読書案内
医師が考える 死んだらどうなるのか?
- 終わりではないよ、見守っているよ-
昨年12月に思いもしない事故で最愛の孫を突然喪い、
悲嘆に暮れていた私に、あるご婦人が貸してくれた本である。
彼女もまた、数十年前に長男を事故で亡くし悲嘆にくれた日々を経験している。
「死んだらどうなるのか?」を、興味本位で書いた本ではない。
医師としての業務の経験を重ねる過程でたくさんの生や死に直面し、
臨床の現場で感じた「生命」の不思議さを率直に記述されている。
生命や死の尊厳を臨床医として真摯にとらえ、
科学的、非科学的、合理、非合理の枠を超えた心の問題として、
解りやすく記述されている。
論旨の根底には、医師としての経験から導き出された揺らぎのない自信がある。
また、-終わりではないよ、見守っているよ-のサブタイトルから推測されるように、
魂の 存在についても論を進めている。
大切な人との死別。
二度と会うことの叶わないこの現実に、
どうしようもない悲しみと喪失感が増幅されていく。
しかし、死とは永遠の別れではなく、肉体は荼毘にふされ、消えてなくなろうと、
魂は生き続けていると著者は述べています。
大切な人を亡くして悲しむ気持ちは、人によってさまざまな態様を示し、
受け入れがたい現実に苦しみます。
死をすべての終わりと考えるか、新たな魂の誕生と捉えるかによって、
明らかに悲しみの質は変わってくる、と。
大切な人を亡くした時の、やり場のない悲しみや憤(いきどお)りを乗り越え、
やがてはこの悲嘆のプロセスを一つ一つ乗り越えて、
立ち直っていくにはどうしたらよいのか。
本書はそのためのガイドブックとして優れた効力を発揮する、と思います。
評価 ★★★★☆
(PHP研究所2013年7月刊 矢作直樹著)