本田氏はメーカーとしてのプライドを強く抱いていました。
「経営の好調さは『ブーム』に乗った故だ」という言われ方には納得しませんでした。
(p19より引用) ブームというのはすでに需要があるところに、だれかがつくる、そういう意味だと思う。私たちがやる仕事はそこに需要があるからつくるのではない。
私たちが需要をつくり出したのである。これが企業というものでなくてはならんと思う。
われわれはあくまでもブームをつくる人間であるべきだと思う。・・・自分の個性によってブームをつくったというところに非常に誇りを持っているわけだ。
需要を創造する企業としての誇りをもつHONDAは、「技術最優先」の会社というイメージを抱きがちです。しかしながら、本田氏の考えはそうではありませんでした。
(p61より引用) 私たちの会社が一番大事にしているのは技術ではない。技術よりまず第一に大事にしなければならないのは、人間の思想だと思う。金とか技術とかいうものは、あくまでも人間に奉仕する一つの手段なのである。
・・・人間を根底としない技術は何も意味をなさない。
本田氏は「ひと」を大切にします。ひとりひとりの個性・自由な考えを尊重するのです。
(p68より引用) 現代の偉人は大衆の偉人であるべきだ。昔のように人の犠牲によってなり立った偉人は断固として排撃すべきである。ナポレオンしかり。豊臣秀吉しかり。人の犠牲によってなり立っている偉人を崇拝するという思想は非常にこわい。
それは会社経営においてもこわいと思う。一人一人の思想が違うように、それぞれ持味、得意が違うのだから、その得意をみんなして出し合って一つの法人という偉人をつくりたい。
こういった本田氏の考え方は、「経営哲学」といった範疇のものではなく、もっともっと根源的な氏の「人間観」そのものだと思います。
(p69より引用) 紙くずがあるなら拾ってやるとか、おばあさんが車道を横断できなければ手をひっぱってやるとか、心あたたまるような行為、これも偉人だと思う。・・・偉人というものは自分の周辺にいくらでもあるものだ、ということをわれわれが悟らなければならない。それが会社を発展させる基本であると思う。
ひとを大切にする姿勢は、ひとの喜びを求めます。
本田氏の喜びは、一人ひとりが自分自身の「夢」を抱くこと、そして自由な精神でその「夢」に向かって突き進むことでした。
(p177より引用) 正直にいって私の会社の組織なども、他の大企業に比較すると、足もとにも及ばない。・・・そんな私にも、ただ一つ誇りたいことがある。
それは若い人たちである。その若い人たちに対して、本当の気持をくみとり、みんなにふるい立って働いてもらったということが、今日の繁栄をもたらしている、と思う。
若い人はいいものだ。過去を持たないからいつも前向きの姿勢でいる。将来へ一歩一歩前進しながら、現実をありのままに受けとめて、新鮮な心でこれを吸収する。そして、正しく時代を反映する。
いい経営とは、そうした若い人に夢をもたせることだ。・・・
私の社の「社是」の第一条はこうだ。
「常に夢と若さを保つこと」
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