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お客様の立場で (売る力 心をつかむ仕事術(鈴木 敏文))

2014-02-14 22:56:03 | 本と雑誌

Seveni_logo  セブン&アイ・ホールディングスの総帥鈴木敏文氏の本は、以前「朝令暮改の発想」を読んだことがありますが、こちらは自らの経営理念を紹介した比較的新しい著作です。

 内容としては、「『お客様のために』ではなく『お客様の立場で』」といったあまりにも有名な鈴木氏の基本的な経営姿勢をはじめとして、長年にわたるトップ経営者としての経験に裏打ちされた数多くの示唆が開陳されています。まさに鈴木本の手軽なベスト版といった趣きです。

 それらの中から、旧知のものも含め、記憶に刻んでおきたい教えを書きとめておきます。

 まずは、タイトルにもなっている「売る力」についてです。

(p8より引用) 「売る力」とは、お客様から見て「買ってよかった」と思ってもらえる力である。
 だから、売り手は常にお客様の求めるものをかなえる「顧客代理人」でなければならない。

 まさに、この考え方が「お客様の立場で」という鈴木氏の基本姿勢と同値のものです。
 そういったお客様側の視座にたつと、営業・販売プロセスの中で起こる「事象」の意味づけも変わってきます。

(p11より引用) 売り手の視点とお客様の視点は、正反対です。たとえば、「完売」です。売り手は商品が完売すると自分たちには「売る力」があると思うでしょう。一方、完売後にやってきたお客様は、「なんで、もっと多めに用意しておかなかったのか」と売り手に不満を抱き、「買いに来なければよかった」と後悔し、この店は「売る力」が不十分だと思うはずです。販売の機会ロスが生じているのは確かなので、お客様の視点のほうが正しいと、私は思います。

 セブン-イレブンでは、「完売」は「欠品」であり、改善すべき課題と位置づけられるのです。

 さて、著者のいう「売る力」ですが、もう少し踏み込むと具体的はどんな要素に分解されるのでしょうか。そのひとつは「差別化」ですが、著者の差別化には、その頭に「自己」という二文字が追加されているのが肝です。

(p43より引用) 競争とは自己差別化です。社会が豊かになればなるほど、「売る力」として自己差別化が求められることを忘れてはなりません。

 「自らが変わる」「自らの製品・サービスを変えていく」という能動的なプロアクティブな動きです。そして、その「自己差別化」を発揮し参入する土俵の定め方にも著者ならではの発想が表れています。

(p60より引用) 参入が容易で誰もがねらう六割のお客様に目を奪われず、空白地帯にいる四割のお客様のニーズに確実に応えることで大きな成果を得る。市場の大小に目を奪われるか、自己差別化で勝ち残れる道を見いだすか、違いがここにあるのです。

 みんなが経験的に「いい」と思うことは、それこそみんながやりますから、それこそ厳しい競合状態になります。結果、みんなが賛成することはたいてい失敗し、むしろ「そんなのだめだろう」と反対されることの方が成功する確率が高くなるのです。

 この考え方は、本書の中では何度も強調されています。

(p92より引用) みんなが「いい」ということをやれば、六割のお客様を相手に九割の売り手と競争することになるのに対し、反対されても挑戦すれば、四割のお客様を相手に一割の売り手とともにビジネスができる。
 過去の延長線上で考えて誰もが賛成することはおおむね未来の展望が乏しく、逆に反対されることは多分に未来の可能性を秘めています。

 みんなが「いい」ということは、過去の成功体験に基づいた判断です。過去の成功は、その時点での未来志向の判断の結果だったはずです。
 過去と未来、どちらに目を向けるかというと、その答えは自明ですね。
 

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価格:¥ 809(税込)
発売日:2013-10-18


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