著者の春風亭一之輔さんは、2012年、21人抜きの抜擢で真打昇進した今最も人気がある落語家の一人です。
私も時折youtubeで聞くことがあるのですが、確かに語り口は(私のような上方落語に染まっているものからすると、少々アグレッシヴではありますが)スマートでテンポが良く、マクラでのお客の掴みも卓越していますね。
定番の古典落語の演目を語らせても、ところどころのやり取りに今風の工夫を凝らしていて見事です。このあたり、ひとつ間違うとワザとらしくなって、お客に阿った感が出てしまうんですね。そのあたりの加減は絶妙です。天性でしょう。
さて、本書はその一之輔師匠のエッセイ集。「週刊朝日」への連載を再録したもので、軽いノリでページが進んでいきます。
肝心の中身ですが、正直なところ、読者の期待するところによって合う合わないがはっきりしそうですね。
エッセイを書くのは本当に難しいと思います。本人の感性だけでつらつらと筆を進めると、その作品は、作者の感性にマッチした人にしか受け入れられません。作者本人の感性が鋭ければ鋭いほど、そのレベルにしっかりと波長を合わせて受信できる人は限られてきますから。
残念ながら、私はちょっと合わない方でした・・・。