読書案内 おもかげ復元師の震災絵日記 笹原留依子著 ポプラ社 2012.8 第1刷
悲しくて、切なくて、優しくて忘れられない本。
著者は復元納棺師。東日本大震災では、発生後まもなく沿岸地域に入り、津波や火災で大きな損傷を受けた遺体を生前の姿に戻す「復元ボランティア」に献身した。その時の体験をありのままに、文と絵で表現した本。2012年1月、社会に喜びや感動を与えた市民に贈られる「シチズン・オブ・ザ・イヤー」を受賞する(著者紹介より抜粋)。その一つを紹介します。
2才 女の子
おじいちゃんに持たせてもらった
「紙オムツ」
「必需品だもんな…」ってね。
ちっちゃい手に 持たせたオムツは、
とっても大きく感じたね。
落とさない様に、
大事に持って行ってね。
握った手が離せなくなり、
「手が温かくなったぞ!」
って、顔をあげた
おじいちゃん、目からいっぱい
大粒の涙が流れていました。
津波の犠牲になった2歳の女の子。永遠のお別れに「紙オムツ」を持たせてやるなんて。
誰がこんな辛くて悲しいことを想像できたでしょう。
「手が温かくなったぞ!」って。おじいちゃんの悲しみが私にも伝わってきました。(毅)
もう一つ紹介します。
7才 男の子
許可がないと復元出来ず…。
2時間待ったけど、
やっぱり御家族の方と会えず…。
「ごめんね 、
復元して 元に戻してあげたかったのに
ごめんね。」
そう泣きながら
あやまって…。
目を潤ませて、「ごめんね」と、泣きながら手を合わせるおもかげ復元師・笹原さんの姿が目に浮かんできます。
2時間待っても、遺族に会えなかった。
必死に探している遺族の方、広い安置所に横たわり、ただひたすら黙って待つ7歳の男の子。
「なかなか見つけられなくてごめんな」体に寄り添うようにして号泣する家族。
悲しい再会ですが、「会えてよかったね」と私は安堵します。
法律上、亡くなった人に触れるにはご遺族の許可がいるため、笹原さんは身元不明のご遺体を復元することが叶わなかった(編集部注)
だから、次のような詩も笹原さんは慟哭の思いで書いてます。
全ては 安置所で
この子を復元できなかった、
深い後悔…
そこからはじまった…。
身元不明…。
3才…。法律を変えて…!!
そう願った。
私、抱きしめてあげたかった。
迎えに来てくれる、
お父さんとお母さんのために、
復元したかった…。
ごめんね。
悲しみと優しさが伝わってきます。
評価☆☆☆☆☆ (2015.2.26)