの階段早登り競争

 逆立ち10メートル競走

 温水プールバタ足50メートル競争

 とげぬき地蔵でくぎ抜き競争

 

 で、10回目記念に、六期生対抗バンジージャンプというのをやらされた。

 いえ、やらせていただきました(-_-;)。

 

「ええー、どうしても明日香がやりたいというので(だれも言ってません!)この愛知鷹尾ハイランドのバンジージャンプにやってきました。ここはジャンプしながら願い事を叫ぶと叶うそうです。デビューからたった2カ月、どんな願いがあるのでしょうか(決まってるじゃん、ゆっくり寝かせて!)でも、ここの願い事は、ジャンプするまでは口にできません。しゃべってしまうと効果が無いそうです。で、明日香にはカメラ付きの……」

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 ヘルメットを被せられた。

 顔の前には自撮り、メットの上には、あたしの視線とシンクロさせたチビカメラが付いている。

 ホントはメンバー二人が飛ぶはずで、ジャンケンに負けたカヨちゃんも飛ぶはずだったんだけど、リハでちびってしまうぐらいの緊張の末に過呼吸になって、急きょチームリーダーのあたしが二人分の内容=おもろさを出して飛ぶことになった。


「なんで、明日香が選ばれたか分かる?」

 MCのタムリが聞いてくる(なぜか大阪弁のテロップ『おまえやんけ、やれ言うたん!』)

「え、あ、センターだから?」

「いや、明日香だけが、自分の部屋3階にあるから」

「ええ、マンションの五階とかに住んでるのもいますよ」

「戸建てで、三階は明日香一人だから。で、準備は万端?」

「うん、トイレも二回もいってきたし……たぶん大丈夫」

「よし、絶対成功する御呪いしてあげる……」

 そう言って、タムリはあたしのすぐ横に寄ってきた……と思たら、突き飛ばされた!

 

 ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

 

 そう叫んだとこまでは覚えてる。

 そのあと、あたしはモニターの中からも、みんなの視界からも一瞬で消えてしまった……

 

 

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