鈴木氏は、本書の目的を「まえがき」で以下のように表明しています。
(pⅱ) この本の目的は、ことばというものが、いかに文化であり、また文化としてのことばが、ことば以外の文化といかに関係しているかを、できるだけ平易なことばで明らかにすることにある。
その説明の材料に取り上げたのが「人称代名詞」です。
英語では、「I」や「you」、日本語では、「わたくし」「ぼく」「おれ」や「あなた」「きみ」「おまえ」・・・といったことばです。
(p140より引用) ヨーロッパ諸語の一人称、二人称代名詞が数千年の歴史を持っていることに比べると、日本語の人称代名詞の生命の短さはあまりに対照的である。・・・
日本語に於ては、有史以来、自分を指す代名詞と、相手を言う代名詞は、次々と目まぐるしいほど交替している。しかも注意しなければならないことは、新しく代名詞として用いられるようになることばは、常にもとは何か具体的な意味を持っていた実質詞からの転用だという点である。
鈴木氏は、日本語における「人称代名詞」の用例を外国語と比較することにより、日本語と日本文化のユニークさを明らかにしていきます。
たとえば、「年齢40歳・長男・既婚・子あり・職業は教師」のケースをあげています。まわりには、家族・親族、校長・同僚・生徒、隣人等様々な関係者がいます。
これらの関係者とコミュニケーションする場合、自称詞としては、「わたくし」「ぼく」「おれ」「おじさん」「おとうさん」「先生」「兄さん」等々、他称詞としては、「あなた」「おまえ」「きみ」「おじいさん」「おとうさん」「にいさん」「先生」「ぼうや」等々が並びます。
(p180より引用) 日本語の自称詞及び他称詞は、対話の場における話し手と相手の具体的な役割を明示し確認するという機能を強くもっている、と考えることができる。
ことばと文化 価格:¥ 735(税込) 発売日:1973-01 |
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます