つれづれ

名古屋市内の画廊・佐橋美術店のブログ

山口薫

2022年06月05日 | 山口薫
もう一点、新しく入手致しましたのは、山口薫の水彩作品です。

まだ入手したばかりですので、こちらも飾り付けの準備ができましたら、あらためてご紹介いたしますが、何と言っても薫の詩、そして牛の顔。








私は、薫について余り調べた事はありません。作品に対する評価、批評文にも余り触れた事がありません。
ですから、皆さまが良くご存知の事を、ちんぷんかんぷんにここに書き、「え?」と思われてしまう事があるかもしれませんが
それを恐れず、いつものように勝手に書かせていただく事にすると、、



薫にとって、犬や猫は家族、馬は自身、牛は思い出や憧れを意味する様に感じられています。






「ごく馬鹿のような顔をして私は街をゆく 心の楽しいとき」



この詩を読んで佐橋は涙が出そうになったと言い、この作品を高く評価しています。

私にはこの作品も、佐橋の評価も、やはりよくわからない部分が多くありますが、


ただ、今更に驚くのは「心の楽しいとき」という言葉です。


「楽しい時は、思わず顔がほころんで街を歩いている」とだけなら普通なのですね。


けれど、薫は最後に「心の楽しいとき」と添えています。

そうした「楽しい自分」さえも冷静に見てしまう、疑いを持ってしまうのです。


その時は本当に楽しかったのでしょう。

牛の角と角の間に小鳥を乗せたい位🐥

けれど、楽しい気持ちは水彩の絵の具のように直ぐに水に溶け出し、淡い思い出になっていきます。




薫作品に皆さまは何をお求めになるのでしょうか?

私はこの作品を高く評価したいという主人に驚き、長く一緒に暮らしながら、まだちっとも薫の事も、佐橋の心も理解していないことにショックを受けました。







かと言って、若い時のように、相手を深く理解しようとは思いません。

ただ、私と違う心がそこにある、それはこんなに深い哀しみなのか、、
それだけをわかっていようと思います。そして、これからも薫からも佐橋からも離れずにいようと思います。




よく見ているとこの顔は鹿の様にも感じられてきます。

えー〜ー、しか⁉︎ 


杉山寧作品も薫作品も、店内に飾らせていただきましたら、またご紹介申し上げますね

















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2020年01月11日 | 山口薫
年末にお手紙を差し上げると、画家の卵さんが今日、薫の作品をご覧になりにいらっしゃいました。

柿をずーーーーっとご覧になっているので、佐橋が鳥もご覧に入れると、そちらもずーーーーーー
っとご覧になってくださいました。













しばらく経ってから、私が「如何ですか?」とお聞きすると、

「感動しました。近くでみると淡く、とても都会的で現代的なのに、遠くから見ると柿の一つ一つの存在感に圧倒される。見たものを描いているのではなくて、感じたことを全て感じた通りに描いている。何一つ、無駄がなく、何一つ妥協がない。凄い感性です。空間に境界線を入れるような縦の線は、普通怖くて引けないです。」

とおっしゃってくださいました。

「今の絵具はとてもよく出来ていて、滑らかで、繊細な色もあるけれど、当時の絵具は多分、今のように便利ではなくて、すべての色を自分で作っていくと思うんです。ずっと見ていても、どうやって作っているか僕にもわからない部分も多いですが、鈍い色を作ってここまで透明感を出せるのは凄いなぁと思います。」と教えてくださいました。

画商が店舗を持つ事が少なくなりました。

絵を売るという事を考えると店舗を持つことは無駄が多いと判断する時代なのかもしれません。

確かに常に店を開くというのは大変なことです。

きっとこの方は私が話しかけなければ、私たちが他の仕事をしている間もずーーと絵を見て、
何もおっしゃらずに帰っていかれただろうと思います。

絵を見るということはそういうものだと思い、今年も頑張って店を開き続けようと思いました。








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山口薫

2018年03月04日 | 山口薫

無事に展覧会の初日を終えることが出来ました。

他の画廊さんの展覧会でしたら、1日に何十人、何百人もいらっしゃることもあるのでしょうけれど、私達の展覧会は1日に10人もいらしてくだされば大盛況

ですから、昨日は大盛況の1日にとなりました(^^)v



さて、このふる草の会では合計25〜30点程の作品を展示させて頂いていますが、その中でも今回は山口薫の作品を3点飾らせて頂きました。



 

以前に、デッサン2点と油彩の柿をご紹介させて頂いていると思いますが、今回新しく入手いたしましたのは、「湖畔に飛ぶ影」という少し意味深なタイトルの作品です。

 


 


このタイトルで、しかもこうした構図の作品を描いた場合、普通はもっと画面全体が感傷的になり、観る側に圧力?お涙頂戴?的な要求をしてくるものです。

お若い方の作品にはよくありがちなことですね。

けれど、これだけ感傷的なタイトル、また鳥、羽ばたき、黒い影を描きながら、薫の作品にはその嫌味を感じることがありません。


金山のような「孤高」の格好良さはありませんが、そこには確かな「孤独と誇り」が感じられるのです。

たっぷりの詩情性と高い芸術性、或いは矜持というのでしょうか?これが薫の最大の魅力ではないでしょうか?

 




画面右側の鳥の視界に広がる風景、沼だと思いますが、、その幽玄は薫独特の色の美しさで表現されています。そして、何よりも、この画家の孤独と誇りは、鳥の羽の内側の線、外界と一線をひく広げた羽の線描と鳥が鳥たる美しさを保つ、首の線に見事に現れていると感じています。

「薫が好きですと言いながら、この作品に出会って、買わないで済ませることが出来なかった」というのが仕入れてきた際の、佐橋自身の最初の言葉でしたが、薫の何が好きかという答えは、確かにここによく表現されているように思います。

詩情ある作品には、ある種の厳しさと孤独に対する覚悟がなければ、その表現を観るものに納得させることは出来ません。

春爛漫の桜のころにあるのでなく、まだまだ寒いこの季節に雛祭りの1日があることに、嬉しさと美しさが感じられるのだと思います。

ふる草の会を3日に始めさせて頂いてよかったと思っています。

そして、昨日、以前の店からお通いくださるお客様方にこの薫をご覧いただけてよかったと感じています。

本日は2時から6時の営業となります。よろしければ、お立ち寄りくださいますようお願い申し上げます。

 

山口薫 キャンバス・油彩 8号 湖畔を飛ぶ影  1959年 キャンバス裏に作家サイン、タイトル

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