愉しむ漢詩

漢詩をあるテーマ、例えば、”お酒”で切って読んでいく。又は作るのに挑戦する。”愉しむ漢詩”を目指します。

閑話休題309 書籍-18 故郷-5 南島花鳥風月

2022-12-22 09:40:17 | 漢詩を読む

 令和改元 詠故郷      [下平声9青-8庚韻]  

玲瓏令月洗心霊、

 玲瓏(レイロウ)な令月(レイゲツ) 心霊(ココロ)を洗う、

拂臉和風鴴嚶嚶。

 臉(カオ)を拂(ナ)でる和な風 鴴(ハマチドリ) 嚶嚶(サエズ)る。

扶桑炎赫赫紛、

 扶桑(フソウ)炎の花 赫赫(カクカク)として紛(フン)たり、

溪澗翠嗖嗖行。

 溪涧(ケイカン)の翠鳥(カワセミ) 嗖嗖(ソウソウ)として飛び行く。

天機代謝年運徂、  

 天機(テンキ) 代謝(タイシャ)して 年は運(ウツ)り徂(ユ)き、

沙渚無鴴湾海鳴。 

 沙渚(シャショ)に鴴は無く湾の海鳴(ウミナリ)を聴く。

惟有月輝如往昔、

 惟(タ)だ月のみ有って 独り往昔(オウセキ)の如し、

挙頭遙望故園情。

 頭を挙げて遙かに望めば 故郷が偲ばれる。

 註] 〇玲瓏:透き通るように美しいさま;  〇鴴:浜千鳥; ○嚶嚶:鳥が仲よく

   さえずり合うさま; 〇扶桑:ハイビスカス; 〇赫赫:赤々と照り輝くさま;

   〇紛:咲き誇る;  〇溪涧:谷川; 〇嗖嗖:すいすいと; 

   〇天機:天地自然; 〇代謝:世が代わる; 〇沙渚:沙洲、渚; 

  〇海鳴:海鳴り; 〇故園:生まれ故郷。  

<現代語訳>

  令和改元の折り 故郷を詠む

透き通る玉のような美しい月 心が洗われる思いである、頬を撫でる穏やかな海風に ハマチドリの鳴き交わす声が乗って来る。此処彼処にハイビスカスの燃えるような花が真っ赤に咲き乱れており、谷川の流れに沿ってはカワセミがすいすいと飛び去って行く。世は代わり、時は流れ去り、渚の沙洲では、浜千鳥は姿を消し海鳴の音だけが耳に届く。月は往時のままに光り輝いており、頭を挙げて遥かを望めば、故郷を想う情がわき起こるのである。

<簡体字表記> 

 令和改元 詠故乡 

玲珑令月洗心霊、 拂脸和风鸻嘤嘤。

扶桑炎赫赫纷、 溪涧翠嗖嗖行。

天机代谢年運徂、 沙渚无鸻湾海鸣。

犹有月辉如往昔、 挙头遥望故园情。  

 

<記> 

2019年5月1日、“令和”元年として、令和の世が始まった。この改元を機に、“令和”の字を組み込んだ詩を書いてみてはどうか、とつい遊び心を起こしてできたのがこの七言律詩である。

 

非常に明るい雰囲気の中での代継ぎで、その前後の日々はまさに“黄金”というに相応しい時期であったように思われた。偶々帰省して、故郷の今の姿に接する機会があって、その折りの“花鳥風月への懐い”も含めた。

 

新しい時代が幕を上げようとして、期待が大きく膨らんでいく一方で、ある面、“昔は良かったな!”と感傷の念も湧き、少々複雑な気分ではある。すべてではないが、時と共に失われた面もある。

コメント
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