『訪問介護』(2)広がる空白地帯
前回(8月18日記事「訪問介護が危ない」)の記事では、
訪問介護の危機的状況を以下のように書きました。
訪問介護の現実 (前回の記事より引用)
在宅の高齢者が、自宅で生活できなくなる危機的状況が、
地方の過疎化と共に進行しています。
高齢者の生活を支える訪問介護事業所が休止や廃止に追い込まれ、
サービスの空白地帯が広がっています。
厚生労働省が公表した事業所一覧を参照すれば、
事業所ゼロの自治体は97町村
事業所が1つしかない自治体は277市町村
これは訪問介護の危機的状況を示しています。
大手事業所や都市部の事業所は比較的安定した運営を
続けることができますが、
山間部や過疎地などは介護者が点在する家を一軒一軒まわなければならず、
非効率であり、訪問介護は距離換算方式を認めていないので、
どんなに離れた過疎化を廻っても介護報酬は同じになり、
赤字事業になってしまう。
事業所の撤退などの増加は、人手不足、非効率、など小規模事業所などが、
撤退や倒産に追い込まれています。
さらに2024年4月から介護報酬が約2%値下げになっていることも、大きな要因です。
「訪問介護事業」が危機的状況になっているということは、
施設や病院等に介護を求めるのではなく、
住み慣れた自宅で老後の生活を送りたいというのは、
介護を必要とする多くの願いです。
訪問介護事業所の減少を数字で見る
減少の推移(2020年12月末→2024年6月末)
訪問介護事業所ゼロの自治体 …… 83町村→97町村
残り1事業所の自治体 …… 265市町村→277市町村
(全1741市区町村) 危機的状況に陥っている自治体は全体の22%に達しています。
これだけの情報ではどれだけの事業所が消えていった(廃業)のか分かりません。
8648事業所。
この数字を見ると愕然とします。
直近の5年間で廃業した訪問介護事業所の数です。
全都道府県に蔓延している介護事業所危機
今年の6月時点で、訪問介護事業所ゼロの自治体は、97町村。
廃業や休業の訪問介護事業所が増え、残り1事業所の自治体は277市町村となります。
これを、47都道府県に当てはめるとどのくらいの自治体が当てはまるのでしょう。
意外な結果に愕然となります。
なんと事業所ゼロ及び1事業所しか残っていないをかかえる自治体は、47都道府県中静岡県を
除く、46都道府県に蔓延しています。
北海道中頓別(なかとんべつ)町の例
町保健福祉課によればによれば、「民間では耐えられない額の赤字だ。町が事業を救うしかなかった」と言う。
同町は23年4月、町内の社会福祉法人から訪問介護とデイサービスの2事業を引き受けて「町営化」しなければ、この町の訪問介護事業所はゼロになってしまうからだ。
「23年度は2事業あわせて3480万円の赤字で、これを町の一般会計から出した。国の交付金などはなく、町の持ち出しだ」と、苦しい胸の内を明かす。
要介護状態になっても住み慣れた地域で暮らせるように、
「地域包括ケアシステム」を推進し、医療、介護、生活支援する介護事業所を積極的に取り入れてきました。
だが、今その活動の中心を担う訪問介護が地方で成り立たず、
「地域包括システム」が崩壊しつつあります。
介護報酬の具体的な単位数
2024年1月23日、4月に介護報酬の具体的な単位数が発表になりました。
これによると報酬全体では1.59%のプラスとなり、業界には明るい見通しが立ちました。
しかし、実際には介護報酬全体では1.59%プラスになったが、
訪問介護の基本報酬が引き下げられました。
介護の最前線で活躍する訪問介護の報酬が引き下げられてしまいました。
訪問介護の報酬を新旧比較
身体介護(20分未満) 167単位➡163単位
生活援助(20分以上45分未満) 183単位➡179単位
通院等乗降介助 99単位➡97単位
新報酬は約2%強の引き下げになっています。
訪問介護は、引き下げ率は2%強で引き下げ率は低いが、事業所数、
そこで働くスタッフの数は圧倒的に多く、
地方の訪問介護事業所は経営そのものを圧迫しかねない状況が出現した原因になります。
また、在宅介護を支える定期巡回随時対応型訪問介護看護(約4.5%引き下げ)、
夜間対応型訪問介護(約3.5%引き下げ)があります。
危機的状況にある上位5道県
(訪問介護事業所がゼロ及び1事業所しか残っていな地域をかかえる自治体)
北海道 179市町村中 事業所ゼロの自治体12 事業所1の自治体70 全自治体の46%
長野県 77 〃 〃 9 〃 25 〃 44%
福島県 59 〃 〃 8 〃 21 〃 49%
山形県 35 〃 〃 4 〃 12 〃 46%
高知県 34 〃 〃 5 〃 11 〃 47%
静岡県 35市町中 〃 0 〃 0 該当なし
本日は国政を担う衆議院選挙です。
314人の女性が立候補し、過去最多。
過半数(233議席)を自民党と公明党で維持できるのか。
野党はここぞとばかりに、「裏金問題」をはやし立て自民党を追い立てる
材料としているようですが、大衆的な争点だけでは国政は維持できません。
政治倫理として「裏金問題」は大衆にわかりやすく説明できる争点ではあるが、
国政の大きな柱は、「経済政策」や「医療・福祉」「介護福祉」の政策であり、
「外交問題」も外すことのできない大切な施策の柱です。
政治的無関心は、国を滅ぼします。
一票一票の積み重ねが国の力を大きく動かす原動力になる事を
私たちは忘れてはならない。
政治的無関心の裏に潜む、自己責任の放棄を容認してはいけない。
今日は投票所に行こう。
訪問介護の危機を脱却できる政策立案のできる政党を
私は選びます。
(昨日の風 今日の風№143)