本書に登場する基本コンセプトのひとつである賢慮(フロネシス)は、著者によって以下のように定義づけられています。
(p68より引用) 賢慮は、個別具体の場において、その本質を把握しつつ、同時に全体の善のために最良の行為を選び実践できる知恵である。
この賢慮について、特に「美徳の経営」との関わりに関する基本的な解説部分をノートしておます。
まずは、社会学者ベント・フリウビジャによる「アリストテレスの知の形態」の整理から始まります。
彼は、アリストテレスの知を3つのタイプに集約します。
(p70より引用)
・エピステーメー(episteme)
科学的な知。
すなわち、いわゆる「学」(学問知)。一般性を志向し、時間・空間によって左右されない、コンテクスト独立的(文脈非依存)な客観的知識(形式知)。理論的知性。分析的思考につながっていく。
・テクネー(techne)
技術、芸術などの知。
すなわち、制作の領域の知。テクニックやアートなど、実践的でコンテクスト(文脈)依存的な、モノをつくりだす知。技能、わざ(暗黙知)。経験科学の知。
・フロネシス(phronesis)
価値・倫理についての思慮分別と、コンテクスト(文脈)依存の判断や行為を含む、実践の知、「智慧」。
すなわち、高質の暗黙知、実践的な合理性に基づく知性。
従来から、欧米企業はエピステーメーを追求し、日本企業はテクネーを追求したといわれてきました。
それに加え、著者はこう指摘しています。
(p70より引用) 日本企業がかつて発揮した卓越性には、独自のテクネーの追求から生まれる、賢慮の要素があった。そしてそれによって、エピステーメーとテクネーを、実践をつうじて統合していった。その賢慮に知が、いま美徳の経営の時代にあって、日本企業はもとより、グローバルに企業に求められていると考えられるのである。
キーワードは「実践」です。
実践により、エピステーメーとテクネーという二つの知が融合し、より高度な暗黙知であるフロネシスに止揚しゆくダイナミックなスパイラルプロセスが動き出すということでしょう。
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