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相対思考 (日本辺境論(内田樹))

2010-02-14 16:12:46 | 本と雑誌

 「きょろきょろする」ことは、周りを見る、周りの中で自己を位置づけるという行動です。
 この性癖は、日本のあらゆる場面で顔を出します。「国」「政府」というレベルでも同じです。

 
(p37より引用) 他国との比較を通じてしか自国のめざす国家像を描けない。国家戦略を語れない。そのような種類の主題について考えようとすると自動的に思考停止に陥ってしまう。これが日本人のきわだった国民性格です。

 
 著者はこのあたり、アメリカとの比較から立論を進めます。オバマ氏の大統領就任演説で語られたような「建国の理念」「国民の物語」が日本には欠如しているという指摘です。

 
(p38より引用) 日本という国は建国の理念があって国が作られているのではありません。まずよその国がある。よその国との関係で自国の相対的位置がさだまる。よその国が示す国家ヴィジョンを参照して、自分のヴィジョンを考える。

 
 こういう思考スキームは、最近も「空気を読む」というフレーズで再登場しています。
 「空気」というのはその場にいる人々の「関係性」の態様であり、その関係性を意識して、つまり「空気を読んで」、自己の振る舞いを決めるという態度です。まさに「空気を読む」という所作は「きょろきょろする」ことと同体です。

 本書のタイトル「日本辺境論」からは、文字通り地理的な意味で「辺境=周辺」というニュアンスが感じられますが、著者のいう「辺境」は絶対座標ではなく相対座標において自己の立ち位置を測る、「not 中心」という意味でも「辺境」というコンセプトを提示しているようです。

 
(p44より引用) ここではないどこか、外部のどこかに、世界の中心たる「絶対的価値体」がある。それにどうすれば近づけるか、どうすれば遠のくのか、専らその距離の意識に基づいて思考と行動が決定されている。そのような人間のことを・・・「辺境人」と呼ぼうと思います。

 
 別の言い方をすると、「状況創造」ではなく「状況受容」「状況反応」というのが日本人の基本的行動様式だということでもあります。

 ただ、こういう相対性や受容力は、「学び」という観点ではある種の強みを発揮するようです。まわりを見、それをまず受け入れるという態度は「オープンマインド」にも通底しています。

 
(p148より引用) 人間のあり方と世界の成り立ちについて教えるすべての情報に対してつねにオープンマインドであれ。これが「学びの宣言」をなしたものが受け取る実践的指示です。

 
 絶対的なものを追求せず、外部からの受けた情報と自己の思考とのつじつまあわせをする、そういう過程から何らかの新たな気づきを得ていくという「効率的」な学びの方法が、日本人特有の「学びの力」となっているとの指摘です。

 
(p150より引用) 弟子は師が教えたつもりのないことを学ぶことができる。これが学びのダイナミズムの玄妙なところです。

 
 「学び」はまさに「力」でした。

 
(p197より引用) 「学ぶ力」とは「先駆的に知る力」のことです。自分にとってそれが死活的に重要であることをいかなる論拠によっても証明できないにもかかわらず確信できる力のことです。・・・
 この力は資源の乏しい環境の中で・・・生き延びるために不可欠の能力だったのです。この能力を私たち列島住民もまた必須の資質として選択的に開発してきました。狭隘で資源に乏しいこの極東の島国が大国強国に伍して生き延びるためには、「学ぶ」力を最大化する以外になかった。「学ぶ」力こそは日本の最大の国力でした。

 
 日本の「学び」の大きな特徴は、「効果が分からなくても、まず学びを始める」というところにあります。

 
(p199より引用) 「その意味を一義的に理解することを許さぬままに切迫してくるもの」について、「理解したい。理解しなければならない」ということが先駆的に確信されることが「学ぶ」という営みの本質をなしている。

 
 西洋流の、「先駆的な知」はアプリオリなものとして既に「そういうものがある」という前提ではなく、必ず何かが得られるという確信なくして学ぶことができる。これは素晴らしい強みです。
 逆に言えば、この「学びの姿勢」をなくしてしまうと、日本は大きな強みを失うことになるのです。
 
 

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