少し前にNHK〈ラジオ深夜便〉で放送されている「絶望名言」を書籍化した本、「NHKラジオ深夜便 絶望名言」「NHKラジオ深夜便 絶望名言2」を読んだのですが、その中のブックガイド欄で番組の出演者である頭木弘樹さんがご自身の著作として紹介していた本です。
対称的な思想家・作家と言われるフランツ・カフカとヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの数々の名言を並び置いて “希望と絶望” の滋味を味わおうという趣向です。
期待どおり数々の興味深い名言や二人を紹介したエピソードに出逢いましたが、それらの中から特に私の関心を惹いたものを少々書き留めておきましょう。
まずは、頭木さんが、カフカの人となりを表した箇所。
(p55より引用) 「弱い」「小さい」
カフカにはそういう言葉がとてもよく似合います。弱くて小さいからこそ、巨人の目にはとまらないようなことにも気づけます。普通の人なら意識もしないわずかな段差でも、足が弱ければいやでも気づいてしまうように。
この微細な感覚はよくわかりますね。
そして、この姿も印象的です。
(p143より引用) カフカもとてもやさしい人です。その点ではゲーテと同じです。ただ、カフカのやさしさは、もっと弱いもの、小さいものへと向けられていきます。
「花瓶に押し込められている、そのいちばん下の花が苦しまないよう、気をつけなくては。どうすればいいだろう」(会話メモ)
自分が生きづらいだけに、生きづらいものに対して、とてもやさしいのです。
“希望のゲーテと絶望のカフカ” の対比という頭木さんのオリジナリティ溢れる視点から編まれた本書ですが、私の場合、そこから伝えられるものはカフカの言葉の方が心に残るようです。
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