大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語2・048『再びのみちびき鉛筆』

2024-05-23 15:51:11 | カントリーロード
くもやかし物語 2
048『再びのみちびき鉛筆』 




 さあ、朝ごはん!


『朝飯前のラビリンス』の成敗に時間を取られ、ただでも出遅れていた朝ごはん!

 プルルル プルルル

 部屋を出ようとしたら黒電話が鳴る。

「もしもし、なにかなあ交換手さん?」

 黒電話は交換手さんの棲家なので、電話の主は交換手さんに決まっている。

『あやかしが出たでしょ?』

「あ、うん。でも、やっつけたから大丈夫だよ」

『机の引き出しにミチビキ鉛筆が入ってます』

「え?」

 戸惑ったよ、二重の意味で。

 ミチビキ鉛筆は五角形のお尻に1~5の数字が書いてあり、試験の時に転がしたら正解の番号を示してくれる(『やくもあやかし物語・20・ミチビキ鉛筆』)優れモノだけど、選択肢が6個以上になると役に立たない。それに、夢の中に出てきた魔道具で、現実には存在しない。

「あ……えと、これは?」

『たまにこういうことが起こるんです。だって、八十年も昔の交換手が電話の中に住んで居たり、源氏物語のヒールキャラが1/12サイズになって引き出しに居たりするんですから』

 ヘクチ!

『さっきは間に合いませんでしたけど、今度は、きっと役に立ちます』

「他ならぬ交換手さんが言うんだ、ありがたく使わせてもらうね」

『はい、お誘いしておきながら真岡では十分なことができませんでしたし』

「ううん、デラシネも楽しんでくれたみたいだし、良かったと思ってるわよ」

『ありがとうございます。ま、わたしのささやかな、お……』

「お……?」

『お、応援です』

「ありがとう。じゃ、行ってくるね。御息所も風邪とかひかないでねぇ」

『さっさと行きなさいよ!』

「じゃね」

 ドアを閉めて一階の食堂を目指す。

 タタタタタタタ

 正直お腹もすいていたので、軽やかに階段を下りて一階の食堂に。

 もう、20分は遅れてるから、ほとんどの子は食べ終わって食堂から出てくるころだ。残って食べているのは食いしん坊のハイジぐらいのもの。

 あれ?

 ダイニングには、まだ寮生全員が残っていて朝食の真っ最中。

 ガツガツガツ! ムシャムシャムシャ! ハグハグハグ!

 ちょっと、みんなの食べっぷりがおかしかった(;'∀')!?



☆彡主な登場人物 
  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
  • 先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法)
  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス
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REオフステージ(惣堀高校演劇部)039・ミイラ事件急展開!

2024-05-23 08:29:40 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
039・ミイラ事件急展開!                      
※ 本作は旧作『オフステージ・空堀高校演劇部』を改題改稿したものです




 ちょっと見てくれるかなぁ


 化学の先生という感じの鑑識主任に呼ばれて、演劇部の四人は恐る恐るブルーシートの囲いの中に入った。

「結論から言うと、これは作り物だよ」

 え!?

 一瞬混乱した。

 視界に入らないようにしていても目に飛び込んでくるトランクの中身は、飴色のミイラ化した死体。

 そして、囲いの中に充満している年季の入った腐敗臭。

 五感で感じる情報は、トランクの中身が本物だと強烈に主張している。

「作り物って……(;'∀')?」

 死体はミイラ化しているので、単純に病死とか殺された死体ではなく、死後に加工されたという意味に感じて疑問形になってしまう。

 啓介の頭には小さいころテレビで見た人魚のミイラが浮かんだ。あれは魚と猿のミイラをくっつけたもので、そういう意味での作り物と思ったのだ。他の三人も同じようなものが浮かんで顔をしかめている。須磨と千歳も同様で、ミリーの頭にはフランケンシュタインが浮かんでいた。

「手の込んだ舞台道具のようなんだ……」

 鑑識主任は、化学の先生の実験手順の説明のように続く。

「ウレタン樹脂の芯の上からシリコンゴムが掛けられている。髪の毛は市販のウィッグ、頭部はプラスチックの頭蓋骨の上から、同様にシリコンゴムで作られている。精巧な舞台道具という感じなんだ」

「でも、この臭いは?」

 最年長だけあって、口を押えながらも須磨が質問する。

 作り物だと言われても、この超熟腐敗臭は納得できない。

「臭いの元は、これだよ」

 主任はトランクの底の方を示した。

 底の方には、ミイラから剥がれ落ちた皮膚のようなものが散らばっている。

「これはスルメと魚の干物を砕いたものさ。かなり古いものなんで、臭いが熟成された腐敗臭のようになっているんだ。僕らもミイラ化した死体をみることがあるけど同じような臭いがするしね」

 そう言いながら主任は四人の顔を見た。いつのまにか、刑事らしいオジサンも混じっている。

「君らは見覚えないねんな?」

「は、はい。なんせ古い部室なんで、ゴミみたいな古道具ばっかりで確認もしてないんです。解体といっしょに処分してもらお思てたもんですから」

「そうか、心当たりはないねんな」

 一拍置いてから、刑事が念を押した。

 どうやら、人騒がせな舞台道具が啓介たち現役の部員たちの仕業かどうかを確認したかったようだ。

 答えの内容よりは、答え方で真贋を確かめるという感じだった。

 早とちりというか誤解から生まれた騒ぎなのだが、鑑識まで出張る騒ぎになったので、警察としては、事の顛末を明らかにしておかなければならないのだろう。


「今年一番の大騒ぎになったなあ……」


 千歳が淹れてくれているコーヒーのドリップ音にホッとため息をつく啓介。

啓介:「車いすで千歳が入部したこと、部室棟が文化財やて分かったこと、ミリーがSNSで一躍有名になったこと……」

須磨:「ニュースにはならなかったけど、害虫が湧きまくったこととかね」

ミリー:「そもそも、それが始りやったわねえ」

啓介:「そう言えば、五人規定で潰されそうになったこともあったなあ」

千歳:「あれは感謝してます、須磨先輩」

須磨:「よしてよ、あたしはただ安息の地が欲しかっただけなんだから」

千歳:「……あ、もうネットに出てる」

 千歳がスマホの画面を示す。

ミリー:「惣堀高校ミイラ発見……ミイラ騒動……今度はオカルト……アミューズメントパーク空堀高校……」

須磨:「いろんなタイトルがつくもんねー」

千歳:「あ、これ……」

 千歳が指差した画面にはハイス薬局のオッチャンが映っていた……。



☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  留美という姉がいる
  • ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿
  • 松井須磨        停学6年目の留年生
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜 松平(生徒会顧問)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局     
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