大橋むつおのブログ

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普通科高校の劣等生・1『魔法科高校じゃねえんだ』

2021-11-08 05:29:35 | ライトノベルベスト

イトノベルベスト 

 
普通科高校の劣等生
1『魔法科高校じゃねえんだ』   
 


 魔法科高校の劣等生ならカッコがつく。

 普通科高校の劣等生では洒落にならない。
 
 敬遠されて、同情もされないし友情も持ってもらえない。
 
 イジメられるようなことは無いが、話しかけられることもほとんど無く、どうしてもって時は敬語になる。
 
 うっかり掃除当番を忘れて帰りかけた時など「あ、掃除当番なんですけど……」
 
 それも目線を外してな。
 
 気づまりなお客を相手にする感じだ。
 
 でも、オレはあんまり気にしない。並の劣等生じゃない。なんせ、学年でたった一人の留年生だ。三学年を通じて成績が原因で留年しているのはオレ一人だから、もうスコブル付きの劣等生。

 昨日、二回目の修学旅行から帰ってきた。
 
 そうだ、オレは二回目の二年生をやっている。

 二回行って分かった。
 
 修学旅行は前回と同じ沖縄二泊三日。組合の先生には悪いが、反戦学習の修学旅行は止めた方がいい。理由は書くと長いのでよす。ただ一言、あの戦争を反戦の立場からだけ教育すると、日本人やってるのが嫌になる。
 
 だいたい、オレは学校の教師を尊敬してない。
 
 東京大学を出た先生が二人いる。一人は数学、一人は国語。数学はご丁寧に去年も今年もいっしょ。二人とも落第した最初の授業で、オレの顔を見て驚いていた。
 
 留年生は進級判定会議ってので、時間をかけて審議される(落ちた時、担任が『いったいどれだけの時間をおまえの審議にかけたか!』と恩ぎせがましく言っていた)にもかかわらず、オレのことを覚えていない。学校でたった一人の落第生なのにな。

 魔法科高校じゃないから、魔法は使えないけど、並の生徒には見えないものが分かる。

 東大出て、公立高校の教師ってドーヨ。

 能無しを絵にかいたようなもんじゃん。
 
 教育改革の志高く、あえて教師をやったというのなら、まだ尊敬の余地はある。でも、学校で、ただ一人落第した生徒も憶えていないようじゃ、会議もロクに聞いていない証拠じゃねーか。

 社会科でM大学を出た先生がいる。
 
 M大は近在でも最底辺の大学で、教員採用試験に通るような学生は、まずいない。
 
 この先生は高校でも大学でも落第し、講師を三年やってやっと採用試験に通った強者だ。
 
 最初の授業は感動した。講師二年目の春にお父さんが亡くなり、切羽詰って勉強したら通ったという一発屋。

 授業の最初にゼロの概念について教えてくれた。映画の『永遠のゼロ』から脱線しての話だった。

「100-100はゼロだ。1億にゼロを掛けてもゼロだ。そして、ゼロを目に見える形では見ることができない。でも感じることはできるよな」
 
 先生は、そう言って教卓の上を示した。
 
「何もない。これは無だ。でもここに、一本のチョークを置く。ここにマイナス1チョークとする(チョークをどけた)……何もない教卓に戻ったが、これはゼロだ。無と似てはいるが、マイナス1というドラマがあったという点で決定的に違う。分かるかなあ……ここにX=1 Y=1の点がある。ところが、点と言うのは面積を持たない。だからここに描いた点は座標軸を示す記号に過ぎない。どう黒板に描いてもパソコンのモニターに出しても面積をもってしまうからな。面積のあるものは点じゃない。この点を目に見えるように示すことは不可能なんだ。しかし、君たちはゼロも、この点も頭の中では明らかに認識できる。出来たな!? これが物事を理解するということだ! 出来たということは高校生として十分な能力があるということだ!」
 
 ロジックの技なんだろうけど、この説得力には感心した。しかも天下の劣等M大学の出身なのだ!

「……今年も同じ話してたね」

 妹が、家に帰ってからうんざり顔で言った。
 
 ちなみに妹とは同じ学校の一年違い……つまり、落第してからは同じ学年。しかも同じクラスになってしまった。M大学の先生は選択授業が違うので、オレは今年は受けていない。M大学の先生の評価は、オレの中でワンランク下がった。

 ちなみに、妹とはクラスでは他人の顔をしている。親が離婚しているので苗字が違う。妹が入学したらバレるかと思ったが、学校は苗字が違うということで、他人と思っている。学校に出した書類には同じ住所になっているのに。学校がいいかげんな証拠。
 
 あ、なんで妹がM先生の事を知っているかというと、M先生に感動した時に妹に話したからだ。
 
 まだ苗字がいっしょの兄妹やってた時にな。

 え、なんで親が離婚したのに住所がいっしょ? 鋭いツッコミ!

 それは、また明日。 

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