大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

かの世界この世界:123『対シリンダー戦』

2020-11-05 06:24:25 | 小説5

かの世界この世界:123

『対シリンダー戦』語り手:テル          

 

 

 空を埋め尽くすほどのシリンダーの群れだ。

 

 全てを相手にすることは出来ない、群れの薄いところを集中的に攻めて穴が開いたところから突破するしかない。

 時間をかけていると融合体になってしまって手が付けられなくなる。

――三式弾だ、三時の方向が薄くなっている、撃ったら突撃する――

「三式弾ヨーイ!」

「ラジャー」

 ブリュンヒルデが命じ、ロキが弾を込める。三式弾とは一種のクラスター弾で、目標に最接近したところで炸裂し、打ち上げ花火のように幾百の子弾をまき散らす。シリンダーの群れに穴が開いたところを一気に突き抜けようと言う作戦なのだが簡単ではない。一撃で致命傷を与えられるのは炸裂の中心から半径十メートルほどがせいぜいだ。傷ついたシリンダーは直ぐに融合して、その名も融合体となって難儀なクリーチャーに変異する。これまではなんとかしのいできたが、ヘルムのシリンダーは初めてだ。いや、ヘルムにはこれまでクリーチャーが出現したという記録すら無いのだ。見かけは同じシリンダーでも油断はできない。

 テーーー!!

 号令と変速機が四速に切り替わるのが同時だ。

 飛んでいる状態でシフトチェンジが有効なのかは一瞬疑問……だが杞憂だった。

 ズガーーン!!

 ギュィーン!

 三式弾の炸裂! 四号の増速!

 シリンダーの壁には四メートルほどの穴が開いているが不完全で、境界には胡麻斑のようにブチギレても生きているシリンダーがいる。

 ビチャ ビチャ ビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャビチャ!

 破片になっても生きているシリンダーが粘液をまき散らしながら四号の車体に貼り付いていく!

「くそ、粘っこいやつらだ!」

 貼り付いたシリンダーが四号の行き脚を鈍らせる、タングリスは負けじとアクセルを踏み込むがエンジンは息絶え絶えになり、速度計の針は急速にゼロに近くなる。

 えい! えい! えいえいえい!

 可愛い気合いが聞こえる。

「ポチが一人がんばってるぞ!」

 ペリスコープから覗くと密集したシリンダーの砕けの中でポチが戦っている。

「ケイト、行くぞ!」

「おお!」

 ハッチの隙間から剣と弓を出し、邪魔になるシリンダーをぶちのめしつつ外に出る。

 出た途端に貼り付くシリンダーの砕け、左手で顔に貼り付かれるのを防ぎながら剣を振り回す。ケイトも同じように弓を振り回している。ケイトの弓も進化していてライトセーバーのように光って、振り回す旅にブンブンと頼もしい音がしている。

「げ、限界だ……高度が保てん!」

 ブリュンヒルデが唸る、ハッチの縁を掴む手がブルブルと震えはじめた。

 グィーーーン ズザザザザザザザ! ザーーー!

 四号は墜落と降下の間ぐらいの勢いで着地していった。

 

 見上げる空にはシリンダーの群れがわだかまっているが、降りてくる気配は無く、大きく旋回すると北に向かって方向を変える、変えた先には胡麻粒ほどの大きさになってなお北進していくユーリアが視界没になっていく。

 視線を落とすと、身の丈ほどの灌木林。所々に獣道なのだろうか下草が疎らになっているところがあるきりで、日ごろ人の出入りが無いことが偲ばれる。鳥か獣か、はたまたクリーチャーか分からぬものの気配と鳴き声。砲塔の上に身を乗り出すと灌木林の木の間隠れに鬱蒼としたジャングル、さらに向こうには急峻な山岳が見えて、この先の進撃が困難なことが伺える。

 ん?

 分からぬものたちの鳴き声が止んだ。灌木林からは幾百の鳥たちが一斉に飛び立つ、いや何かを恐れて飛び立っていく。

 なにか来る……。

 

 ゴゴゴゴゴゴゴーーーーーーーー!!

 

 地響きがしたかと思うと、大地が鳴動して、目の前の灌木林がユサユサと揺れる。

 ギシ ギシ ギシ

 四号のサスペンションが軋んで車体が揺れる。

 ゴゴゴゴゴゴゴーードドドーーーーン!!!

 地震だ! 震度7はある!

 25トンある四号の車体がオモチャのように揺れる揺れる!

 さすがに乗り慣れた乗員たちなので、車内のフックや取っ手に掴まって揺れをしのぐ、悲鳴を上げる者もいない。

 十数秒だったろうか、揺れが収まって四方を見渡す。

「みんな、後ろを見ろ」

 ブリュンヒルデの差す四号の後方を見ると、地面が陥没して海の水が流れ込んでくる。

 四号の背後数メートルのところから地面が無くなって、ヘルムの島は二つに分裂してしまっていた!

 

☆ ステータス

 HP:11000 MP:120 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・80 マップ:9 金の針:5 所持金:1500ギル(リポ払い残高20000ギル)

 装備:剣士の装備レベル45(トールソード) 弓兵の装備レベル45(トールボウ)

 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)

 白魔法: ケイト(ケアルラ) 

 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 


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