大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・263『被服廠跡に追い詰める』

2022-03-16 11:19:20 | 小説

魔法少女マヂカ・263

『被服廠跡に追い詰める語り手:マヂカ  

 

 

 ゾワ

 

 そこに踏み込んだとたん、全身に鳥肌が立った!

 銀座の街並みから裏通り、震災復興は、まだ緒に就いたばかりで、一筋入った裏通りは瓦礫の街だ。

 道路こそ人や車が通れるようになっているが、泥棒犬を追いかけて走り抜ける街は瓦礫の山という以外の個性が無い。

 何町の何丁目か見当もつかず、踏み込んだそこは陸軍被服廠跡の空き地だ。

 言うまでも無い、震災直後四万人近い被災者が、四方から吹き寄せた火災風によって、一瞬のうちに焼き殺された地獄の広場だ。

 先月、形ばかりの慰霊祭が行われてはいるが、まだまだ犠牲者の魂は和魂(にぎたま)に昇華されてはおらず、悪しき鬼が踏み入れば、たちまちのうちに鬼の足元に吸い寄せられ、巨大な闇の力に収れんされてしまう。

「まずい、いったん出るぞ!」

 叫んだが、間に合わない。

「あ、あかん、出口がみんな塞がってしもてる!」

 見習いとは言え、魔法少女のノンコが素早く出口を叩くが、鬼の力で塞がれてしまっている。

「かくなる上は……!」

「霧子、ここは生身の人間の力が通用するところじゃない!」

「でも、ムザムザとやられるわけにはいかないわ。これでも、慶長伏見地震の折には太閤殿下の元に一番で駆けつけた高坂道隆の十七代目! 大連大武闘会で優勝を勝ち取った高坂霧子よ!」

「ノンコ! JS西郷! 霧子の傍を離れるな!」

「「合点!」」

 霧子を真ん中に、前後をわたし、後ろをノンコ・JS西郷の二人で固め、広場の中央でステッキを咥えたまま、こちらに牙をむく黒犬にガンを飛ばす。

 ガルルル……

 黒犬は、前脚を伏せ、いつでも跳躍して飛びかかって来る体勢だ。

 もし、ここにブリンダが居れば、どちらかが黒犬の相手をしているうちにステッキを取り返すという戦法もとれるが、正規の魔法少女は、このわたし一人だけだ。この禍々しい悪気の渦の中では、なにが飛び出してくるか分からない。うかつに踏み込むのはためらわれる。

「気を付けて……まるで悪気の大渦だ。周囲から。なにが飛び出してくるかわからんからな」

「西郷さんにSOS出してみる!」

 奥の手なのか、JS西郷は、一休さんのように両手をグウにして頭をグリグリし始めた。

 また上野大仏の首でも呼ぶつもりなのだろうか……あいつは、横浜の戦いで限界が来ているはずだぞ? 西郷さんは実力行使はしない、日光街道でもそうだったし、この大正時代に来てからもそうだった。

 西郷さんは、いつでも、精神的な後ろ盾。それ以上でもそれ以下でもない。

 ガルルルル

 黒犬は下ろしたステッキを足もとに置いて、右脚で押さえている。

 ガチの攻撃姿勢だ。

 振り返って三人を見る。

 ガチガチの守備姿勢だ(-_-;)。

「マヂカ、あっち、あっち見てぇ!」

 ノンコがノドチンコむき出しにして、黒犬の向こう側の旋風の壁を指さす。

「あれは……」

 旋風の壁が人の形に膨らんできている……誰か、旋風の向こう側から、こちらに入ってこようと身じろぎしているようだ。

 ズボ

 壁をぶち破って、飛び出してきたのは鎖だ。

 シュキーン

 鎖は秒速で伸びて、黒犬の首輪に連結された!

 グワン! ワンワン! ワンワン! ガルルルル……

 鎖に繋がれた黒犬は、後脚で立ち、胸を反らせて前脚を足掻かせる。

「みなさん、今のうちに!」

 鎖のもとを握った人間が旋風の、それこそ風穴から犬に引っ張られるようにして現れた。

「「「「クマさん!?」」」」

 必死の力で鎖を引っ張っているのは、トキワ荘で怪人にかどわかされた、我らがメイドのクマさんだ!

「ク、クマは犬よりも強いのです! でも、いつまでも持ちません、どうぞ……今のうちにぃ!」

 クマさんは、ギュっと目をつぶり歯を食いしばるようにして渾身の力で鎖を引っ張っている。

 鎖を握った手からは、血が滲んで、ポタポタと落ち始めている。

「でも、クマさんは!?」

「わたしなら大丈夫です、お早く……」

「う、うん……でも、ステッキが」

「そんなことを言ってる場合ではありません……まずは、逃げてください! ウウ、手が……」

 ゴーーー

 クマさんの頑張りと反比例するかのように旋風が強まり、風穴が小さくなっていく。

「お早く(≧▽≦)!」

「うん、分かった……」

 いや、待て。

「クマさん、力を入れ過ぎては、かえって持たない。肩の力を抜いて、みんなが抜ける間、堪えてくれ!」

「は、はひ……」

 肩の力を抜いた瞬間、クマさんの目が開いた。

 開いたクマさんの目には白目が無い……半開きになった口の中も闇夜のように真っ暗だ。

「おまえ、クマさんの身に乗り移った化け物だな……」

「「「「そんな……」」」」

「フフフ……もうちょっとだったのにな……さすがは、大年増の魔法少女だ。クロ、猿芝居……いや、犬芝居はここまでだ」

「だから、最初から力づくでやっときゃよかったのにさ」

 犬が口をきいた……それも二本足で立って。

 

※ 主な登場人物

  • 渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
  • 野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
  • 安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
  • 来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
  • 渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
  • ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
  • ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

  • 高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
  • 春日         高坂家のメイド長
  • 田中         高坂家の執事長
  • 虎沢クマ       霧子お付きのメイド
  • 松本         高坂家の運転手 
  • 新畑         インバネスの男
  • 箕作健人       請願巡査

 

 

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明神男坂のぼりたい・101〔The Summer Vacation・8〕

2022-03-16 06:29:26 | 小説6

101〔The Summer Vacation・8〕 

         


 ハワイロケは忙しかった。

 ワイキキビーチからダイヤモンドヘッド、アラモアナ・ショッピングセンター、ハナウマ湾、カラカウア通り、モアナルア・ガーデン、クアロア牧場、記念艦ミズーリ、と二日間かけて、撮影許可が下りるとこでは全部撮った。

 親会社のユニオシ興行のやることに無駄はありません。

 あたしたちはリカちゃん人形みたく行く先々で着替えて、水着からアロハの短パン。支給された私服(?)なんかに着替え、3台のカメラで、延べ40時間分ほどの撮影。


 なんせ、曲が1950年代のアメリカンポップスの代表『VACATION!』

 あ、そうそう。帰ってから曲のタイトル『VACATION』にビックリマーク『!』が付くようになるんだって。

 マイナーチェンジ? 

 とにかく、微妙な変化を付けて差別化を図り、オタクの心をくすぐって、売り上げを伸ばそうってユニオシの魂胆。


 年寄りから若者まで、アメリカ人も日本の観光客もノリノリでノーギャラのエキストラに付き合ってくれる。むろん、あたしたちが可愛くって、イケてるからなんだけど(≧∇≦)市川ディレクターと夏木インストラクターのやることはインスピレーションに溢れてて、ミズーリの前では、どこで調達してきたのか、水兵さんのセーラー服を着て『碇上げて』を即興の振り付けでやらされました。

 夜は、泊まってるホテルの要請で急きょミニライブ。これで宿泊代が三割引き。ほんとにうちのプロダクションは……!

 そんなふうな過密スケジュールで、さすがに線が切れかかったあたしたちに、なんと半日の自由時間。メンバー22人は4、5人ずつのグループに分かれて、ちょっとの間VACATION。ただ、ビデオカメラを持たされて、とにかく撮りまくることが条件。


 これはアイデアだったよ(^▽^)。


 プロのカメラマンじゃなくて、素人のあたしたちが、好き勝手に撮るんだから、いろんなビデオが撮れます。あとは編集するだけで、経費も手間もかかりません。

 ほとんどの子は、いわゆる名所を回ったけど、あたしは、ちょっと勇気出してアリゾナ記念館に行った。

 アリゾナ記念館は、真珠湾攻撃で日本海軍がボコボコにして沈めた戦艦アリゾナの上にある。いわゆる日本の『スネークアタック』と呼ばれる、アメリカ人には忘れられない歴史記念物。日本人観光客は、あんまり行きません。

 あえて、ここを選んだのは、アメリカ人の生の反応が知りたかったから。

 入館は無料。

 沈んだままのアリゾナの真上を交差するように浮桟橋みたいな仕掛けで記念館がある。56メートルの「潰れた牛乳パック」と言われる白い箱みたいな記念館。

「中央部はたしかにたるんでいるが、両端はしっかりと持ち上がっており、これは最初の敗北と最終的な勝利を表している。大きなテーマは平静であり、人々の心の最も奥にある悲しみの表現は、その人それぞれに感じ取るものでありデザインでは省略した」んだそうです。

 亡くなった乗組員の銘板と、英文の説明文があった。

 さぞかし日本の悪口が書いてあるんだろうと単語を拾うようにして読んでたら、いかついアメリカ人のオッチャンが寄ってきた。一瞬ビビったけど、オッチャンはにこやかに握手を求めてきた。

「AKR47のメンバーだね」

 きれいな日本語。聞くとアメリカ海軍の退役軍人さん。で、あたしたちが読みあぐねてた文章を、ていねいに日本語に訳してくれた。

「アメリカ人には悲劇だけども、これは君たちのひいおじいさんたちが、どんなに勇敢に高い技術で戦ったかを書いてある。あの開戦は当時の情報技術では、悲劇的な行き違いだったけど、アメリカ人も日本人も死力を尽くした。そのことが書いてある。ここから何を読み取るかは、それぞれの人の心の問題だ」

 なんか、アメリカに一本取られたような気がした。

 そのあと、オッチャンは当たり前のアメリカ人に戻って、いっしょに記念撮影。Tシャツにサインしてあげたらムッチャ喜んでくれた。

―― なかなか粋なオッサンだ ―― 

 さつきの声がした……ような気がした。

 さつきは、明神さま(親父の将門さん)から海外に出る許可がおりなかった。

 だんご屋が忙しいというのが理由だったけど、カヨちゃんの後ろには出雲阿国が付いて来ている気配。

 きっと大人の事情てか、神さまの事情。

 まあ、お土産買って帰って、お話いっぱいしてやろう。

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