タキさんの押しつけ映画評
『キャリー』
これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内にながしているものですが、もったいないので転載したものです。
スティーブン・キングの処女作のリメイクです。
前作はブライアン・デ・パルマ監督 シシー・スペイセク主演でした。物語の底には、キャリーが母によって押し込まれる階段下の小部屋=祈祷室=安全な場所(母にとって)=子宮。豚と血とカーニバルのシンボライズが流れているが、これは止めておきます。ちょっと嫌悪感剥き出しの解説になってしまいますから。
S・キング原作の映画化作品は既に40本を越えています、その中で 今 何故キャリーなのか?
製作者サイドはキャリーに込められたテーマの普遍性を語っており、前作から37年後 現在のキャリーを作りたかったと述べています。結果、ハッキリ言って焦点のぼやけた映画になっていました。
シシー・スペイセクのキャリーはブス(女性方 ごめんなさい)で引っ込み思案の典型的な苛められっ子。その周囲に有るのは陰湿な悪意のみ。逃げ込むべき我が家は狂的宗教原理主義者の母が支配している。
キャリーには自分の殻を打ち破る意志も力も無い。そのギリギリまで押し込められた状況の中、プロムナイトで受けた仕打ちによって 彼女は異形の怪物へと生まれ変わる、その破壊は相手かまわず、無慈悲に襲いかかる。
対して本作は、S.N.S.でイジメが横行する現在の話である、クロエ・グレース・モレッツのキャリーは母の支配から抜けようと反抗する今の時代のハイティーンである。
どうやら、この設定からボタンが掛け違っている。クロエが悪い訳ではない。彼女は実に見事に脚本と演出の要求を満たしている。未だ16歳だなどと信じがたい演技力です。母を演じたジュリアン・ムーアも演技派の実力を遺憾なく発揮している。
となると、製作者の表現方法に誤りが有ったと言うことになります。前作に有った、アメリカのスモールタウンのいやらしさ・閉鎖性。渦を巻くような悪意。血まみれの残虐と転倒したカタルシス……これらが後退しています。前作が、アメリカンゴシック(18世紀末)の流れを引くスプラッタホラーであったなら、本作は思春期ホラーとでも言えそうです。 幾分おどおどしながらも普通の高校生であろうと努力するキャリーには、ちゃんと見ていて評価・理解する視線が周りに有る。
だから、惨劇の場においても自分にとっての敵・味方を識別する。制御不能の怪物ではない。 青春の悲劇ストーリーにしたいがために、肝心のキャリーの悲しみ・怒りの深淵を埋めてしまっている。 この物語の最重要シーンはプロムナイトに有るのではなく、家に戻ったキャリーと母の対峙にあります。その前段でキャリーが異形の怪物に成りきっていなければ、ラストの悲しみが観客の胸に届きません。監督は「ボーイズ・ドント・クライ」のキンバリー・ピアース、女性監督ならではの目線を至るところに感じますが、ホラーの作法より 自らのこだわりを優先しすぎたのだ
と思われます。このテーマで撮るならキャリーのリメイクではなく、オリジナルにするべきでしたね。
『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』
青雲書房より発売中。大橋むつおの最新小説!
ラノベとして読んでアハハと笑い、ホロリと泣いて、気が付けば演劇部のマネジメントが身に付く! 著者、大橋むつおの高校演劇45年の経験からうまれた、分類不可能な新型小説、高校演劇入門書!
お申込は、最寄書店などでお取り寄せいただくか、下記の出版社に直接ご連絡いただくのが、一番早いようです。ネット通販ではアマゾンや楽天があります。青雲に直接ご注文頂ければ下記の定価でお求めいただけます。
青雲書房直接お申し込みは、下記のお電話かウェブでどうぞ。定価本体1200円+税=1260円。送料無料。
送金は着荷後、同封の〒振替え用紙をご利用ください。
大橋むつお戯曲集『わたし 今日から魔女!?』
高校演劇に適した少人数戯曲集です。神奈川など関東の高校で人気があります。
60分劇5編入り 定価1365円(本体1300円+税)送料無料。
お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。
青雲書房。 mail:seiun39@k5.dion.ne.jp ℡:03-6677-4351
大橋むつお戯曲集『自由の翼』戯曲5本入り 1050円(税込み)
門土社 横浜市南区宮元町3-44 ℡045-714-1471
『キャリー』
これは、悪友の映画評論家・滝川浩一が個人的に身内にながしているものですが、もったいないので転載したものです。
スティーブン・キングの処女作のリメイクです。
前作はブライアン・デ・パルマ監督 シシー・スペイセク主演でした。物語の底には、キャリーが母によって押し込まれる階段下の小部屋=祈祷室=安全な場所(母にとって)=子宮。豚と血とカーニバルのシンボライズが流れているが、これは止めておきます。ちょっと嫌悪感剥き出しの解説になってしまいますから。
S・キング原作の映画化作品は既に40本を越えています、その中で 今 何故キャリーなのか?
製作者サイドはキャリーに込められたテーマの普遍性を語っており、前作から37年後 現在のキャリーを作りたかったと述べています。結果、ハッキリ言って焦点のぼやけた映画になっていました。
シシー・スペイセクのキャリーはブス(女性方 ごめんなさい)で引っ込み思案の典型的な苛められっ子。その周囲に有るのは陰湿な悪意のみ。逃げ込むべき我が家は狂的宗教原理主義者の母が支配している。
キャリーには自分の殻を打ち破る意志も力も無い。そのギリギリまで押し込められた状況の中、プロムナイトで受けた仕打ちによって 彼女は異形の怪物へと生まれ変わる、その破壊は相手かまわず、無慈悲に襲いかかる。
対して本作は、S.N.S.でイジメが横行する現在の話である、クロエ・グレース・モレッツのキャリーは母の支配から抜けようと反抗する今の時代のハイティーンである。
どうやら、この設定からボタンが掛け違っている。クロエが悪い訳ではない。彼女は実に見事に脚本と演出の要求を満たしている。未だ16歳だなどと信じがたい演技力です。母を演じたジュリアン・ムーアも演技派の実力を遺憾なく発揮している。
となると、製作者の表現方法に誤りが有ったと言うことになります。前作に有った、アメリカのスモールタウンのいやらしさ・閉鎖性。渦を巻くような悪意。血まみれの残虐と転倒したカタルシス……これらが後退しています。前作が、アメリカンゴシック(18世紀末)の流れを引くスプラッタホラーであったなら、本作は思春期ホラーとでも言えそうです。 幾分おどおどしながらも普通の高校生であろうと努力するキャリーには、ちゃんと見ていて評価・理解する視線が周りに有る。
だから、惨劇の場においても自分にとっての敵・味方を識別する。制御不能の怪物ではない。 青春の悲劇ストーリーにしたいがために、肝心のキャリーの悲しみ・怒りの深淵を埋めてしまっている。 この物語の最重要シーンはプロムナイトに有るのではなく、家に戻ったキャリーと母の対峙にあります。その前段でキャリーが異形の怪物に成りきっていなければ、ラストの悲しみが観客の胸に届きません。監督は「ボーイズ・ドント・クライ」のキンバリー・ピアース、女性監督ならではの目線を至るところに感じますが、ホラーの作法より 自らのこだわりを優先しすぎたのだ
と思われます。このテーマで撮るならキャリーのリメイクではなく、オリジナルにするべきでしたね。
『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』
青雲書房より発売中。大橋むつおの最新小説!
ラノベとして読んでアハハと笑い、ホロリと泣いて、気が付けば演劇部のマネジメントが身に付く! 著者、大橋むつおの高校演劇45年の経験からうまれた、分類不可能な新型小説、高校演劇入門書!
お申込は、最寄書店などでお取り寄せいただくか、下記の出版社に直接ご連絡いただくのが、一番早いようです。ネット通販ではアマゾンや楽天があります。青雲に直接ご注文頂ければ下記の定価でお求めいただけます。
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大橋むつお戯曲集『わたし 今日から魔女!?』
高校演劇に適した少人数戯曲集です。神奈川など関東の高校で人気があります。
60分劇5編入り 定価1365円(本体1300円+税)送料無料。
お申込の際は住所・お名前・電話番号をお忘れなく。
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大橋むつお戯曲集『自由の翼』戯曲5本入り 1050円(税込み)
門土社 横浜市南区宮元町3-44 ℡045-714-1471