2023年1月17日19時41分。
阪神淡路大震災の発生から28年になります。
「もう28年」、「まだ28年」。
人それぞれに、光陰矢の如しと28年を迎える人もいれば、
あの日以来、時間が止まり年齢だけが空しく加算されていく苦しい現実に、
震災の傷が癒されないままの人もいる。
6434人の犠牲者と63万棟の住宅被害が起きた。
数々の苦難を乗り越え震災の街は立派な復興を成し遂げ、立派に立ち直った。
新しい復興計画のもと道路が建設され、ビルが建設され新しい街ができた。
地震の震源地に近い、兵庫県淡路島の「北淡震災記念公園」では、17日朝、
遺族や地元の人たちが、亡くなった人への追悼と復興への思いを一つに、
「上を向いて歩こう」を合唱した。(NHK NEWS WEW)
様々な理由で今も、震災の傷を抱え、途方に暮れる人もいる。
当時五十代だった人は七十代になり、未だに先の見えない生活に苦しむ人もいる。
災害公営住宅(復興住宅)
災害により住宅を失った被災者向で、
自力ででの住宅再建が難しい住民のために自治体が設置する 公営住宅 。
復興公営住宅、災害復興住宅ともいう。
地方自治体が借り上げや新築により整備を進め、
被災者に対して安い家賃で貸し出すもので、
低所得者にはさらに家賃を優遇するなどの措置も盛り込まれている。
1995年(平成7)1月の 阪神 ・淡路大震災で兵庫県や神戸市などが国の支援をもとに
大規模に復興住宅を整備したのが始まり。
また、2011年(平成23)3月の東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島の3県では、
仮設住宅 に住む住民向けに復興住宅を3万戸建設した。
建設費の補助
一般的な公営住宅………国からの補助1/2 地方自治体1/2
災害公営住宅 〃 2/3 〃 1/3
また、激甚災害に指定された場合は、国3/4 地方自治体1/4
借り上げ復興住宅と問題点
阪神淡路大震災の当時、仮設住宅等の建設用地やその費用などが計画通りに確保できず、
民間事業者などが所有するマンションなどを県や市が借り上げる形で、
住居を失った被災者に供給した。
これを「借り上げ方式」といい、全国で初めて導入された。
この「借り上げ方式」には大きな問題があった。
賃貸期間20年という期限付き貸借という決まりです。
この期限切れは2015年から始まり、今年、2023年には、全ての「借り上げ復興住宅」が
期間満了ということになります。
県や市は20年の貸借期間満了を迎えた住宅から順に、入居者の退去を勧告し、
別の公営住宅への転居をあっせんしている。
借り上げにかかる経費の負担を軽減したいという行政の思惑があるのでしょうか。
朝日新聞シリーズ記事『老いる復興住宅』から
避難所と仮設住宅を経て、市営復興住宅で20年を暮らし今年87歳になるSさんは、
住み慣れた住宅を退去することになった。5年前のことだ。
兵庫県と6市は震災当時の住宅不足の時、民間や都市再生機構から約8千戸をかり、復興住宅とした。いわゆる、「借り上げ復興住宅」だ。家を失い、住むところのない被災者にとってはありがたい施策だった。
だが、ここにきて20年契約の期間切れは、辛い。
住み慣れた場所は仮の住まいとはいえ、支えあってきた隣人が一人二人と姿を消していき、
寂しさや取り残され感をぬぐいようもない。
被災者の声が聞こえてくる。
「期限があるとは知らなかった」
「気力も体力もない。医者へ行くため生きているようなもんや」
自治体の対応も分かれている。
宝塚市、伊丹市は全員の入居継続を認めたが、
神戸市と西宮市は期限を迎えた入居者計19世帯を提訴、
全員が退去を余儀なくされた。
「20年経ってなんでやと、納得できんかった」(敗訴した70代男性)
神戸市が提訴したのは、「退去に応じた人との不公平を生じさせないため」と説明しているが、
何とも温かみのない紋切り型の説明だ。
明記された文言でけりをつけ、一件落着を計る姿勢に
行政の責任で被災者の「生きる道」を支えるという姿勢に欠けるのではないかと思う。
健康な生活を営む条件は、住環境や人間関係がありコミュニティが存在することだ。
単に転居先が見つかればよいという問題ではない。
孤立した生活環境で暮らすことは、とくに高齢者にとっては辛い。
今後、借り上げ復興住宅は
能登半島地震(07年)で、石川県穴水町が12戸
東日本大震災(11年)で宮城県石巻市が222戸を整備契約期間を迎えることになる。
行政の温かい対応を期待したい。
(昨日の風 今日の風№136) (2023.01.29記)