つれづれ

名古屋市内の画廊・佐橋美術店のブログ

佐伯祐三展

2023年04月02日 | おススメの展覧会、美術館訪問
東京ステーションギャラリーで開催されておりました佐伯祐三展に名古屋からお出かけになったお客様より、図録をお土産にいただきました。

その画像をうっかり失ってしまいましたので、またご紹介致しますが、今月15日からは大阪に会場を移して開催の予定ですので、皆さまにもお知らせいたします。


詳細はこちらから↓



ちょうど一年前に開館された大阪中之島美術館さんへは、一度伺ってみたいと思っていましたので、ぜひ私たちも出かけたいと思っています。

こちらに寄贈された多くの佐伯作品を収集された実業家である山本氏について、以下のような紹介のサイトを見つけました。
大変興味深く読ませていただきましたので、一部こちらに抜粋、またそのページをご紹介させていただこうと思います。



山本發次郎の生涯と蒐集

本名は戸田清、岡山県上房郡北房町(現・真庭市)に生まれた。東京高等商業学校(現・一橋大学)を卒業後、鐘淵紡績に入社し、山本家に婿入りする。義父の初代發次郎は、船場の安土町にメリヤス肌着の製造販売業を起こし、清は大正9年(1920)に二代目發次郎となる。

欧米漫遊から帰国後、芦屋に竹腰健造の設計になるスパニッシュ風の自邸を建設した。
邸宅は白雲荘と命名され、この建設を機に室内装飾用の美術品購入への関心が發次郎に起きたらしい。
さらに蒐集の本格化は、郷里ゆかりの高僧・寂嚴諦乗(じゃくごんたいじょう)の墨蹟に魅せられたことがきっかけとされる。




寂嚴諦乗《挙直》紙本墨書(28.2×62.0㎝)(大阪新美術館建設準備室蔵)

歴代天皇の御宸翰(ごしんかん)や、慈雲飲光(じうんおんこう)、白隠慧鶴(はくいんえかく)、仙厓義梵(せんがいぎぼん)、良寛、明月ら江戸時代の高僧の墨蹟蒐集も開始された。


 ゆる美術のうちで書を最も好みます。併(しか)し一番嫌ひなものゝ多いのも書であります。絵画や彫刻以上に書が最も端的に人の心を表現するものであるからでせう(「書道私論」)

と、發次郎は書への愛好を述べる。昭和11年(1936)日本放送協会大阪放送局の伊達俊光にも次のように答えている。


 私は元来書が好きで、東洋の芸術として書を第一と考へているし、書の精神は今のフランスのピカソや其他の傑れた作品にもよく共鳴し得るものに違いないと自信する。(伊達俊光「芸術蒐集の真義」、『大大阪と文化』昭和17年、金尾文淵堂発行)

佐伯祐三の作品との出会いは運命的だった。佐伯がパリで歿したのは昭和3年(1928)。同年の第15回二科展で追悼展が開かれたが、コレクターはまだいなかった。發次郎は昭和7、8年(1932、33)から佐伯蒐集に打ち込み、昭和11、12年(1936、37)頃までに作品を蒐め尽くした。

發次郎が衝撃を受けた最初の作品が、造形上の贅肉を削ぎ落とした佐伯の最高傑作である《煉瓦焼》(大阪新美術館建設準備室)である。



佐伯祐三《煉瓦焼》油彩・カンヴァス(60.2×73.1㎝)1928年。發次郎は上野の東京府美術館で開かれた遺作展(1937年)のポスターにもこの絵を使っている(大阪新美術館建設準備室蔵)


山本家出入りの額縁屋が、山本さんなら必ず興味を抱くと確信して《煉瓦焼》を持ちこんだという。大胆にぐいっと引かれた屋根の太い線が、書を愛する發次郎の琴線に触れたことが想像できる。

昭和12年(1937)、東京府美術館で自分のコレクション108点による佐伯の遺作展を開催し、現在の古書価格で10万円はする豪華本『山本發次郎氏蒐蔵 佐伯祐三畫集』(座右宝刊行会)を刊行した。



『山本發次郎氏蒐蔵 佐伯祐三畫集』座右宝刊行会 1937年(写真提供:大阪新美術館建設準備室)


同書の中で發次郎は、佐伯作品に線の芸術を直感して、高僧たちの墨蹟と結びつけて語る。


 茲(ここ)に今私は佐伯の絵を見る時、その線のうま味、殊にその強さと枯淡さとには、私の最も尊敬する不世出の大書僧たる前記寂嚴、慈雲、良寛等の高僧の書や、白隠、仙厓の画に対する時と、余程共通した魅力を感じ…『山本發次郎氏蒐蔵 佐伯祐三畫集』より


 ただし、「寂嚴、慈雲、良寛の書を見せて死なせなかつたことは実に残念です。私はこのことだけでも彼の夭折を心から惜しみます」(「佐伯祐三遺作蒐集に就いて」)と残念がり、佐伯が寂嚴や慈雲を見たら、ヴラマンクやユトリロ、ゴッホの傑作に接した場合とも違う、もっと奥の心に触れた衝撃を受けて、画格が一段と高くなったと付け加える。
 

ーーー中略ーーーー

私の蒐集は決してこれを金銭に換算し、世の富豪のように有価證券を所持しているが如き心持ちでなく、私は消亡(ママ)品として、山本一個の主観的のコレクシヨンとして蒐集も亦創作なりとの観念で集めているので、大原孫三郎さんの倉敷の美術館は児島虎次郎画伯の手によつてなされているが、児島氏自身も大原氏の意志を多少加へて自己の主観や、好みで蒐集していない所に妥協的な不徹底な点があり、又松方幸次郎氏の如き其蒐集は厖大であるが、松方氏一個の趣味とか意見とかが現はれていない所に不満がある。(同前)



続きは↓のページをご覧ください。
http://www.sumufumulab.jp/column/writer/w/8/c/187?PHPSESSID=04e2dbq1b0jgldhubofbkr60c2

以上






収集は一種の信仰のようなものであると、この山本氏の紹介のページを読み感じ、またそうした信念がないと、決して自分の目は養われず、良い作品にも出会えないだろうと思いました。
逆に言えば、佐伯作品を愛することができれば、日本人として日本の全美術品、あるいは歴史、文化に興味が広がるはずであると勇気をいただきました。

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速水御舟展

2023年03月28日 | おススメの展覧会、美術館訪問
先週土曜日は、午後3時ごろに店を閉めさせていただいて2人で茨城県の水戸に向かわせていただきました。

いただく仕事の都合や体調を見ながらの判断でしたので、前もってのお知らせができず、土曜日にご連絡をいただきましたお客様には
大変ご迷惑をお掛けし、申し訳ございませんでした。



水戸へは、茨城県近代美術館さんで開催されておりました速水御舟展を拝見するために伺いました。

展覧会最終日、雨の中を26日に滑り込ませていただきましたが、2人ともに伺ってよかったと今、思っています。






水戸へは品川で乗り換え、常磐線のスーパーひたちの利用が便利です。
常磐線は私の実家の側も通りますし、息子の小さい頃白鳥を見るために一緒に出かけた思い出もありますので
とても懐かしくこの列車に乗り込みました。











若い頃より、御舟の展覧会は何度も見てきたつもりですが、今回改めて御舟の多くの作品に接して、
2人ともに今までとは違った印象を受けた気がしています。

過去に見たことのない作品も多かったこと、また個人蔵の作品が多かったこともその理由に当たると思います。


展覧会の会場では、いつも私たちは別々に歩き、最後の出口で一緒になるようにしています。

が、今回久しぶりに、後から出口に近づいてきた佐橋に「あのガラスの器見た??」と言われ、私1人、慌ててもう一度その作品のところまで戻って鑑賞することがありました。



もうこの作品は何度も何度も見てきたはずなのに。。。




なるほど〜  
杉山寧のよく描くガラスの器は高価そうだけれど、これは少しお安そうで〜そんな質感までよく表現されています。
ガラスの分厚さ、柄、何から何まで本当にびっくり致します。







大正10年前後の写実の時期の作品を見ていると、「あれ?劉生??」と思うようなことがよくありましたが、
御舟と劉生は、ある一時期本当に接点があったようです。それも初めて知りました。




今回お客様のご協力を得て出品させていただいたこの「向日葵」にも、多くの方たちが見入ってくださっていました。

御舟と劉生、その作品に対する熱情は同じほどであっても、やはり岸田劉生は絵が下手で、速水御舟は絵が上手だということも
あらためて実感いたしました。




さて、今回佐橋が最も評価したのは、大正13年ごろ、御舟が世俗を離れ、武蔵野の山村に移り住んだ際に、集中して描いた風景画でした。






特に下の「門」という作品の門の屋根の重厚感の表現に圧倒されたと聞いています。

「聞いています」というのは、私はこの作品を見たには見たのですが、しっかり鑑賞せず、素通りしてしまったからです😅

この武蔵野の山村に暮らした際、御舟は大変規則正しい修行僧のような生活を送り、長い時間を制作に集中したと解説にありました。
その密度が佐橋には感じられたのかもしれません。










私はやはり、最晩年。

古典、写実、洋行での体験、琳派への接近などを経て、御舟の作品が最も御舟らしさを極めた頃の作品に心惹かれました。

特に昭和4〜7年の作品は素晴らしいと思えました。





そして
やはり御舟といえば、「夜」





夜の梅も今まで何度か鑑賞してきましたが、この近代美術館さんの「夜梅」はピカイチでした。


ざっとですが、そしてもう展覧会は終わってしまったのですが、御舟展の感想をお伝えいたしました。

私たちは、ただまっすぐに水戸へ行き、一泊して展覧会を拝見して、そのまままっすぐ名古屋に戻りました。

佐橋はまだまだ長い距離を歩けず、エレベーターやタクシーを使っての旅になりましたが、やはり良い作品の並ぶ展覧会を鑑賞すると
おのずから元気が湧いてきていたようです。また私もこの数年、自宅と店の往復ばかりに時間を費やしておりましたので、良い気分転換になりました。鉄道の利用も私の気性にあっているようです。

水戸は、水の豊かな街、雨になってしまいましたが、桜がちょうど満開を迎え綺麗でした。

そして、ここに住んでいらっしゃる方々は皆さんとてもお優しく、気持ちの良い旅となりました。

茨城県近代美術館さんの常設展では小川芋銭の良い作品も並んでいましたので、いつかまた芋銭展などが開催されます折には
お邪魔したいと思います。



















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速水御舟展図録

2023年03月03日 | おススメの展覧会、美術館訪問
図書室から見える高岳院さんのお庭の景色です。
寒桜が咲き始めました。

今日の暖かさで、きっと裏の大寒桜の並木道も一挙に明るくお花に満ちるのではないかと思っています。

今週初めに久しぶりに風邪をひいてしまい、ブログの更新ができずにおりました。

またそれと同時に、息子のところに無事に女の子ちゃんが産まれ、佐橋家怒涛のうちに本日雛祭りの日を迎えました。

無事に出産を終えたくれた嫁娘はもちろん、妹の誕生に寂しいお留守番を任された2歳8ヶ月の孫、そして佐橋と息子の「男子大活躍」。。

お雛祭りは私にとって家族皆への感謝の日となりました。

さて、体調が今一つの時は、店で絵を見たいという気にも、画集を見たいという気も残念ながら起きませんが、

少し回復すると、早速開いたのは、やはり楽しみにしていた茨城県近代美術館さんの御舟展の図録でした。



まず当店のお客さまの作品をチェック。



早速名古屋よりお出かけくださいましたお客様は、実際の会場でも向日葵がとても
良い場所に展示されていたと嬉しいお知らせをくださいました。


今回の展覧会は、個人蔵の作品が多く出品されているようで、図録には今まで見たことのない作品がずらりと並び、ワクワクして参ります。





昭和2年 鸚哥図







昭和7年 便花図




御舟の作品は、どの時期も素晴らしい作品が多いので見応えがあります。

けれど、どういうわけか今の私の心は、大正末の作品たちに寄っていくのですね。



大正12年 芍薬図




八重椿 大正14年

蓮根ニ茗荷 大正12年



風邪を引く予感があったのか、先週末、朝市で農家さんから蓮根を
まるっと2本買ったばかりだったので、
よくよく本物を観察しましたが



蓮根をこんなに写実的に、しかも美しく、ロマンチックに描ける画家さんは
やはりどこにもいない!! そう思いました。

蓮根と共に描く茗荷のまた粋なこと。

大きさの比較はよくわかりませんが、実作品を是非鑑賞させていただきたいと思いました。

図録には、それぞれの作品の解説に御舟の印譜も取り上げられています。
大変丁寧出品目録から学芸員さんの御舟に対する豊かな思いが伝わってまいります。

展覧会は今月26日(日)までとなります。
お出かけくださるお客様は当店に招待券が少しございますので、ご連絡をくだされば
無料でお送り申し上げます。どうぞご利用ください。












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速水御舟展

2023年02月23日 | おススメの展覧会、美術館訪問
先日もお知らせ致しました通り、茨城県近代美術館さんにて、速水御舟展が開催されています。






ご紹介のYouTubeなどを拝見すると、今まで見たことない御舟作品が
多く出品されているようです。

3月26日までの開催。

休館日などはHPにてご確認くださいませ。











追伸

当店にまだ少しチケットがございますので、ご希望の方にお譲り致します。
よろしければ、下記アドレスまでご連絡を賜りますようお願い致します。

sahasi200@castle.ocn.ne.jp


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福井良之助展

2023年01月26日 | おススメの展覧会、美術館訪問
2月4日より東京国分寺の児島画廊さんにて福井良之助 生誕100年記念の展覧会が開かれるようです。

当店では扱わせていただくことのない大きなサイズの作品もご覧いただけるようですので、
お近くの皆さまはぜひお出かけください。



兒嶋画廊 -Gallery Kojima-

兒嶋画廊 -Gallery Kojima-

東京国分寺市のギャラリー。建築家藤森照信氏設計の ”丘の上APT” を拠点に、日本の近現代美術、世界の古布等を取扱。児島善三郎、志村ふくみ、三木富雄、福井良之助、日本の...

兒嶋画廊 -Gallery Kojima-

 

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