大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・219『納骨の旅・6・陛下といっしょに』

2024-05-06 11:46:33 | 小説4
・219

『納骨の旅・6・陛下といっしょに』ミク 



 そうねえ…………


 恩師の納骨に合わせてお参りに来たとお話すると、少女のように小首をかしげてお考えになる陛下。

「うん、あの時は元帥と一緒に戦ってくださったから……うん、不自然じゃないわ。いっしょに参拝しましょう(^ー^)」

 どこかココちゃん(心子内親王)を思わせる笑顔になって、いっしょの昇殿参拝をさせてくださった。

「今日はね、児玉元帥の命日なの」

 あ……

 今日は、いくつかある終戦記念日でも例大祭でもないので、なんのためのご参拝かと思った。そうだ、今日はパルス症で亡くなった(機能停止した)元帥の命日だ。

 元帥の元々の体は満州戦争で死んでいるけど、ロボットのJQにソウルをPI(パーフェクトインストール)させた。そのJQボディーの元帥もパルス症で限界が来て電脳が停止。名実ともに元帥の命が終わった日なんだ。

「頑固な人でねえ、亡くなる時に記念日とかの特別な日にはしないように言い残したの。一部にはお祀りして神社を造ろうという動きもあったんだけど『児玉神社はすでにある』って封じてしまって」

「児玉神社があるんですか?」

「山口と江ノ島にね、日露戦争の時の児玉大将がお祀りしてあるの」

「あ、そうなんですねぇ」

「ご先祖でも何でもないんだけどね、そうやって煙に巻いて派手なことはさせなかった。あ、宮司さまがおいでになったわ」

 御式の時の上様を忍ばせる古代衣装の宮司さんがやってくると、そこからは陛下もわたしも無言で昇殿してお参りを済ませた。


「どうかしら、お時間があるのなら元帥の記念館、いっしょにどう?」


「は、はい、喜んで!」

 おしのびのご参拝なので御料車でもなく天皇旗もつけていないので、わたしのような火星人でもごいっしょできる。こんな機会はもうないだろうし、アキバは諦めて朝霞駐屯地の記念館に御同行させていただく。

「お待ち申し上げておりました」

 准尉のおじさんが普通の事業服で出迎えてくれる。

 事前の連絡はしてあったんだろうけど、特別な出迎えではない。上様も、よく普通のナリで学校なんかに足を運ばれるので、少しリラックスできる。

「ここで、少しお待ちください」

 通されたのは基地の応接室。

 靖国ではすぐに参拝できたので、ちょっと意外。

「わたしたちは、一般の時間が終わってからになるの」

「ああ、そうですね!」

 今日は元帥の命日だ、人がたくさん来ていてあたりまえ。そう広くもない記念館。お忍びとはいえ、大勢の一般の人たちに混じるのは憚られるだろう。

「道隆さんはお変わりなくて?」

「あ、今は……」

 月面の勤務であることやパルス病の蔓延、マス漢との紛争のことなどをお話すると、眉を曇らせる陛下だった。

「そうだったのねぇ、扶桑は将軍が正面にお立ちになるから大変なのねぇ……落ち着いたら、ゆっくりお話がしたいわ。ココのことでもお世話になったし、その時は、他の卒業生の人たちも……どうしているのかしら、大石君、穴山君、それに、テル……あら、テルちゃんの苗字はなんだったかしら?」

「あ、平賀、平賀照です。いつまでたっても子どもみたいですから、先生たちも苗字で呼ぶことはなかったですし」

「あはは、そうね。でも、いまは大科学者でしょ。最近じゃパルス病のワクチンも作っちゃったし。そうよね、ネットでも平賀博士と出ていたのにね、あなたたち、第一印象がフレッシュだから、そのまま憶えて、なかなか上書きされないわ」

「アハ、恐縮です(^_^;)」

 それから、火星や月での勤務のことやらをお話して、姉崎先生の話では「そう、大変な人生を歩んでこられたのね……それをちゃんとご供養して、でも、立派で素敵な教え子をお持ちになって、少し羨ましいですね」と締めくくられた。

 それから准尉さんに付き添われて、モスボールされた児玉元帥に対面。

 陛下とは姉妹で通りそうな美しい姿に見惚れ、その後は宮内庁の車で予約していたホテルに送っていただいた。

 あくる日、羽田からシャトルに乗って、成層圏の母船に乗るまでアキバのあたりをずっと目で追ってしまった(^_^;)。

 いつか、みんなと一緒に修学旅行のやり直しができたらいいなと思って、納骨の旅が終わった。



☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人         
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
 ※ 事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 
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REオフステージ(惣堀高校演劇部)022・かゆ~いいいいい(>▭<)!!

2024-05-06 06:48:55 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
022・かゆ~いいいいい(>▭<)!!                      
※ 本作は旧作『オフステージ・空堀高校演劇部』を改名改稿したものです





 かゆ~いいいいい(>▭<)!!


 寝ていた須磨が飛び起きた。

「どうかしたんですか?」

 ワンピース8巻目から目を上げて千歳が聞き、PCゲームの啓介も、マウスをクリックする指が停まってしまう。

「なんか居るんじゃないかなあ……あちこち噛まれてるよ……ウウ、手が届かない。千歳、ちょっと背中掻いてくれない」

「は、はい」

 千歳は器用に車いすを旋回させて、須磨の後ろに回ってブラウスの上から背中を掻きはじめた。

「……それじゃ効かない……直接やって!」

「はい」

 千歳は、須磨のブラウスに手を突っ込んで、直接背中を掻いてやる。

 ポリポリポリ

「たしかかゆみ止めが……」

 啓介は部室奥のロッカーをかき回し、数分後に、まとめ買いされていたカユトメンを発見した。

「先輩、これを……」

 カユトメンを手に振り返ると、須磨はスカートをたくし上げてマタグラを。千歳もブラウスのボタンを外してボリボリかいている。

「あ……いちおう、オレも男子やねんけど(^_^;)」

「「あ……」」

 さすがに二人の手は停まった。

「オレ、ちょっと外出てるさかい、カユトメン塗っておさまったら呼んでもらえます?」


 廊下に出て、啓介は二人のかゆみが収まるのを待った。


「この部室、虫が湧いてるわよ」

「ほんと……キャ、これってダニじゃないですか!?」

「この大きさは虱だろうね……」

 血を吸ってまん丸になった虫を掃き集めた。

「ウウウウウ、なんで、こんなのがいるのよ!? ちょっと、啓介せんぱーい!!!」

「え、え、え、なにかなあ……って、その前に服装なおしてもらえませんか(-_-;)」

 須磨も千歳も、カユトメンを塗ったり、痒いところを掻いたりで、あられもない姿になっている。

「いや、あの、だーかーらーー(>〇<)!!」

「信じらんないわよ、この不潔さ(>△<)!!」

 かゆみとおぞましさと怒りのために、恥ずかしさを忘れて、啓介に噛みつく二人。

「ところでさ、小山内君は、どうして痒くならないわけ?」

「あ、そりゃ、オレは虫除け塗ってますから」

「「なんだってえ( ˂˃ ‸ ˂˃) !?」」

「え……オレ、なんか間違えてる?」


 女子二人のジト目に耐えきれなくなってきた啓介であった……。
 


☆彡 主な登場人物
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  留美という姉がいる
  • ミリー         交換留学生
  • 松井須磨        停学6年目の留年生
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜 松平(生徒会顧問)

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