大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

ライトノベルベスト『高安ファンタジー・2』

2021-12-10 05:20:58 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト 

高安ファンタジー・2(高安女子高生物語外伝) 




 この四月から、亮介ニイチャンと同じ通学電車になった。

 と、書くと偶然みたいやけど、じつはあたしが高校に行くようになって、電車の時刻表見たりして、亮介ニイチャン(以下カレ)と同じ電車に乗れるように工夫した(^_^;)。

 最初は、同じ車両に乗ってるだけで幸せやったけど、だんだん近寄るようになって、話が出来るようになった。

 きっかけは……。

 電車は、高安仕立ての準急。

 運がええと座れるけど、まあ、通勤のオッチャンやオネエチャンらにはかないません。つり革に掴まって乗り換えの鶴橋まで立ってる。

 横に立ってるのに、カレは気ぃつかへん。うちから声かけるなんてとてもでけへん。え、東の窓ではあんなに大胆やったのにて? あれはたまたまの偶然でああなっただけ。いくら河内の女の子でも、ピカピカの一年生にそんな度胸はありません。

 その日も、いつものように気づかれんまま、鶴橋駅が近なってきた。

 今日もあかんな……そう思たとき。

 ガックンと、電車が急停車した。うちらは進行方向に将棋倒し。隣のカレが、つり革掴みそこのうて、手が滑って、あたしの胸をかすった。

「アッ……!」

 思わず声が出てしもた。

「ごめん!」

「あ、いいえ」

「あ……自分は?」

 と、カレが気ぃついた。

 そこから去年の東の窓の話やら、子どもの頃の話をするようになった。

 やったー! 

 と思たけど、そこからが進展せえへん。しょ-もない話の十数分。それがうちの高校生活の全てやった。しかし、きっかけはイケテル。うちの胸がもう五ミリ小さかったら、カレの手ぇとは接触せえへんかった。

 そうこうしてるうちに、進展もないまま、連休になった。

 もうじき夏服になるんで、八尾まで夏用の服やらインナーを買いに行ったんよ。

 夏は上着無しのブラウスだけ。まあ、学校は冷房効いてるんで、たいていの子はチョッキを着たり脱いだりして調整してる。

 で、ブラウスの下はキャミを着てブラが見えへんように工夫。それでも若干は透けて見えるんで、あんまりダサイのはいややし、かといって色物は禁止やし……。

 そない思て、適当なもんがないかと、ワゴンやらショーケースを見てた。

「あんた、ええ胸してるねえ」

 気いついたら、店のオバチャンがうちの胸を見てた。この店は中学のころから来てる店やけど、こんなオバチャンおったかなあ、と、思た。

「あんたの胸は、一万人に一人ぐらいの福胸や。カタチ大きさに気品がある。ええ運が回ってくる運勢やな」

 この言葉だけやったら適当に聞き逃してたけど、次の言葉に驚いた。

「あんたの運は、東の窓から開けて、胸が勝負やなあ!」

「え、ほんま!?」

 になった。

「惜しいことに、インナーが、その運を押さえ込んでる。あんた、いま好きな男の人いてるやろ。きっかけはオバチャンが言うたとおりやと思うけど」

 これは、このオバチャンは霊能力者かなんかかと思た。

「この開運ブラにしとくとええわ。あんた高校生やろ? 大人やったらショーツとのセットにしたげるけど、あんたには、まだ早い。ブラだけにしとき」

 それは、とても淡い水色のフロントホックのブラやった。オバチャンの勢いで試着までしてしもた。カタチのええ胸が、いっそうかわいい張りになって、なをかつ清楚な雰囲気。うちは迷わんと、それを買うた。

 本屋さんで、新刊の『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』を買うて、さっきの店の前を通ると、張り紙。

――都合により、四月末日をもって閉店いたしました。店主敬白――

 その日は、五月三日やった。どういうこっちゃろ……?


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