著者は、数多くの企業活動を実際に調査することにより、日本企業の成功の要因を「組織的知識創造」に見出しています。
(p15より引用) ホンダ・シティのケースは、日本のマネジャーがどうやって暗黙知を形式知に変換するかを示している。それはまた、知識創造の三つの特徴を示唆している。第一に、表現しがたいものを表現するために、比喩や象徴が多用される。第二に、知識を広めるためには、個人の知が他人にも共有されなければならない。第三に、新しい知識は曖昧さと冗長性のただなかで生まれる。
そして、その一連の実地研究において明らかにされたのが、知識創造プロセスにおける「ミドル・マネジャー」の重要性でした。
(p21より引用) 知識創造プロセスにおけるミドル・マネジャーの役割は重要である。彼らは、第一線社員の暗黙知とトップの暗黙知を統合し、形式知に変換して、新しい製品や技術に組み入れるのである。日本企業で実際に知識創造プロセスを管理しているのは、ホンダの渡辺洋男のようなミドル・マネジャーなのである。
企業における様々な意思決定/意思伝達の方法としては、従来、「トップダウン」と「ボトムアップ」という大きく2つのタイプがあると言われてきました。
本書では、双方のいいとこ取りをした「ミドル・アップダウン・マネジメント」というスタイルを提唱しています。
(p189より引用) 知識は、チームやタスクフォースのリーダーを務めることの多いミドル・マネジャーによって、トップと第一線社員(すなわちボトム)を巻き込むスパイラル変換プロセスをつうじて創られるのである。このプロセスは、ミドル・マネジャーを知識マネジメントの中心、すなわち社内情報のタテとヨコの流れが交差する場所に位置づけるのである。
「ミドル・アップダウン・マネジメント」という新たなコンセプトの中では、ミドル・マネジャーは、「理想と現実を結びつける専門職」と位置づけられるのです。
(p190より引用) ミドルは、トップと第一線マネジャーを結びつける戦略的「結節点」となり、トップが持っているビジョンとしての理想と第一線社員が直面することの多い錯綜したビジネスの現実をつなぐ「かけ橋」になるのである。・・・彼らは知識創造企業の真の「ナレッジ・エンジニア」なのである。
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