次韻蘇軾《澄邁駅通潮閣》
遙遠懷故鄉 [上平声十三元韻]
蘇軾《澄邁駅通潮閣》に次韻 遠処(トオク)にありて故郷を懷(オモ)う
繚乱芙蓉夢里村,
繚乱たる芙蓉 夢の村,
胡蝶乱舞奪人魂。
胡蝶(コチョウ)の乱舞 人の魂を奪(ウバ)う。
何奇猶長珊瑚島,
何ぞ奇なる 猶(ナ)お長(チョウ)ず 珊瑚(サンゴ)の島,
万里顧懷行古原。
万里 顧懷(コカイ)し 古原(コゲン)を行く。
註] 〇繚乱:花の咲き乱れるさま; 〇芙蓉:ハイビスカスの花;
〇胡蝶:蝶; 〇珊瑚島:サンゴショウの島; 〇顧懷:なつかしむ。
<現代語訳>
遠くにありて故郷を懐う
深紅のハイビスカスの花が咲き乱れる夢の村、色々な美しい蝶の乱舞する情景は人の心を奪う。興味を引くのは今なお成長を続ける珊瑚礁の島であり、遥かに遠くはなれた余所で振り返れば、故郷の情景が蘇ってくるのである。
<簡体字表記>
次韵苏轼「澄迈驿通潮阁」 遥远怀故乡
繚乱芙蓉梦里村,胡蝶乱舞夺人魂。
何奇犹长珊瑚岛,万里顾怀行古原。
<記>
舞台は、九州の遥か南の小島・喜界島である。同島ではアサギマダラとは別に、「南の島の貴婦人」と呼ばれるオオゴマダラ蝶が生息しており、その蛹の宿は黄金の佇まいである(写真)。興味を引く点は、同島は、極わずかながら、今なお、より高く、より広く と成長を続けていることである。
20160701撮影
亜熱帯域の同島は、年を通じて緑豊かな土地である。地球物理学は理解の外であるが、島の生い立ちを生噛りで紹介すると、次のようである。
初めごく小さな島として海面上に姿を現し、以後十数万年の間、毎年約2mmの等速で隆起してきた。島の周囲の海岸は、サンゴ虫の生育の好条件に恵まれている。
サンゴ虫が盛んに繁殖を続けていて、海岸周縁のサンゴ礁は、形態上薄い裾礁として分類されるもので、島の海岸周縁がすべて裾礁である点および島の隆起速度が激しい点、世界でも珍しいということである。
島の最高地点・百之台(標高200m)は十二、三万年前のサンゴ礁段丘であると。アサギマダラ蝶のほか、“オオゴマダラ蝶”が生息している。「南の島の貴婦人」と称される美しい蝶で、羽は白地に黒のまだら模様で、羽を広げると約15cmと比較的大柄。
インドや東南アジア等の暖かい地方で生息するが、日本では喜界島が北限とされている。蛹は黄金色の豪華な宿で羽化を待つのである(写真)。