プレゼンテーションの基本として、妹尾堅一郎教授が常々言われている心得です。
この心得の全く逆さまのようなプレゼンテーションにも時折お目にかかりますね。すなわち、「3しか本当に調べていないことを10ぐらいに膨らませて書いて、しゃべるときには関係の無いことまで縷々話して結局何も残らない」というものです。
妹尾教授の心得を下敷きに私なりにもう少し肉付けをしましょう。
まずは、「書いてあること全てをしゃべってはダメ」ということです。
プレゼンのスライド(最近はPowerPointがデフォルトですね)の1枚目から一言一句もらさず「読まれ始める」と、大半の聞き手はそれだけでうんざりして失望します。
書いてあることは「読めば分かる」のです。スライドのエッセンス部分を取り出して、「箇条書き」的に話すだけでずっとスマートに聞こえます。
かといって、資料から全く離れたことばかり説明してもダメです。これでは、一体何のためのスライドかということになってしまいます。(目的と手段のアンマッチは、話し手の論理的思考力の欠如と映ります)
また、プレゼンする場合は、「総論・結論」と「各論・根拠」のメリハリをきちんとつけることです。
自分の手元には、「本編資料」・「参考資料」・「手持ち資料」の3つの資料を準備しておきます、スライド本体は「本編資料」と「参考資料」の構成にしておきます。しかし、基本的には「参考資料」は説明しません。「10にまとめて、3しゃべる」のルールです。
参考資料は、プレゼンが終った後の質疑応答の時や、話していて「どうもここは分かっていないな」とか「ここは結構関心がありそうだな」と感じたときに、そのスライドにジャンプして使います。
「結論」と「根拠」の説明はプレゼンテーションのコアです。したがって慣れない人はこの部分になると気分が高揚して自分の世界にのめり込んでしまいます。ついつい必要以上にくどい説明になってしまいます。
しかし、ここはガマンです。スライド資料に複数の根拠を記述していても、聞く人が「結論」を理解したと思えば、全ての根拠を説明する必要はありません。理解してもらえばいいのです。その目的さえ達成できれば、準備したものを全て話す必要はありません。ここでも「10にまとめて、3しゃべる」です。
プレゼンテーション全体のイメージは、
- 書いてあることを「3割」ぐらいなぞりながら、
- 書いていないことをちょっと補足しながら、
- 「(ここで)言いたいこと」(結論・根拠・事実・ロジック等)をゆっくり話す
という感じです。
それでは、「最初の100」はどこへ行ったのかということですが、これは聞いている人にははっきり分かります。
100調べている人のプレゼンテーションには余裕があります。話ぶりはゆったりとしていて、それでいて、何でも聞いて来いという攻めの姿勢が感じられるものです。