大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 65『検品長と装備変更』

2022-03-23 13:43:09 | ノベル2

ら 信長転生記

65『検品長と装備変更』信長  

 

 

 なんだこれは……

 

 妹の本営に移送する荷を検めて、曹素は苦虫を嚙み潰したような顔になった。

「こんな軍装を見るのは初めてです」

 検品長も目を剥いている。

「甲冑は胸甲だけだぞ、足軽の装備よりも貧弱ではないか……それに軍衣は筒袖だし軍袴も股引のように細いぞ。こんなもので戦えるのか?」

 三国志の軍装と言えば、ワンピースの表面に鉄片や皮革片を綴じつけた挂甲(けいこう)の類で、足軽程度のものでも簡単な草摺と袖(肩鎧)は付いている。

 それが、鉄地剥き出しの胸甲だけなのだ。

 下の軍装も、上着は筒袖、下は股引。

「これでは洛陽の紙くず拾いが腹を壊して腹巻をしたようではないか」

「昨日の事もございます、めったなことをおっしゃっては……」

「そうだな……で、そっちの装備は?」

「はい、ただいま……」

 検品長が顎をしゃくると、部下たちが長物の行李を解いた。

「鉄砲ばかりです」

「鉄砲だと?」

 ざっと行李を開けさせたところで、曹素は興味を失ってしまった。

 伝統的な装備を良しとする曹素は京劇の舞台衣装のようなものしか、軍装としては認められないのだ。

 まして個人装備の武器は槍や太刀でなければならない。鉄砲などは弾籠めが面倒なだけで、一撃食らわせた後では再装填に時間がかかり過ぎて、ものの役には立たないと思っている。

「検品長、豊盃への輸送はお前がやれ、俺は、風邪をひいて寝込んでいると言っておけ」

「は、はあ」

 検品長はじめ、豊盃への輸送のため早起きした兵たちは顔にこそ出さないが、落胆している。

 仰々しい隊列を組んで、都から運んできたものがこれかと思うと情けない。

 主の曹素は、単純だが気まぐれなところがあり、気に入らないと、重要な任務でも投げ出してしまうところがあるのだ。

 輸送任務ばかりで実戦部隊を任せられないのは、この気まぐれで飽き性な性格が原因だと思われている。

 主将・曹茶姫の兄でなければ、とっくに解任されているか、身に合わない実戦部隊を指揮して身を滅ぼしていたであろう。

「女漁りした奴らの気も分かるぜ」

「これ、余計なことを言うな」

 部下の愚痴を封じると、検品長は、さっさと荷を戻し、隊列を組むと豊盃に向かった。

 見送る兵たちの目には、少々バカにした光がある。実戦に参加することが無い輜重部隊の中にあって、検品のチェックに厳しく、横流しを許さない検品長は融通の利かない万年准尉として軽んじられてきているのだ。

 

「ご苦労であった検品長。しっかりした荷造りであったな。よければ、装備替えを見ていくといい。味方同士だ、互いの仕事ぶりを見ておくのも勉強になるであろう」

「はい、茶姫さま、見学させていただきます。それでは、古い装備を受領してから部隊に戻らせていただきます」

「よし、手間が省ける。なかなか手際が良いようだな」

 部隊に帰っても、洛陽へ帰るための準備しかやることが無い。また、他の兵たちの緩みや狼藉を見ないで済むなら、たとえ半日でも息が抜ける。そんなことは見抜いているのだろうが、茶姫は人を動かすのがうまい。

「検品長、階級は准尉のようだが、名はなんという?」

「え……検品長は……」

「うん、だから検品長、お前の名は?」

「はい……検品長そのものが名前でございます。姓は検、名は品長であります」

「なんと……」

 ワハハハハ クスクスクス アハハハハ( ^ิ艸^ิ゚)

 営庭の兵たちから笑い声が起こる。

「笑うな!」

 茶姫の凛とした叱責の声が響く。

 一瞬で粛とした営庭に下りると、茶姫はズンズン進んで検品長の肩に手を置いた。

「人の姓は先祖からの、名は親からの賜物だ。それを笑うのは非道であるぞ! 品長、お前さえよければ、わたしの部隊に来い。兄には、わたしから連絡をしておく」

「茶姫将軍……!」

「よいな?」

「は、はい……しかし」

「しかし、なんだ?」

「わたしの部下もいっしょではいけませんか? この者たちだけで戻っては……」

「そうだな、兄は、この者たちに辛くあたるだろうなあ。承知した、部隊ぐるみ引き取ってやろう。備忘録、この者たちの世話をしてやれ」

「怖れながら……」

「なんだ、不都合があるのか?」

「いきなりの移籍では角が立ちます。装備変換のため、当面、検品長の隊を出向させるということにされては?」

「おお、良いところに気が付いた。昨日も凹ませたばかりだったしな。では、そういうことで処理してやってくれ」

「承知」

 あっという間に、不遇な検品長とその部下を救済してのけた。

 茶姫の判断も優れているが、それを補佐する備忘録もなかなかの者だ。

「クク……涙が溢れて……止まらないんですけど(´;ω;`)ウッ…」

 一番影響を受けたのは市であったようだ(^_^;)。

 

「これから、新装備に切り替える。ただちに切り替えよ!」

 

 営庭いっぱいの兵たちが、その場で装備を改めた。

 改められると、営庭の門が開かれ、人数分の馬が引かれてきて、兵一人一人にあてがわれた。

「そのまま騎乗せよ!」

 ザザザザ

 五分で切り替えた装備で乗馬すると、胸甲を付けた鮮やかな竜騎兵の大部隊が出来あがっていた。

 

☆ 主な登場人物

 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生
 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
 織田 市        信長の妹
 平手 美姫       信長のクラス担任
 武田 信玄       同級生
 上杉 謙信       同級生
 古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ
 宮本 武蔵       孤高の剣聖
 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
 今川 義元       学院生徒会長 
 坂本 乙女       学園生徒会長 
 曹茶姫         魏の女将軍

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明神男坂のぼりたい・108〔救急車に載せられて〕

2022-03-23 08:20:52 | 小説6

108〔救急車に載せられて〕 

 

 

 救急車のサイレンが聞こえて、途絶えた意識が切れ切れに戻って来る。

 

 三階でひっくり返ったもんだから、どうやって担架もってくるんだろう……?

 苦しいけど、そんなこと思った。

 佐渡君の時は路上だったから、すぐにストレッチャーに載せられて、そのまま救急車まで運ばれた。

「だいじょうぶ、ゆっくり行くからねえ……」

 救急隊員のお兄さんは、とっても口調が優しい。保育所の先生か生協のお兄さんみたいな感じ。

 ガンダムがこんな感じだったら……気持ち悪い。

 宇賀先生だったらステキ、東風先生……ありえねえ。

 イチ ニ サン

 掛け声と共にハンモックみたいなのに載せられて、三人がかりで階段を下ろしていく。

 玄関の階段を降りると、ハンモックごとストレッチャーに載せられ、ゴロゴロと振動が伝わって来る。

 あ……谷底だ。

 上向きの視界に入って来るのは、四角い空。

 男坂と両側の建物に区切られた景色は谷底のイメージ、家の前で、こんな真上を向いたことなかったもんね。

 風の谷のアスカ……なんてね。

 苦しいんだけど、ちょっと感動。

 視界の端に、ご近所の人たち。明神さまにお参りする人もチラホラ。

 あ、だんご屋のおばちゃん……巫女さん……巫女さんの笑顔以外の表情初めて見た。

 ガッシャン

 ハッチバックからストレッチャーごと載せられる。

 その瞬間、心配顔のお母さんの後ろに佐渡君が見えたような……。

 バタム

 ハッチバックが閉められて、発作みたいに救急車のサイレンが鳴り始める。

 ピーポーピーポーピーポーピーポー

 救急隊のお兄さんが無線で連絡して……搬送する病院をあたってる。

「だいじょうぶ、こんな可愛いお嬢さんだから、手を挙げる病院はいっぱいあります(^▽^)」

 心配するお母さんに、救急隊員のお兄さんはやさしい。

 お母さん、ジャージのまま……え?

 首から上はさつき?

「明日香、お母さん付いてるからね」

 声はお母さん。

 え?

 不思議に思ってると、お母さんの顔……え、あたしの顔?

 手を握ってくれて……これって、佐渡君を救急車に載せた時のあたし?

 あたしは……あたしは……

 

 そこで再び意識が……途絶え……た……。

 

 

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