本書は、松岡氏が帝塚山学院大学で行った「人間と文化」というテーマの講義をもとにしたものです。
時間的に空間的に様々な事象を「関係」付けながら俯瞰的に歴史を紡ぎ、新たな意味づけを行って行きます。まさに、「正剛流」です。
松岡氏の思考の基本コンセプトは「編集」です。
松岡氏の言う「編集」は、一般的な意味よりも広い概念です。
(p12より引用) 情報の本質は「区別力」にあるのです。・・・
・・・目の前の情報をどうやって区別していくかということが「編集」のはじめの第一歩になるんですね。もっと言うと、情報をどうやって区切ったかということによって、そこから読み取れる「意味」が変わってくるんです。それができればその次に、その区別した情報を、新たな視点でつないでいくことができます。見方をさまざまに組み替えていくことができる。
そうすると、そこに新しい関係が発見されるのです。
本書では、人類の「思索・思考」の歴史的足跡をたどっています。
その中で、松岡氏は、紀元前6~5世紀にかけて、世界各地で期を一にしてスーパースタークラスの哲学者・宗教家が相次いで登場していることに関心を抱きます。
(p79より引用) ある傾向が一定の量まで達することを「臨界値に達する」といいます。臨界値に達すると、それまでにないものが生れてくるんです。それを「創発」といいます。
西でも東でも、現実世界においては新しいルールやしくみが必要になり、また人間の想像力やイマジネーションにおいても大きな変革が必要となっていたんですね。そこで紀元前6世紀から5世紀にかけて「創発」がおこって、ゾロアスターや老子や孔子やブッダやピタゴラスが出てきたんでしょう。
ある意味で、人間の欲望や煩悩が、それまでとはちがう現実味をもって人間社会をおびやかしはじめ、それが臨界値に達してきていた。そこで、それをコントロールしていく新しい技術や方法が求められていたのかもしれません。
この状況に対応するために、人間の精神性をコントロールするものとして、神の意思である「預言」や神と人との「契約」といった仕掛けが登場してきたのだと説いています。
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