大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・165『JC巫女たちと舞のお稽古』

2024-12-31 14:49:40 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
165『JC巫女たちと舞のお稽古』   




 あれから挨拶もそこそこに衣装合わせ。


 令和で言うところの巫女服。

 もの知らずのわたしでも、昭和の時代では巫女装束と呼んだだろうぐらいは分かる。巫女服というのはコスプレ用語だからね。

 式場のアルバイトで御神楽さんの巫女姿で見慣れてるけど、自分が着るのは別だ。

「このコハゼを帯に挟んでね……」

 頼政さんの奥さんが教えてくださる。

「あ、なるほどぉ、これで着崩れないんだ」

 袴の後ろの腰当にコハゼ付いていて、それを帯に引っかけてずり落ちないようになってるんだ。

 それから、立ち居振る舞いを習っていると、後ろで歓声がおこる。

「「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ」」」」」

 お、わたしの巫女姿に見惚れてる奴がいる……と思ったら、姿見の向こうにプリマドンナかっちゅうくらいのゴージャスな巫女服のたみ子。歓声をあげているのは、お手伝い巫女をやる地元のJC(女子中学生)たち。わたしのことは自分たちの同類ぐらいにしか思ってないみたい。

「いやあ、たみちゃんも立派だわぁ!」

 奥さんもお世辞ではない賞賛の声。

「招き姫をやるのは初めてなのよ(^▭^;)」

 招き姫っていうのは、年越祭の主役らしい。

 わたしらは、スタンダードな巫女服の上に千早っていう一重の上を羽織るだけ。でも、たみ子のはほとんどお雛さま!

 十二単っぽくって、裳裾っていうのかなあ、長い御引きずりが付いていて、手にはごっつい房付きの扇、頭にはキンキラキンの冠。

 うわぁぁぁぁぁぁぁ……きれい……たまげたぁ……お招きさまだぁ……美幸ちゃんに負けないねえ……うん、本物だあ……いいなあ……

 JCたちは、たみ子を取り巻いて、なんだか白雪姫と七人の小人かっちゅう感じ。たみ子は令和でもあまり見かけない175センチの長身で美人ときてる。その上、このゴージャス巫女服。太刀打ちできるとしたら大谷翔平の奥さんぐらいだ。

「さあ、あんたたちも準備して!」

「「「「「ハーイ」」」」」

 奥さんが手をメガホンにして言うと、元気のいい返事をして、クルクルと巫女服に着替える。意外に薄着なんでビックリ。わたしなんか巫女服の下は七分袖のババシャツだっちゅうのに(^_^;)。

「はい、では、みんなに紹介します」

 全員正座して招き姫のたみ子と奥さんに向き合う。わたしはたみ子の横。

「今年から、招き姫をやってもらうたみちゃんです。去年までは総代さんとこの美幸ちゃんがやってたけども、お嫁に行っちゃったからね。で、そちらに控えているのが共姫をやっていただく時司巡さんです。最初は兼子ちゃんたちにやってもらうつもりだったけど、インフルエンザだから、急きょ湘南の宮之森から来てもらいました。今日と三が日いっしょにやってもらいます。他にも明日、三人来てもらいますので、よろしくね」

「「「「「よろしくお願いしまーす!」」」」」

「よ、よろしく(^_^;)」

 お互いに挨拶して、簡単に巫女の所作を確認。初めてのわたしは失敗ばかりで恥ずかしかった。

 それから、参集殿という板敷の広いところに行って、たみ子の招き姫を中心に本番の稽古。ええと、お囃子っていうのかなあ、雅楽の楽団まで付いてる……って、本番は明日なんだ!

 JCの平巫女が控えてる前を共姫のわたしが付き従って中央に進む、正面の神さまに一礼して前に置かれた神楽鈴と扇を手に、招き姫が招き舞を舞う。

 小学五年から巫女舞をやってきたというたみ子の舞は見事だった。

 本番は拝殿の前の舞殿(まいどの)で舞って、御祭神である山の神様をお招きする。

 ちなみに、この神社には神さまを祀る本殿が無い。拝殿の奥には扉があって、その扉の向こうは山がそびえている。つまりは山全体が御祭神ということになっていてスケールが大きい。

 日ごろは山にお籠りになっている神さまを大晦日から元旦に掛けてお出ましいただく。お出ましいただくについては招き姫が共姫を引き具してお迎えの舞を舞うという寸法。舞殿の奥には特設の扉が置かれて、神職がそれを開けると同時に拝殿の扉もリンクして開けられるという分かりやすい演出もされるそうだ。

「昔はね、共姫もいっしょに舞ったんだそうよ」「あ、うちのお婆ちゃん娘時代にやったって」「ああ、舞殿、一人舞やるには広すぎるもんねぇ」「シ、聞こえるよ」「あ、気にしないでくださいねただの昔話だから(^_^;)」

 お稽古の後、豚汁とおむすびを振舞ってもらっていると、JCたちがお喋り。悪気はないんだろうけど、微妙に凹む。

「ねえ、明日来てくださる共姫さんたちは、どんな人なんですか?」

 のりちゃんというJCが目を輝かせて聞いてくる。

「あ、ええとね……」

 三人のイメージをかいつまんで話すと目を輝かせるJCたち。スマホの中に三人の写真が入ってるんだけど、スマホを見せるわけにはいかない。そのかわり、修学旅行や万博の話をするとメチャクチャ羨ましがってくれる。

「万博行きたかったねえ」「うんうん」「でも中学生で大阪はねえ」「東京だったらねえ」「横浜でも行けた」「高校は修学旅行関西方面だよ」「うん、でもぉ」「万博やってないしぃ」「万博以外でいいとこありますか?」

「ああ、それならねえ……」

 こないだ行ったばかりの修学旅行の話をすると、目を輝かせて聞いてくれるJCたち。総代さんたちへの挨拶に行っていたたみ子が戻って来ると、湘南の海の話になる。

「東京には行ったことあるんですけど、海は見たことないんですよねぇ」

「湘南の浜辺って、加山雄三が歩いてたりするんですよね?」

「ああ、加山雄三には会ったこと無いけど、小三のころに吉田茂に出くわしたことがあるよ」

「え、あの国葬になった!?」

「うん、和服で袴もちゃんとしてて、こーんな葉巻をね……」

 たみ子はリアル吉田茂を知ってるんだ、吉田茂って麻生さんのお祖父さんだよぉ~。

 いろいろ盛り上がってきて、のりちゃんがすごいことを言った。

「じつはね、もともとの共姫さん、インフルエンザじゃない人がいるんです」

「「え?」」

「じつは、男性経験を持ってしまった人が居てぇ……」「招き姫も共姫も男を知っていてはいけないんです」「みんな仲良しだから、みんなインフルエンザってことに」「あ、これは内緒でお願いします」

 この話題は奥さんがやってきて、それっきりになった。

 なんだけども……お二人は大丈夫ですよねって目で見るのは止めて欲しい(^_^;)。



☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長  伯父:武藤頼政
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 安藤さん              伊勢半のバイトでいっしょになったおばさん、お茶の先生
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!104『立派な悪魔だ(≧.≦)!』

2024-12-31 09:12:58 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
104『立派な悪魔だ(≧.≦)!』 





「そう……あなたは高峯純一さんの娘さんなのね」

「はい……オモクロ始めるときは、お母さんの苗字使ってました」


 撤収の間、旧保健室を借りて仁和さんと加奈子と香奈の三人で話したぞ。

 イントレを分解したりケーブルを巻いたり道具をトラックやバンに積み込んだりの音。それらが閉じた窓と半ばまで引いたカーテンで柔らかくなってよ。そこに傾き始めた黄昏というには少し間がある日差しもろ過されて、現世(うつしよ)と幽世(かくりよ)の狭間って趣きだぜ。

 ねらったわけじゃねえんだろうけど、自然とこういう雰囲気の中に入れるってのは、妖精の親分めいていて二和って人の凄みを感じさせるぜ。


 教室の撮影でライトが倒れて、危うく加奈子が下敷きになりそうになっちまった。

 それは、複合的な霊障でよ、廃校になった学校のダンス部の残留思念と、加奈子の父の高峯純一の生き霊のせいだってことまでは分かった。

 二和さんは、そこから先を探ろうとしてんだ。

「お父さんが反対していたことは、なんとなく分かっていました。最初から反対だったし、わたしが押し切った後も、積極的には賛成してはくれませんでした。わたしも親の七光りだって言われるのやだったから……でも、お父さん、あんなに心配していただなんて……」

「カナちゃんには悪いけど、それは違うわ」

「え……でも父は、あのエキストラの子の口を借りて、心配してくれていたんじゃ?」

「心配な我が子に、ケガをさせようとするかしら」

「あれは、ダンス部の残留思念じゃ……」

「そういうことにしておけば、高峯さん自身は傷つかずにすむでしょう?」

「え、じゃ、あれは……」

「お父さんは、あなたに嫉妬してるのよ」


 一瞬、保健室がグラリと揺れた。


「図星のようね、カナちゃん……」

「「はい」」

 加奈子と香奈が一度に返事した。

「ああ、二人ともカナちゃんだったわね。仁科さん、カーテン閉めてくれる。カナちゃんはスマホを出して」

 二人とも言われたとおりにし、仁和さんは、ロッカーから白衣を取りだして着たぞ。

「カーテンは結界……」

 香奈が独り言のように言った。

「この白衣が浄衣のかわり」

 仁和も独り言のように言うと、なにやら呪文を唱え、印を結んだ。加奈子は緊張してきたが、香奈(マユ)にはよく分かった。仁和さんの霊能力は、見抜くという点ではマユよりも優れてやがるけど、霊障を取り除くのは、マユの方が上手い……と思う。でもよ、仁和さんの真摯なやり方にマユは任せてみようと思ったぞ。

「……えい!……これでいいわ、カナちゃん。お父さんに電話してごらんなさい」

「はい……でも、なにを話したら……お父さんとは、あまり話したことがないんです」

「ホホ、それがいけないの。正直に今度のこと自慢すればいいわ。お父さん、黙っていてハケ口がないの。だから無意識に、こんな霊障をおこすのよ。正直に嫉妬させてあげれば収まる。いえ、収まるどころか、カナちゃんのいいアドバイザーになってもらえる」

「は、はい」

 加奈子は言われるままに電話をした。父の高峯は、朝方から熱が出て、寝込んでいたようだった。で、電話の向こうで、こう言いやがった。

『なんだか夢をみていた』

「どんな夢?」

『くそなまいきな女優が、へたくそな芝居をしやがるんで、意見をしようとしたら、無視しやがる。そこで、カッとしてスポットライトを蹴倒すんだ』

「ほんと……!?」

『そしたら、顔は分からないけど、監督みたいなのが出てきて意見しやがる。なんだか分が悪くなって、逃げ出したら、意識がとんじまって。胸苦しくなってきてな、冷や汗かいていたら、お前からの電話だ。で、なんだ。加奈子から電話してくるなんて、雨が……ほんとに降ってきたぞ。おい母さん、雨だ! 洗濯物……』

 それから、加奈子は、ここ最近の自慢話をしてやった。すると高峯は、なにかとケチをつけはじめやがる。仕事のことで父と話などしたことのなかった加奈子には、ちょっと新鮮だった。最後の方では、涙を流しながら親父を罵ってやがる。

「そんなに文句あるんなら、東京出てきて、わたしの仕事っぷり観てからにしてよ!」

『そんなこと言ったって、こんな体じゃなあ』

「今は、いい電動車椅子がある。それ送ってあげるから、実際に来なさいよ!」

 そうなんだ、加奈子の父、高峯純一は、撮影中の事故で下半身マヒになって、引きこもりっぱなしでいやがったんだ。

 加奈子の電話は、その親父の心を開かせ、火を付けたみてえだ。

 仁和さんは、そんな電話の遣り取りをニンマリ笑って聞いていやがったぞ。

 こいつ、立派な悪魔だ(≧.≦)!

 
 
 マユは、また一つ勉強できたことを、感動とともに感じていたぞ……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院 オモクロでは仁科香奈
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー 地親は黒羽英雄
  • 由美子      英二の妹
  • 真田       由美子の元カレ
  • 美優       ローザンヌの娘 英二の妻
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 桃畑 加奈子   オモクロの創設メンバー  
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